日本化学会誌(化学と工業化学)
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1987 巻, 3 号
選択された号の論文の54件中51~54を表示しています
  • 砂本 順三, 後藤 光昭, 荒川 源臣, 佐藤 智典, 近藤 寛樹, 鶴 大典
    1987 年 1987 巻 3 号 p. 569-574
    発行日: 1987/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回著者らは,リボソームの構造強化と同時にリボソームへの認識機能の付与のため新しく開発した人工境界脂質(1,2-ジミリストィルアミド-1,2-デオキシホスファチジルコリン(以下DDPCと略記する)を用いて脂質二分子膜中にグリコホリンを組み込んだリボソームを作成した。Egg-PC(80mol%)とDDPC(20mol%)の混合脂質リボソームにグリコホリンを組み込むと通常のEgg-PCリボソームの10倍近い保持率が得られた。
    DDPCを共存させた脂質二分子膜中への膜糖タンパク質の保持効果は天然のスフィソゴミエリン(SPM)よりも優れていた。ついでこのリポソーム上のグリコホリンの糖鎖末端をノイラミニダーゼ処理し,シアル酸残基からガラクトース残基へ,またN-アセチルガラクトサミニダーゼで処理することにより全糖鎖を除去した。
    マンノースおよびグルコース特異性のコンカナパリンA(ConA)では,シアル酸除去および酵素未処理グリコホリン存在リポンームのいずれもがまったく凝集を示さなかった。しかし, シアル酸結合レクチン(ニホンカブトガニレクチン, TTA)は,グリコホリン存在リボソームに対して高い凝集性を示した。また,部分的にシアル酸残基を除去したグリコホリン存在リボソームでは凝集性の低下が見られた。これらの結果は, リボソーム表面上の糖タンパク質糖鎖による認識機能発現の可能性を示唆するものである。
  • 小林 一清, 住友 宏, 小林 明, 赤池 敏宏
    1987 年 1987 巻 3 号 p. 575-579
    発行日: 1987/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オリゴ糖を側鎖にもつポリスチレン型単独重合体を吸着させた培養皿の上で,ラット肝細胞の接着実験を行ない,重合体中の糖鎖が生物認識信号としての機能を発現することを明らかにした。肝細胞は,ラクトース置換スチレン単独重合体(PVLA)を吸着した皿の上に特異的によく接着し,血清を含んだWilliams E培養液中で92%に達する高い初期接着率を示した。接着にはMg2+を必要としないが,Ca2+は不可欠であった。肝細胞のPVLA皿への接着は,肝細胞をあらかじめ培養液中のPVLAで処理すると阻害されるが,遊離のガラクトースならびにラクトース,ラクトース置換スチレンモノマー,およびマルトース置換スチレン単独重合体では阻害されなかった。PVLAと肝細胞との間にはたらくガラクトースを介した特異的認識が,PVLAの多官能性と高いガラクトース糖鎖密度のために強化されているものと考えた。また,本研究で用いた重合体は,細胞による分子認識を応用した新しい型の生医学材料となることを示した。
  • 野元 裕, 林 恭三
    1987 年 1987 巻 3 号 p. 580-588
    発行日: 1987/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は,脊椎動物の神経筋接合部や電気魚電気器官に存在し,神経終末から放出されるアセチルコリンに応答して,陽イオンの透過性を増大させる機能をもつ膜糖タンパク質である。nAChRは,α2βγδという4種のサブユニットからなる五量体構造をもち, nAChR,としてのすべての機能はこの分子中に含まれている.最近,電気魚やいくつかの哺乳動物のnACbRサブユニットの一次構造が,遣伝子組み換え技術を用いて解明されたが,四つのサブユニットは相互に高い類似性を有しており,擬対称的に配列しているものと考えられる。これらのサブユニットは,それぞれ五つの膜貫通ドメインをもち,そのうちの一つは両親媒性のドメインで,イオンチャンネルの形成に寄与していると推測される。サブユニットのうち,δサブユニットはイオンチャンネルの開口時間を決定する機能をもつ。また,ウシのnAChRでは,発生過程で構成サブユニットが変化する可能性が示唆されている。
    αサブユニットはAChと結合する機能をもち,したがってnAChR単量体あたり二つの結合部位が存在することになるが,これらの反応性は等しくない。この違いは,受容体の構造的非対称性によるもらのと思われる。最近,αサブユニットのCys192とCys193の間でS-S橋が形成され,しかもこれらの残基がアセチルコリン結合部位の近傍に位置することが解明された。アゴニストの結合により,この隣合うCys残基間のS-S橋は配座変化を起こし,イオンチャネルの開口へ受容体を誘導すると考えられる。
    著者らに最近T.californica AChRの糖鎖構造を明らかにしたが,2種のハイマンノース型糖鎖,Man8GlcNAc2とMan9GlcNAc2が全体の70%以上を占めており,これらの糖鎖はすべてのサブユニットに,異なった割合で存在していた。その他の糖鎖は数種類のコンプレックス型糖鎖で,おもにγとδサブユニットに存在した。これらの糖鎖のリガンドとの結合における関与を検討したところ,シアル酸やハイマンノース型糖鎖を除いてもほとんど影響を受けないことがわかった。nAChRの化学構造はかなり解明されつつあるが, 構造と機能の関連に関しては不明な点が多い。また,nAChRのリン酸化や受容体に密接して存在する43Kタンパク質などの機能がさらに明らかになれば,nAChRの働きに関する理解が一層進むものと思われる。
  • 里内 清, 小田 真, 斎藤 国彦
    1987 年 1987 巻 3 号 p. 589-593
    発行日: 1987/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    生体内で血小板活性化因子(PAF)が機能する代表例は抗原刺激により好塩基球から産生されたPAFが血小板を活性化することによって生じるアナフィラキシー反応である。
    こういった生体内で機能するPAFを介した産生細胞と標的細胞の相互作用として,可溶性の好中球活性化剤であるN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(FMLP)刺激下での好中球と血小板の反応系がある。本相互作用は細菌に模した不可溶牲のザイモサン刺激を用いても,PAFの産生量およびPAF措抗剤を用いた解析から,有意に機能していることが判明した。
    こういった結果を踏まえ,急性炎症時におけるPAFの役割について考察した。
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