日本企業の海外生産は着実に進行している。本連載では、海外生産が国内の製造業に与えた影響、国内マザー工場と海外工場の関係、海外での他企業も含めた生産ネットワークの状況やグローバルサプライチェーンの複雑化などについて、実態を正確に把握することを主眼に置きながら論じていきたい。第1回は、日本企業による海外での現地生産の進展と、それが日本国内の製造業に与えた影響について論じる。日本企業の海外進出の経緯について述べたのち、2000年代は海外生産と輸出の両方が増加し、両者は代替的ではなく補完的関係にあったことを指摘する。そのうえで、この補完関係が各企業の中でどのように機能したについて論じる。
Lilien, Morrison, Searls, Sonnack, and von Hippel (2002) は、3Mの開発プロジェクトを対象とした実証研究から、リードユーザーを開発に活用した方が良いという結論を端的に示しているという点で、後続論文で数多く引用されている。しかし、同論文の研究内容そのものを十分に検討した後続論文は見られない。そこで、本稿では同論がどのような研究であったのかを再検討した。その結果、同論では極めて主観的開発パフォーマンス評価指標を用いているため、その主張には信頼性が欠けること、また、同論で新規性を主張しているリードユーザー法は、実は、従来からの研究開発方法である非リードユーザー法の一形態に過ぎないことが明らかとなった。