本研究では「欧州型オープン・イノベーション・システム」について明らかにする。欧州では1980年代に大きな産業政策上の変更が行われ、現在の共同研究政策、標準化政策の基礎が出来上がった。これを基盤とした欧州型オープン・イノベーション・システムは、2000年のリスボン宣言以降、強化される傾向にある。欧州型オープン・イノベーションを特徴づけるのは「産業分類の境界を超えた共同研究プロジェクト」と「標準化によるプロジェクト成果のグローバル展開」の二つである。本論文では、欧州型オープン・イノベーションを支える制度的な仕組みとして、Framework Programme、European Technology PlatformやJoint Technology Initiativeを取り上げ、これらの制度・助成策が産官学の大規模連携を可能とし、大規模なイノベーションを生む基盤となっていることを紹介する。さらに、その成果を欧州地域市場、ひいてはグローバル市場へと展開する道具として地域標準・国際標準化が行われており、国際競争力に貢献していることを説明する。
本稿では、武田薬品の「ロゼレム」を対象として医薬品のイノベーション・プロセスを分析し、その成功要因を探る。既存研究ではイノベーション・プロセス上流の探索段階を扱うものが多かったが、本稿では、下流の臨床試験や当局への申請(NDA)、マーケティング・販売段階にも焦点を当てる。事例分析より、世界的な新薬開発競争のなかで武田が「ロゼレム」の開発に成功した主たる要因として、「同時開発アプローチ」など開発期間重視のマネジメントが指摘される。
ものづくりにおいて、生産技術部門は重要な役割を果たしている。しかしながら、設計部門・工場部門からの多大な生産に関する要求に迅速に対応することは非常に経験の必要な困難な業務である。しかし、ITシステムによる支援もできていない業務である。生産技術分野へのITシステム適用には、考える仕事を標準化し自動化することと、標準化を行うために事例の蓄積と分類整理を行うことで、実業的な支援システムができると考えられる。