もの造りを「顧客へ向かう設計情報の流れを統御すること」と捉える「開かれたもの造り」の観点から、原価管理、とりわけ原価計算の再解釈を試みる。まず、伝統的な全部原価計算の体系、およびそれに対する代替案として提案されたABC、スループット会計、原価企画などを簡単に説明した上で、より最近の取り組みとして、モデルライフ基準の原価計算やJコスト論を紹介する。そして、これらを総括する形で、生産を設計情報の転写とみなし、製品原価を情報媒体の占有料として捉える、「開かれたもの造り」起点の原価概念を素描する。設計情報が価値を発生させ、媒体が原価を発生させる、というのがその基本的な発想である。
中国における急速な液晶テレビ市場の拡大を主導しているのは、ローカル企業である。こうしたローカル企業の躍進は、液晶テレビがモジュラー型製品であり、ローカル企業が得意とする典型的なアーキテクチャ特性を持っていることが、その要因となっている。液晶テレビの主要部品である液晶パネルやチップセットを外部から調達し、組み立てる。これはシャープの一貫生産とはまったく異なり、パネルは三星から調達し、独自の画像処理エンジンで差別化を図るソニー形式でもない。中国では、モジュラー型製品領域でローカル企業の乱立する傾向が強い。ローカル企業の市場参入が急速であったのは、液晶テレビのアーキテクチャが、モジュラー化したからであった。ところが、こうした参入者の多いモジュラー型製品市場では、価格競争が激しくなりやすい。携帯電話やVCDプレーヤなど、過去のモジュラー型製品市場を振り返れば、ローカル企業は同質的製品の低価格化により事業採算性が悪化してきた。本稿が事例として取り上げるローカル企業は、こうした経営環境から抜け出す試みを展開し始めている。変革が求められるローカル企業の戦略と動向を考察し、報告する。