サプライヤーである半導体メーカーとユーザーである電子機器メーカーの間に位置する中間流通業者である半導体商社の中には、半導体産業と電子産業の構造変化に呼応して、事業ドメインを川上や川下へ拡大する例がみられる。経営資源の乏しい中小規模のユーザーをターゲットとして、完成品の製造や設計を肩代わりするために川下へ、半導体デバイスの詳細設計をサポートするために川上へ拡大している。それは中間流通業者としての競争優位性を高める戦略である。
情報通信産業ではモジュール化が進んできた。モジュール化とは製品をユニットに分解してそのインタフェースを一般に公開し、ユーザがそれを自由に組みあわせることである。インターネットもパソコンもモジュール化製品の代表格であった。しかし、現在このモジュール化が逆転し、統合化へ回帰する兆しがある。パソコンの家電化、携帯電話の隆盛、VPN・NGN、クラウドコンピューティングなどをその兆しと捕らえることができる。はたしてモジュール化は終焉するのか。そもそもモジュール化はなぜ生じたのか。これらの問いに対し、歴史的な考察と実証分析をもとに答える事を試みる。結論は、今後はモジュール化が終焉し統合への回帰が進むというものである。