近年、音楽・ゲームをはじめとして様々なコンテンツのオンライン配信が普及し始め、オンライン配信がビジネス環境に及ぼす影響を把握し、オンライン化の本質について考えなくてはならない時期になっている。オンライン化という流通チャネルの抜本的な変革によって、コンテンツ創造やビジネスモデルが数年のうちに大きく変化した先端的事例である、ゲーム(オンラインゲーム)産業について考察していく。従来の家庭用テレビゲームは、ゲーム専用機とパッケージ・ソフトの売上高をいかに上げるかが議論の焦点となる物販モデルであった。しかし、パソコンとインターネットという汎用的なプラットフォームが誕生したことで、専用機・専用ソフトを販売するモデルから、ゲームというエンターテインメント・サービスを継続的に提供するサービス業へと、ゲームビジネスの定義が変わってきている。プラットフォーム・流通チャネルの変化は、「ゲームの面白さ」の定義を変えコンテンツ創造に影響し、そして、収益モデルをはじめとしたビジネスモデルや産業構造までも変えている。コンテンツ創造の側面については、ファミコン時代・プレイステーション時代・オンライン時代を俯瞰しつつ、ユーザーベネフィットという視点から、細川氏が論じている。ビジネスモデル・産業構造の側面については、オンラインゲームをパブリッシュするという立場から、業界が抱える問題とその解決方法について、三木氏が論じている。(要約:野島美保)
日本触媒が1983年に上市した高吸水性ポリマー「アクアリックCA」は、国内市場において紙おむつの普及を促した原料である。現在は欧米市場でも高いシェアを獲得している。しかし、もともとは紙おむつ用途を念頭に置いて開発されたものではなく、上市までの道程は決して平坦なものではなかった。本ケースから、技術開発や供給契約、ライセンス契約などにおける様々な失敗を成功に結びつけてきた様相が伺えよう。またその過程で、「顧客システム」を念頭に置いた評価技術の蓄積などが有効である可能性も示唆される。
サムスンが高い競争力を獲得することを可能にした、「組織」、「マネジメント」、「戦略」とはいったいどのようなものなのか。日本的経営や技術は、サムスンにおいて、どのように移転、吸収、変容されたのだろうか。以上のことについて、本稿では、技術能力の発展段階モデル(吸収段階→模倣段階→改良段階→革新段階)を用いて、サムスンの技術能力構築のプロセスを説明する。