企業がその使命(ミッション)や方向性を具体的な言葉で表す「ミッション・ステートメント」をつくる事例が増えている。独禁法裁判などで傷ついた社会的評価を回復させたい米マイクロソフト、飲料大手のカゴメや京セラは、「コーポレート・ブランド」確立の一環として、ステートメントをつくった。「ミッション」や「ビジョン」という概念を軸に経営革新を進める手法は「ミッション経営」として90年代半ばから広まり、ここ数年でも企業不祥事の防止や業績低迷を克服する手段として注目を浴びている。だが、その作業も単なる「言葉遊び」で終わり、具体的な成果を上げられないまま挫折した例も多い。なにが重要なのか。
新規事業開発の際に直面する高い不確実性に対して、企業はどのように対応しているのかを素材産業の事例を通じて考察する。旭硝子の塗料用樹脂事業では、塗料メーカーとの共同による製品開発と市場開拓により、技術と市場の不確実性を克服した。こうした対応を可能にしたのは、同社の最終顧客志向への転換にあった。