石油化学産業では日本企業は外国技術を積極的に導入していったことが指摘されているが、日本企業がどのようにパートナーを選択したのかに関してはほとんど議論されてこなかった。そこで、本稿では石油化学産業を対象にして、ライセンス・パートナーの選択の動機として、技術の吸収や技術の質があったのかどうかを統計的に検証した。そして、分析結果から日本企業がパートナーを選択する基準として、技術の吸収の容易さがあり、自社と比較したパートナーの技術水準が重要であったことが明らかになった。
液晶テレビの市場では、中国企業が参入して急速に成長している。本稿ではまず、技術蓄積の少ない中国企業の急成長を可能にした原因を、液晶テレビのアーキテクチャと分業構造から明らかにする。液晶テレビは、半導体技術の進歩がドライバーになって、典型的なモジュラー型製品になった。モジュラー化は新規参入を容易にするとともに、参入過多と価格競争の激化をもたらす。こうした市場特性に起因して、中国企業は収益性悪化と新たな製品領域への新規参入を繰り返す「モジュラー型製品の収益悪化サイクル」に陥りやすい。モジュラー化を活用しながらも、このサイクルからの脱却を目指す中国企業のありようについて考察していく。
電気測定器産業においてデジタル化がどのようなインパクトをもたらしたのか、それによって業界構造や競争条件がどのように変化していったのかについて説明する。中国企業の台頭や測定器会社の近年の取り組みなどを紹介しながら、このような変化の中で各企業が今後どのような生き方をしていくのかについて論じていく。