企業が持続的に成長するには、現在の事業領域と技術領域を超えた新たな領域での探索が有効な方策のひとつである。先行研究は、近傍領域の探索に傾斜しがちな企業の特性を指摘すると同時に、探索活動を類型化した上でそれぞれの効果を明らかにしてきた。本稿は、先行研究が注意を払ってこなかった探索をすすめるプロセスに着目し、その解明に貢献することを目的とする。まず、探索の階層性という新たな概念を提示したうえで、富士フイルムとコダックの探索戦略の違いを明らかにする。そして両社の盛衰が分かれた理由を、探索の階層性に立脚して探索プロセスの違いから考察する。
本稿では、組織アイデンティティ研究分野において著名なHatch and Scultz (2002) の内容をレビューし、同論文の正確な理解を試みる。同論文では、組織アイデンティティと組織イメージ、組織文化との間で生じる動学的なプロセスをモデル化しており、こうしたプロセスが遮断された際、組織が陥る二つの機能不全について述べている。こうした機能不全は同論文内では並立して描かれているが、同時に起こり得るものではなく、図の解釈において注意が必要であるというのが本稿の主張である。