デジタル家電産業では、製品アーキテクチャのモジュラー化によって、新規参入企業が急増し、激しい価格競争に陥る現象が見られる。本稿では、光ディスク産業の事例分析に基づいて、モジュラー化と新規参入が誘発される背景には、日本企業が保有する擦り合わせノウハウが部品、材料、設備、ファームウエアにカプセル化されて流通している現象があることを指摘する。次に、このような構造を利用して、日本企業と海外企業が有効な協業モデルを構築して成功している事例を紹介する。最後に、モジュラー化が進展する経営環境下で、日本企業が豊富な技術資源を活用する戦略的方向性について言及する。
地域通貨組織の活動が生み出す種々の社会的効果は、会員間の取引において生じる人と人との関係構造から創発される。にもかかわらず、地域通貨の取引に社会ネットワーク分析を応用した研究事例は、ほぼみられない。本稿では、LETS方式の地域通貨を媒介したネットワークの期待値と考えられる自律分散型構造を検証することを通じて、社会的効果の創発メカニズムを関係構造から解明する研究の端緒となることを試みる。