本ケースは、ホンダ二輪事業のASEANでの市場展開について整理したものである。ホンダは中国二輪企業との競争の結果、2000年頃には中国のみならずベトナム市場でも大幅なシェア低下の危機に直面した。この状況に際し、ホンダは製品戦略を大幅に変更し、日本オリジナルモデルのCKD生産から、現地開発機能を拡充し、ASEAN市場向けの低価格モデルを導入し、広範な現地化戦略を展開した。低価格モデルの導入は市場シェアの向上に大きく貢献し、品質で劣る中国車に対抗する競争力を形成し、長期的にもASEANの二輪市場を拡大する効果があった。
本稿では、海外での新規事業とロジスティクスの組合せ事例を対象とし、新規事業とロジスティクス構築の進展するプロセスを解説する。まず、対象事例である化学系素材メーカー、A社の取り組みについて説明をする。次に、中国における輸出の奨励を目的とした、華南を中心に多くみられる、進料加工、来料加工といった二つの方式を前提にした委託加工貿易制度についてと、貿易貨物を中国国内に流通させるための保税区、物流園区といった貿易や商取引と物流の制度を解説する。最後にロジスティクスの視点から、調達、生産、そして配送 (デリバリー) のトータルリードタイムに対して、進出先国でのこれらの諸制度が、生産と流通プロセスで及ぼす影響が大きく、生産管理方法そのものを、市場のニーズに近づけるための努力が必要になることが見えてくることを考察する。