2000 年前半からインクジェットプリンター (IJP) の互換インク普及の問題が新興国で深刻化した。エプソンは新興国で既存の事業モデルが立ち行かなくなったが、インクタンクという新たな事業モデルを業界の中でいち早く2010年に導入した。本研究の目的は、エプソンの新興国市場におけるIJPの事業革新過程の特徴を解明する点にある。その特徴として、既存の事業モデルへの危機感、経営トップの関心、事業部と現地の協業など、事業革新の既存研究で頻繁に登場する点が挙げられる。しかし本事例の最大の特徴は、経営トップ、事業部と現地の協業、あるいは現地販社が、さまざまな出来事や探索結果について解釈し続けた点にある。日系グローバル企業が新興国発イノベーションを進める上での「変化する環境を解釈する組織的な能力」を問う事例である。
ECサイトにおけるマーケティング研究は、非常に注目されており、研究も多岐に広がっている。例えば、ECサイトにおける消費者行動の解明やモデル化、バナー広告などの広告効果、eWOMといったユーザーが生成したコンテンツやソーシャルネットワークが与える影響に着目した研究などが多く行われている。本稿ではECサイトを対象としたマーケティング研究の初期の研究であり、ECサイトにおける消費者のページ閲覧行動の分類を行ったMoe (2003) の解説と評論を行う。その上でMoe (2003) の問題点と、今後の研究の方向性について議論を行う。
『Topcoder (トップコーダー)』は、2001年に米国にて競技プログラミング・コミュニティとして始まり、現在世界で100万人のデータサイエンティストプログラマー、UI/UXデザイナーを抱えるクラウドソーシング・コミュニティである。本稿では『Topcoder』を活用したNASA、ハーバード大学、IBMを含む世界の先進企業のオープンイノベーションの事例を紹介する。クラウドソーシングとして一般的な簡易なタスクの遂行ではなく、世界中のハイスキルなリソースを活用して、クイックなプロトタイピングや高難度課題の解決をサポートする『Topcoder』のシステムについても詳しく説明する。