本稿は、医療機器市場に参入したことのない富士フイルムが、なぜ、世界に先駆けてデジタルX 線画像診断システムを開発し、普及させることができたのかを明らかにしていく。事例分析の結果、富士フイルムは既存のアナログX 線画像診断装置をモジュール化し、世代を超えて共通利用していたことが分かった。さらに、既存顧客の声を聞き入れ、レントゲン写真の診断に使われていた知識やノウハウがデジタルX 線画像診断システムに使えるように製品開発を行っていたことが明らかになった。こうした製品開発プロセスは、顧客の移行コストを削減し、富士フイルムのデジタルX 線画像診断システム (Fuji Computed Radiography) の普及につながった。
進化理論に基づいたシミュレーション・モデルを構築しシュンペーター的競争の分析を行う。シミュレーションを通じて、シュンペーター仮説 (第12章)、フィリップス仮説 (第13章)、シュンペーター的トレードオフ (第14章) を検討する。
本報告では、デザインエンジニアの役割と、彼らの創造性を引き出す仕組みを紹介する。その上で、現在のIT 業界における、日本のものづくりプロセスの問題点に触れ、takram の製品開発事例を参考にしつつ、プロトタイピングという新たなものづくりプロセスを提案する。プロトタイピングこそが、ユーザーインターフェースの向上や新たなコンセプトの創造に寄与するものだといえる。