異なるイデオロギーと価値観はどのように特定の実践の中に共存し、コンフリクトし、相互補完しているか。この問題に対して、本研究は制度ロジックと実践という理論的フレームワークに基づいて探求する。本研究は制度ロジックと実践との関係に関する異なる理論的想定を融合させることで、実践に付与された意味を解釈するに当たって、実践の設計に関わる制度ロジックの役割を強調する。国と信用金庫それぞれが信用補完制度に付与した意味を定量分析することを通じて、本研究は実践の設計に関わる制度ロジックと実践の取り入れに関わる制度ロジックが実践に付与した異なる意味が同じ基準で測れないが、実践の設計を通じて前者の制度ロジックが後者の制度ロジックに制約を加えていることを主張する。本研究は歴史的と広い文化的コンテキストにおける異なるタイプの制度ロジックを同時に考慮に入れるフレームワークを構築した。
東欧バルト三国のひとつリトアニアでは、若者によるスタートアップの設立が活発である。特にIT関連スタートアップの起業が活発で、都市部のコ・ワーキングスペースや大学内に設けられた起業スペースなどは若い企業家の活気が溢れている。このような活況は産学官が連携したスタートアップ・エコシステムに支えられている。また、近年では外国人起業家や外国人投資家も増加し、スタートアップ・エコシステムはグローバル化しつつある。加えて、大都市の中心的大学では起業家教育が行われており、スキルアップを目指す現役ビジネスマンに混ざって多くの学生がビジネス・スキルを学んでいる。このようなリトアニアのスタートアップ・エコシステムは、同じバルト三国のエストニアや北欧のスウェーデンを参考としたものであるが、大学内インキュベーション施設や起業家教育の取組みには目を見張るものがあり、日本の産学官の各主体が参考にできることも多い。また、起業家やスタートアップ・エコシステムの各主体がグローバル化している点も、日本は参考にできるだろう。そこで本稿では、リトアニアのスタートアップ・エコシステムと、代表的なスタートアップ企業について紹介し、日本が参考にすべき点についても明らかにしたい。