本稿は、経営学輪講シリーズ「組織ルーチンはどのように創られ、維持され、変化するのか―Howard-Grenville et al. (2016)」の導入として、組織ルーチン論のプロセス学派のルーチン観と世界観を概説する。特に、March and Simon (1958) とNelson and Winter (1982) のルーチン観と世界観と対比させながら、プロセス学派は、組織ルーチンを組織メンバーの行為から独立して存在するものではなく、組織メンバーの相互作用の結果として創発される現象として捉えていることを示す
本稿は、Howard-Grenville et al. (2016a) の第1章 「Zooming OutとZooming Inを用いたルーチン研究の論点と展望」 を紹介したものである。第1章では、プロセス学派の観点から、ルーチンの「絡み合い」(entanglement) や「ズーミング」(zooming) といった分析視角を用いて、第2章以降の内容が紹介されている。本稿ではまず第1章の概要を紹介し、続く解説において、第1章の著者らの分析枠組みの提示の仕方に見られた課題および後続研究においてどのようにルーチン研究が発展してきたのかを論じる。