三井化学が1987年に上市した高屈折率メガネレンズ材料「MR-6」は、国内のプラスチックレンズの普及を促した材料である。現在は高屈折率レンズの普及が遅れていた欧米市場でも後続品が市場シェアを伸ばし、競争優位を獲得している。こうした成果の背後には、新しい材料コンセプトの創出やユーザーとの緊密な連携、連携を通じた評価技術の蓄積など製品開発の取り組みと、スイッチング・コストや特許網構築、後続品の継続的投入などによる参入障壁形成といった戦略的取り組みがあった。
コンテンツを保持する音楽・映画業界は、違法コピーによって著作権が脅かされることを恐れ、ネット上の流通に消極的である。しかし、コピーが売上へどれほど影響を与えるかは明らかではない。違法コピーが禁じられたとして、そのユーザがオリジナルを買うとは限らないからである。本稿ではファイル交換ソフトWinnyをとりあげ、これによる音楽CDのファイル交換がオリジナルCDの売上を減少させているかどうかを調査した。結果、WinnyがCD売上を減少させている証拠は乏しく、仮に減少させているとしてもきわめて僅かであることが示された。著作権保護の最適水準の立場からは、現状の著作権保護水準は過剰であり、少し弱めた方が社会的厚生は高まる。またビジネスの立場からは、少々の違法コピーは恐れずにネット配信に乗り出すべきである。
NGOは会議や様々な協議制度において実際にどのような「地位」を占めているのだろうか。本研究では、第25回財務省・NGO定期協議制度を事例として取り上げ、この定期協議内で、誰がイニシアチブをとり協議を進めているのかを分析した。そして、「定期協議内において中心的に協議をリードするアクターが不在なため、NGOも財務省も協議制度内で明確なイニシアチブを取れないでいる」、という仮説の検証を行った。