脳神経外科ジャーナル
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最新号
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特集 神経外傷・救急
  • 末廣 栄一, 河島 雅到, 松野 彰
    2023 年 32 巻 6 号 p. 350-355
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     頭部外傷診療において, 外傷初期診療~脳神経外科手術~神経集中治療~リハビリテーションとseamlessな診療連携が重要である. 脳損傷は不可逆的な損傷であり, ひとたび損傷が生じると回復は困難である. 頭部を含めた外傷診療では, 外傷初期診療ガイドラインや頭部外傷治療・管理のガイドラインなど診療の標準化が進み, 救急医や脳神経外科医, 集中治療医による役割分担がなされるようになった. それぞれの専門治療の質が向上し高い治療成果が得られる一方で, 適切な連携体制が求められる. われわれ脳神経外科医も外傷診療チームの一員としてガイドラインの共有が必要である. お互いを知ることで頭部外傷患者の転帰改善が期待できる.

  • 室井 愛, 中尾 隼三, 石川 栄一
    2023 年 32 巻 6 号 p. 356-361
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     スポーツ関連頭部外傷のほとんどは, 脳振盪をはじめとする意識障害が軽度の軽症頭部外傷である. 脳振盪は頭部打撲後に起こる一過性の神経機能障害と定義され大多数は1週間以内に症状が消失するが, 数カ月にわたり症状が遷延することもある. 早すぎる競技復帰は症状の遷延や再発のリスクとなるため, まずは安静, その後段階的に復学や競技復帰するよう指導する必要がある. 脳振盪の診断は症状や認知機能, 平衡機能などを総合的に判断するが, 重症度や回復を示す客観的な指標はない. MRI, 血液などのバイオマーカーについての新たな知見により, より安全な競技復帰の基準が確立されることが期待される.

  • 友田 明美
    2023 年 32 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     虐待をはじめとした親 (養育者) からの不適切な養育 (チャイルド・マルトリートメント) が, 子どもの脳を傷つけることが明らかになってきた. マルトリートメントによるダメージから, 子どもたちの脳をいかに守ればよいのか. 子どもの脳を傷つけないために 「マルトリートメント (マルトリ) 予防®」 と 「とも育て® (共同子育て) 」 の重要性を脳科学の観点から概説する.

  • 安原 隆雄, 藪野 諭, 菅原 千明, 伊達 勲
    2023 年 32 巻 6 号 p. 368-374
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     外傷性脳損傷・脊髄損傷は一度生じると, 時計の針を戻すことはできず, 減圧・全身管理・固定など, 二次的な損傷をいかに防ぐかに主眼を置いた治療が, 現在主に行われている. しかし, 長期予後は必ずしも明るいものではなく, 細胞療法を含めた再生医療は大きな期待を受けている. 一方, リハビリテーションは外傷性脳損傷・脊髄損傷患者が機能改善を得るために不可欠であり, 神経保護効果・神経新生効果も期待されている. 細胞療法においてもリハビリテーションは成否の鍵と認識されており, 臨床研究においてもどのように扱うかは難しい問題といえる. これからの細胞療法・リハビリテーションを含めた再生医療の本質を見極めて, 前に進んでいきたい.

温故創新
症例報告
  • 岡 美栄子, 林 基弘, 堀場 綾子, 川俣 貴一
    2023 年 32 巻 6 号 p. 378-384
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     転移性脳腫瘍の石灰化は比較的まれで長期生存するとされるが, 経過には評価不十分な点も多い. 今回, ガンマナイフ治療後比較的早期に再発を繰り返した症例を報告する. 症例は80代女性, 肺腺癌と診断され維持化学療法施行中にふらつき精査で石灰化病変を伴う右小脳腫瘍を指摘された. 高齢, 低心機能など全身状態を考慮しガンマナイフ治療を選択した. 初回治療後腫瘍縮小を認めるも, 6カ月後に再発をきたした. 再治療後再び腫瘍縮小を認めるも, 6カ月後に再々発をきたした. 石灰化にはさまざまな機序があるが, 原因によっては予後不良因子が背景にある可能性や, 放射線抵抗性に影響がある可能性があり, 今後さらなる検討が必要と考えられる.

  • 大金 望由紀, 佐藤 幹, 本島 卓幸, 木原 一徳, 渡辺 敦史, 中村 元貞, 福田 和正, 中村 孝雄
    2023 年 32 巻 6 号 p. 385-390
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     症例は15歳男児. ランニング中に突然の激しい頭痛, 左不全麻痺が出現し, 右基底核部に脳梗塞を認めた. 当初は右内頚動脈終末部の狭窄, その後閉塞をきたしていたが, その改善後に右中大脳動脈M1・M2部に新しく狭窄を認め, 同部位の狭窄も最終的に改善した. 鑑別疾患としては可逆性脳血管攣縮症候群 (RCVS) や動脈解離, focal cerebral arteriopathy (FCA) などであったが, 可逆的な血管攣縮像や経過から, RCVSの可能性が高いと考えられた. 脳血管狭窄を伴う小児脳梗塞でRCVSを疑った場合は, 経時的に別部位に新しい狭窄部が出現する場合があり, 長期間のフォローが必要と考えられた.

脳神経外科診療とIT
  • 大山 彦光, 岩室 宏一, 梅村 淳, 服部 信孝
    2023 年 32 巻 6 号 p. 391-394
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

     人工知能は, 人間の知能を模すことができるコンピュータプログラムであり, 深層学習の発達によって機能が飛躍的に向上している. 脳深部刺激療法における治療のプロセスには, 患者のスクリーニング・適応評価, 手術 (標的座標の決定, 微小電極記録・リード挿入, パルス発生装置の挿入), 術後には, 刺激部位・刺激設定の決定, 日々の診療における刺激装置の微調整があり, これらのプロセスにおいて自動化や人工知能の応用の試みが始まっている. デバイスの高度化に伴い, 特に刺激プログラムの自動設定についての必要性が高まっている. 本稿では, 脳深部刺激療法における人工知能の応用の現状と今後の展望について述べる.

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