日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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70 巻, 7 号
選択された号の論文の61件中51~61を表示しています
症例
  • 徳田 恵美, 杉崎 勝好, 青木 文夫, 保坂 晃弘, 日吉 雅也, 正木 幸善
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2170-2173
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.腰痛と右大腿部痛による歩行困難で当院受診.回腸憩室穿孔による回盲部切除術の既往があった.白血球19,000/mm3,CRP 31.92mg/dlと上昇,腹部CT上にて腹腔内にわずかにfree airを認め,右腎上極から右大腿にかけて膿瘍腔を認めた.消化管穿孔による後腹膜膿瘍と診断し緊急開腹手術を行った.回腸穿孔,腸腰筋の壊死を伴う後腹膜膿瘍の所見にて,右半結腸切除術・腹腔内ドレナージ術を施行.病理組織検査で回腸に炎症を伴う憩室を認め,回腸憩室炎による腸管穿孔,後腹膜穿通と診断した.術後45日目に消化管穿孔を疑う所見を認めCF施行.腸管穿孔と診断し第49病日緊急手術施行.前回手術吻合部付近に穿孔部を認め,腸管部分切除・回腸人工肛門造設術を行った.再手術時の病理所見は,穿孔部に憩室の存在は認めなかった.術後経過は良好で,現在外来にて経過観察中である.
  • 野田 弘志, 住永 佳久, 小西 文雄
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2174-2177
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下手術はその低侵襲性から急速に腹部各臓器に対する手術として普及し,後腹膜腫瘍への腹腔鏡手術の施行例の報告も散見される.われわれは径約7cmの後腹膜脂肪腫に対して腹腔鏡下摘出術を施行した.症例は30歳代の男性.CT検査,MRI検査で内部構造が均一な脂肪成分から構成される腫瘍が左腎周囲腔に,左副腎,左腎を圧排するように存在しており,同部から発生した後腹膜脂肪腫と考えられた.手術は完全鏡視下にGerota筋膜を脂肪腫側に付着させ腫瘍周囲を切離するとともに,被膜を損傷することなく全周剥離し,左副腎を温存して摘出に成功した.腹腔鏡下手術の特徴である拡大された視野での詳細な観察の下での安全な手術操作は,後腹膜腫瘍に対して有用と考えられ,今後の積極的な活用が期待されると考えられた.
  • 阪井 満, 河合 庸仁, 仲田 和彦, 吉田 滋, 奥村 徳夫, 佐久間 康平
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2178-2181
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.前日から持続する嘔吐と腹痛のため当院を受診された.来院時,腹部膨満を認めるも筋性防御はなく,採血上は炎症所見を認めなかった.直ちに施行されたMD-CTの矢状断および冠状断では,小腸が下大静脈と門脈との間を通って網嚢内に入り込んでいる像が確認された.腹膜刺激症状は軽度であったが,保存的治療は困難と判断され,同日緊急手術を施行した.開腹時,回腸末端から約100cm口側の小腸が40cmにわたってWinslow孔に嵌頓していた.用手的に整復し,腸管切除は必要としなかった.Winslow孔は2横指とやや開大していたが,縫縮などの処置は特に行わなかった.本症例において,MD-CTは術前診断に極めて有用であった.原因不明のイレウスの診断の際には,本症も念頭におき,画像診断を行う必要があると考えられた.
  • 草場 隆史, 山口 榮一郎, 本庄 誠司
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2182-2185
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.10歳頃から臍ヘルニアを自覚するも放置していたが,50歳頃から臍ヘルニア膨隆増大傾向となり,63歳時に手術目的で近医より当科紹介となった.精査にて臍ヘルニアの増大原因は,常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease;以下ADPKDと略記する)と判明した.本症例ではヘルニアの大きさは4cm大で,嵌頓歴は認められなかった.しかし難治性であるADPKDは進行性疾患のため,今後のヘルニアの大きさの増大と嵌頓出現を危惧し臍ヘルニア根治術を施行した.術後経過は良好であった.しかしADPKDには腎臓をはじめ,その他の様々な臓器にも障害が生じる遺伝疾患であり,退院後も経過観察が重要と考えられた.ADPKDが原因となった臍ヘルニアの症例報告例は存在しなかったため,本症を報告し理解しておく必要性があると思われた.
  • 篠原 永光, 椿 雅光, 河崎 秀樹
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2186-2189
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    外傷に起因する腹壁ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は52歳,女性.平成18年6月交通事故で3カ月の入院加療を受けた.退院後より右側腹部の膨隆を自覚していたが平成19年3月頃より膨隆部の増大,疼痛が出現し当科受診した.腹部CTで右腸骨上前縁側腹壁に筋断裂および上行結腸の脱出を認め,同年10月外傷性腹壁ヘルニアの診断で手術を施行した.ヘルニア門の大きさは6×5cmと巨大で,内・外腹斜筋,腹横筋に断裂を認めた.これに対しPROLENE Soft®を用いヘルニア修復術を施行した.術後は合併症なく退院し,現在術後14カ月再発なく経過良好である.
    PROLENE Soft®は従来のメッシュよりしなやかで装着部にフィットする.これにより異物感の軽減が可能であり本症例のような広範な欠損に対して有用と考えられた.
  • 日月 亜紀子, 山片 重人, 阿古 英次, 金原 功, 西村 重彦, 妙中 直之
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2190-2194
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.腹痛にて近医を受診.イレウスと診断されイレウス管挿入となった.入院8病日に右大腿静脈より中心静脈カテーテルを挿入され輸液を投与されるも異常はなかった.当院転院11病日の未明より嘔吐・腹満が出現し,脱水の進行も認めた.腹部CT検査で後腹膜の液体貯留と腹水,カテーテルの先端の位置異常とその近傍に小さなair像を認めた.中心静脈カテーテルからの造影剤注入後,再度腹部CT検査を行ったところ,後腹膜への造影剤の漏出が認められ,静脈穿孔による後腹膜輸液に伴う腹水貯留と診断した.静脈穿孔の原因としては,腰静脈への中心静脈カテーテルの迷入によると考えられた.明らかにmislodgingが原因とされる血管外輸液の本邦報告例は,自験例が14例目であった.中心静脈カテーテルに起因する合併症は早期に発症することが比較的多いが,本症例のように留置20日後に発症することもあり注意が必要である.
  • 森脇 義弘, 豊田 洋, 小菅 宇之, 杉山 貢, 鈴木 範行
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2195-2199
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    30歳,男性.前胸部(胸骨柄左外側)と右側腹部(上前腸骨棘付近)を銃撃され緊急搬送された.意識清明,血圧56/33mmHg,脈拍数129回/分,呼吸数36回/分でショック状態,心エコーで心嚢内液体貯留はなかったが,右胸腔ドレナージ後,来院18分,受傷32分で緊急手術とした.胸骨正中切開で開胸,縦隔血腫,心嚢内血腫,左胸膜損傷は認めず,胸骨骨折と右内胸動脈断裂,右肺損傷を認め,結紮止血と胸腔ドレナージで対応した.腹腔内では,S状結腸間膜,盲腸損傷を認め,縫合止血,縫合閉鎖した.左内腸骨静脈付近から仙骨前面に出血が持続し止血困難で,ガーゼ圧迫留置とした.術後43時間でガーゼを除去,第35病日に軽快退院となった.銃創は本邦では稀な外傷形態だが,出血や致命的臓器損傷など超緊急処置を要することも多い.術前に決定した治療戦略に固執することなく,手術中も厳重な状態観察を継続し,damage controlへの戦略変更など柔軟な対応が重要と思われた.
  • 小俣 秀雄, 井上 慎吾, 井上 正行, 岡本 廣挙, 丸山 孝教, 藤井 秀樹
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2200-2205
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性.右乳房の腫瘤を自覚し当科を受診した.右乳房ACE領域に径2cmの腫瘤を触知した.乳腺エコーでは,左乳腺乳頭直下に径22mmの類円形の高エコー腫瘤を認めた.胸部CT検査では,右乳腺に一致して23mm大の境界明瞭な腫瘤が認められたが,皮膚,大胸筋への浸潤,および明らかなリンパ節転移は認められなかった.また,術前検査により,骨転移を伴う前立腺癌に罹患していることが明らかになった.右乳癌,T2N0M0,StageIIA,骨転移を伴う前立腺癌の診断で,前立腺癌に対してはホルモン療法を施行することとし,乳癌に対して胸筋温存乳房切除術を施行した.乳癌の病理診断は,粘液癌であった.ホルモン依存性癌である乳癌,前立腺癌はホルモン動態が相反する.両病変が同時に存在した場合の手術後の補助療法(内分泌療法)は,両病変が同時性に認められた報告例が少なく,治療法は確立されていない.
  • 森田 剛文, 坂口 孝宣, 稲葉 圭介, 馬場 聡, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2206-2210
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.40歳時にCrohn病と診断され,近医通院中だった.腹部超音波検査にて胆嚢癌を疑われ,当科紹介受診.腹部CTにて胆嚢体部に不整な壁肥厚,肝床浸潤を認めた.腹部MRIでは膵尾部に約1cm大の造影効果に乏しい腫瘍を認め,尾側膵管の拡張を認めた.胆嚢癌・膵癌同時性重複癌と診断し,肝膵同時切除を行った.回腸末端部は発赤・浮腫状で,fat-wrappingも見られ,Crohn病に矛盾しなかった.術後はAeromonas Hydrophilaによる敗血症,大量の胸腹水,胆汁瘻等を発症し,治療に難渋したが,第89病日に軽快退院した.手術を契機に発症したAeromonas Hydrophila感染症の報告はまれであるが,致命率が高く注意すべき術後感染症と思われた.
  • 三木 友一朗, 宮崎 道彦, 辻江 正徳, 安井 昌義, 池永 雅一, 三嶋 秀行
    2009 年 70 巻 7 号 p. 2211-2214
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    Fournier症候群は病巣が会陰部である壊死性筋膜炎を1883年にFournierが報告し認知されるようになった.今回,2007年から2008年にかけて当科で経験したFournier症候群4例(女性2例)について報告する.年齢の中央値は38歳(34歳~84歳).基礎疾患としてHIV感染症が2例,糖尿病が1例,子宮頸癌に対する放射線治療後が1例であった.発症から当科受診までの期間は2日~約2カ月と様々であった.起炎菌は多種多様であった.治療は全ての症例で広範囲なデブリードマンを行い,大量の抗生剤投与を行った.子宮頸癌放射線治療後の1例は直腸膣瘻が遺残し,感染が持続したため死亡に至ったが,残りの3例(75%)については救命可能であった.
編集後記
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