馬の指(趾)関節が蝶番関節に近似するとの観点から矢状断面曲線を求め, 解析的に吟味して次の結呆を得た. 1) 指関節は凹凸2つの機素の滑動を主にする低次対偶であつて, 関節を構成する面の断面曲線は幾何学的曲線をもつて表しうると予想し, 曲線の性質, 運動の形式を推定した. 2) 断面曲線の曲率中心及び曲率半径の変異の状態を観察し, 凸面では面はおおむね楕円, 又は円, 凹面では〓物線, 円, 及びその組合せ等を近似的な幾何学的曲線とすることができることを確めた.3) 円と断面曲線との偏差が僅少なので, 曲線の大部分を含む近似円を求めた. 凹面の半径が必ず凸面より大であるから, その運動には多少の転動が加わりうることが考えられた. 4) 平均曲率半径によつて曲線の近似円をえがき滑動を条件にして運動範囲を計算した. 靱帯標本から実測した運動範囲と比較した. 5) 近似円によつて動骨上の定点の軌跡を解析的に表し, 実際の運動の軌跡と比較する基礎方式とした. 終りに臨み終始懇篤なる御指導を賜りたる東大野村助教授に衷心より敬意を表すると共に数値処理に協力援助された東大労役生理学教室富永氏に深謝する次第である.
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