大家畜の精管における神経終末についての記載は見られない. 本研究では, 馬および牛の精管(馬の精管膨大部を含めて)における神経の終末について, BIELSCHOWSKY 鍍銀法の変法を用いて組織学的に検索し, あわせて, ラットの精管について, 神経終末を CHAMPY-MAILLET のオスミウム酸-沃化亜鉛法, および KOELLE と FRIEDEN-WALD のコリンエステラーゼ検索法の変法を用いて調べ, それらの結果を比較検討した. 結果を要約すれば, 次の通りである. 1) 精管外膜にある精管神経叢から分岐した神経束は, 平滑筋層および粘膜に分布する. 神経束は筋層にはいって, いくつかの枝に分かれるか, あるいは, ところどころで, 単一の小分枝を出して, 筋層に分布する. これらの分枝は, シュワン細胞の核をともなう自律神経終末に移行し, その終末の神経軸索は, 平滑筋細胞の間を走る. 2) 馬の精管外膜において, 筋層にきわめて近く, 知覚神経終末構造が見られた. 3) 馬,牛, ラットのいずれにおいても, 上皮下神経叢が認められたが, とくに, ラットでは, 上皮下神経叢および, 粘膜下神経叢が, 区別して, 認められた. また, これら二つの神経叢は, 強いアセチルコリンエステラーゼ活性を示した. 4) 精管膨大部の筋層における神経終末は, 精管のそれと全く同様である. 固有層中には, 多くの自律神経終末線維が認められるが, それらのうちの多くは, 固有層中に散在する平滑筋細胞に分布するものと思われる. ほかに, 分泌神経線維の存在の可能性も, 示唆された.
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