昭和33年1月から昭和34年2月に亘って屠場材料を使用し, 牛の肝臓内ビタミンA含有量の変動を検索した. 昭和33年1月には肝臓内各部位(左葉, 方形葉, 右葉, 右葉周縁)の濃度を比較した. これと同時に各部位の病変を組織学的に検索した結果, 結合織の増殖は左葉が一番強く方形葉が一番軽かったが, これに対してビタミンAの肝臓内濃度は左葉が一番低く, 方形葉が一番高かった. 4月には方形葉のみを採取して同様の検索をした結果, 肝病変(主として結合織の増殖)の程度の高い例ほどビタミンAの含有量が少かった. またビタミンAの肝内濃度と肝の脂防変性との関係を調べたが, 脂肪変性をおこしているものではその型の如何に拘わらず正常のものに比べてビタミンAの肝内濃度は低かった. 又同時にビタミンAの肝内濃度と乳腺内濃度とを検査したが相関々係はみられなかった. 肝臓のビタミンA濃度とグリコーゲン濃度について検索したが相関々係はみられなかった. ビタミンAの肝臓内の濃度と血漿中の濃度についてもこれらの相関々係はみられなかった. 昭和33年1月から昭和34年2月に亘る期間に肝臓方形葉内のビタミンA含有量の検査を6回行った結果, 含有量は12月に最も高く4月に最も低かった. 1月, 2月, 4月, 7月に測定されたものでは200-400I.U./wetgの範囲にはいるものが最も多く, 10月, 12月に測定されたものでは400-600I.U./wet gにはいるものが最も多かった. 含有量の平均値の変動をみると1月から次第に減少して4月に最低となるがこの減少は統計的に有意義ではなかった. 4月から7月にかけて次第に上昇し, この状態はその後も継続してl2月に最高となり以後再び減少する. 4月の最低期と12月の最高値との間には明かに統計的に有意義な差がみられた.
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