外肛門括約筋(以下, 本筋と呼ぶ)の機能的な特微を概観するために, 筋電図学的な解析を試みた. 安定した放電活動を観察, 記録するために, 実験材料には, よく訓練された成犬2頭を使用し, また筋電図の誘導は, 痛みをさけるために, 銀鍼電極誘導法によった. 1) 正常の駐立静止時では, 本筋のτ-S曲線は, 四肢下部の筋のそれよりも右偏し, 犬の骨格筋のこの曲線の中で最も水平部分が長く, 上昇部分の傾斜がゆるい. 本筋の活動には, spinalの神経機構の活動の要素が著しく多いと解釈される. 2) 横臥, 仰臥, 腹臥, 犬座姿勢など, 体位の変化によって, 本筋のτ-S曲線の位置は左偏し, cortical の神経機構の活動の要素の参加が増大すると考えられる. 3) 傾斜した板上に立たせ, 前凭あるいは後凭姿勢をとらせても, 本筋のτ-S点の分布は, 同じく左偏してくる. 4) 個体により, 本筋のτ-S曲線の位置に差が認められた. 5) 犬が駐立している地盤の前後を挙上して, 前凭姿勢または後凭姿勢に移行させる場合の単一 NMU の放電間隔の変動について観察した. その結果, 前者の場合には, 放電間隔の変動が大きく, 後者の場合には, 放電間隔が著しく短縮し, 同時に不規則な変動の幅が極度に減少することを知った.
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