日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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51 巻, 6 号
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  • 諏佐 信行, 上野 俊治, 古川 義宣, 道場 尚輝, 箕浦 清二郎
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1103-1110
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    6価(K2Cr2O7)および3価クロム(Cr(NO3)3)を腹腔内投与(20mgCr/kg)したマウスにおける, 組織内の脂質過酸化(チオバルビツール酸反応物質)と組織障害との関連性について検討し, 以下の成績を得た. (1) 6価クロムは, 肝臓内脂質過酸化を著明に促進し, 腎臓内のこれを僅かに促進したが, 3価クロムは, これらを促進し得なかった. (2) 6価クロム投与マウスの肝および腎臓内クロム含量は, 3価クロム投与マウスのそれらより高かった. (3) 還元剤であるL-アスコルビン酸は, 6価クロムによって誘起された組織内脂質過酸化の促進, 組織内クロム蓄積, 肝臓(血清オルニチン・カルバミル・トランスフェラーゼ活性の増加)および腎臓障害(血清尿素窒素量の増加)をそれぞれ抑制した. (4) 抗酸化剤であるN, N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミンは, 6価クロムによる組織内の脂質過酸化促進を抑制したが, クロムの蓄積および組織障害を抑制し得なかった. 以上の成績から, 6価クロムは組織内の脂質過酸化を促進することが明らかとなったが, 認められた脂質過酸化の促進は, 6価クロムの毒性発現に直接関与しないことが示唆された.
  • 平岩 和通, 新城 敏晴
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1111-1114
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Fusobacterium necrophorum生物型Cの3株をマウスの腹腔内および門脈内に接種して病原性を調べた. 全てのマウスが生残した. 腹腔内接種した15匹のマウスは, 1匹に肝膿瘍が形成された. 接種菌は, 膿瘍とその肝組織から分離されたが, その他のマウスでは, 病変はなく, 接種菌も分離されなかった. 門脈内に接種したマウスでは, 肝膿瘍はなく, 肉眼的な変化もなかったが, 4匹のマウスの肝臓から接種菌が回収された. F。necrophorum生物型Cは他の2生物型に比べると病原性が弱い事が明らかとなった.
  • 清水 実嗣, 渡辺 斉, 佐藤 国雄, 村上 晋一
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1115-1122
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    持続感染牛17頭および粘膜病牛12頭から最近分離した牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルスの抗原性状を既知のウイルス株と比較した. 既知のウイルス株は, 交差中和試験により2群(N, K群と仮称)に大別された. 野外分離株の抗原性状は, ウイルス分離材料の由来により異なっていた. 持続感染牛から分離した17株のうち12および2株がそれぞれK群, N群ウイルスと類似した抗原性状を示し, 残りの3株は分類不能であった. 一方, 粘膜病由来ウイルスのうち10株がN群ウイルスと見なされ, 2株はいずれの群にも属さなかった. 粘膜病由来ウイルスの中にK群ウイルスと見なされるウイルスはなかった. 1974~1988年に北海道内で採取した牛血清713について, 両群ウイルスに対する抗体調査を行った. その結果, 1981年以前にはK群ウイルス以外の感染が多く, K群ウイルスの感染が示唆される牛は存在しなかった. K群ウイルスの感染が疑われる牛は1982年に初めて出現し, 最近は同ウイルスによる感染が増加傾向にあることが明かとなった. 以上の成績から野外には様々な抗原性状を有する牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルスが流行していること, また同ウイルスの病原性と抗原性状が関連する可能性が示唆された.
  • 加藤 清雄, 浅川 昇, 峯尾 仁, 牛島 純一
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1123-1127
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    全乳と代用乳のみを給与され, まだルーメン発酵を開始していない2週齢以内の子ウシと40日齢で離乳され, 既にルーメン発酵を開始している13週齢の子ウシを用いて, 膵外分泌に及ほす短鎖脂肪酸の影響を麻酔下で研究した. 2週齢子ウシの膵液の基礎流量, 膵液中の蛋白濃度およびアミラーゼ活性は13週齢子ウシのものより有意に低かった. 酢酸, プロピオン酸および酪酸の静脈内投与は両群の子ウシにおいて膵液分泌, 蛋白放出およびアミラーゼ放出を刺激し, それらの反応は脂肪酸分子中の炭素数の増加とともに増大した. 体重1kg当りのアミラーゼ放出量は13週齢子ウシより2週齢子ウシにおいて有意に少なかったが, 2週齢子ウシにおける体重1kg当りの膵液流量と蛋白放出量は13週齢子ウシの場合と等しいか, それよりも多かった. これらの結果は, 子ウシ, そしておそらく他の反芻動物の短鎖脂肪酸によって刺激されるという膵臓の特性は生後発育の過程で生ずるのではなく, ルーメン発酵が始まる前に既に獲得されていることを示している.
  • 樋口 誠一, 江面 和彦, 浜名 盛浩, 川村 清市, 安田 純夫
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1129-1135
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    フタトゲチマダニの若ダニの中腸内における Babesia ovataの発育について観察した. 飽血12時間以内のダニ・中腸内容物中には B. ovataのメロゾイドが観察され. その後直径2~3μmの比較的大きな輪状形のいわゆるring-formに変形した. 飽血48~72時間以内では, ring-form (4~5μm)は好塩基性を呈するspherical-formに発育した. 飽血3~4日後の間には, 2核を有するfission-formがfission-bodyに変形した. 飽血4~6日後の間には, bizarre-form (6~7μm) と長さ6~8μmでelongated-formのミクロガメイトと考えられる像も観察された. 飽血後6~8日後の間には, 腸内に円形(直径8~10μm)のチゴートを検出した. さらにチゴートは10日頃以降長径13~15μmのvermicule-formに変化し, これらの虫体は消化管から消失した.
  • 播谷 亮, 石野 清之, 岡 基, 中沢 宗生, 林 勝, 成田 實, 滝沢 隆安
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1137-1141
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Pasteurella haemolytica (P. h.)が分離された野外例子牛肺炎組織について, 酵素抗体法を応用して病理学的に検査した. その結果, 多発性壊死巣が42頭のうち25頭(59.5%)に観察され, それらのうち22頭の壊死巣にP. h.抗原が検出された. 子牛はP. h.の分離菌量によって3群に分けられたが, 酵素抗体法による菌抗原の検出率は平均で66.6%, 分離菌量が多い群では85.7%に達した.
  • 本多 英一, 勝 泰彰, 藤井 智子, 岡崎 克則, 熊谷 哲夫
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1143-1149
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    我が国で分離された呼吸器および腔由来牛ヘルペスウイルス1型(BHV-1)をSDSポリアクリアミドゲル電気泳動および制限酵素(EcoRI, BamHI, Hind III, Hpa I)によるDNA断片の泳動像による比較を行った. ポリペプチド, DNAの両方の比較によっても腔由来の一株(M1)が他の呼吸器由来のBHV-1(IBRウイルス)とは異なる泳動像を示し, IPVウイルスであることがわかった. これは日本で最初のIPVウイルスの確認である. またM1のDNAはHind III, Hpa Iでの切断像からIPVウイルスのサブタイプの可能性を示した.
  • 磯貝 浩, 磯貝 恵美子, 岡本 英美, 白川 博克, 中村 富士子, 松本 隆, 渡辺 敏彦, 三浦 宏子, 青井 陽, 籠田 若江, 高 ...
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1151-1162
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬における歯科疾患の保有状況を総計251例の雑種犬に対して1985年2月から12月にかけて調査した. 調査は東京都および北海道の動物管理事務所に収容されていた143例の野犬ないし預り犬および千葉県と北海道の動物病院を訪れた108例の愛玩犬に対して行われた. 歯科疾患の評価と統計処理はヒ卜の評価方法を改良して適用した. 歯周疾患が高率に多数の犬に認められ, 加齢にともない増加した. 炎症は上顎および下顎ともに小臼歯部と大臼歯部で著明であり, 切歯部では比較的軽度であった. 歯の喪失も高率に認められ, その部位は歯周疾患の罹患部位と一致した. 歯石の形成も多くの歯で認められ, その率は加齢にともない増加した. 齲歯は愛玩犬にはまったく認められず, 野犬にのみ認められた. しかし, その保有率および程度は極めて低かった. これらの調査結果は犬に対する本格的な歯科衛生, 歯科治療および継続的かつ定期的な歯科疾患に対する実態調査の必要性を指摘した. また, ヒトの評価方法を用いて犬の歯科疾患を評価する際には診査基準は変更せずに診査部位数を改良することにより適用できることが明らかとなった.
  • 今川 智敬, 橋本 善春, 北川 浩, 昆 泰寛, 工藤 規雄, 杉村 誠
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1163-1172
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    コイの血液細胞について光顕的および電顕的に検索した. コイの血液細胞には赤血球, 栓球, リンパ球, 果粒球および単球が区別された. 赤血球は有核で, しばしば末梢血中に幼若赤血球が認められた. 栓球は電顕的にヘテロクロマチンの豊富な核および細胞質内の小胞および微細管を特徴とし, リンパ球とは容易に区別された. リンパ球はその大きさから小, 中および大リンパ球に区別され, 一部の小ないし中リンパ球はANAE陽性を示し, 大リンパ球はピロニン好性を示した. 果粒球には光顕的に核と果粒の形態から, I型, II型およびIII型果粒球の3種が区別された. I型果粒球は分葉核を有し, ペルオキシダーゼ陽性の結晶様構造を有する微細果粒が細胞質内に散在していた. II型果粒球は偏在した核と果粒の充満した細胞質とを特徴とし, その果粒の電顕的特徴からさらにIIa型およびIIb型果粒球に区別された. IIa型果粒球の果粒は高電子密度の物質が果粒膜に接して存在し, IIb型果粒球の果粒は電子密度の異なる物質が不規則に存在していた. III型果粒球は円形核と少数の針状構造を有する酸好性大形果粒を特徴とした. 単球は哺乳類のものに類似していた.
  • 佐伯 英治, 石井 俊雄
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1173-1178
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Babesia rodhaini超音波処理(S)抗原と Corynebacterium parvum死菌体(CPB)混合物の最も効果的な免疫接種部位を明らかにすることに加え, 攻撃感染部位の相違による免疫マウスの応答の差について検討した. S抗原とCPBの腹腔内(IP)接種を受けたマウスは, その後のIPあるいは静脈内(IV)攻撃感染に対して良く抵抗し, それぞれ70および60%が耐過した. しかしながら, 筋肉内接種したマウスは攻撃部位を問わず全て斃死した. また, S抗原とCPBのIV接種を受けたマウスのIP攻撃に対する生残率は30%であったが, IV攻撃に対しては60%が耐過した. 以上の成績から, S抗原とCPBの免疫接種部位はIPが最も望ましいものと判断された. 一方, S抗原とフロインドの完全アジュバントをIP, IMおよび皮下に接種したマウスの, IP攻撃に対する生残率はそれぞれ33.3, 14.3および11.8%を示すに止まり, いずれもS抗原とCPB混合物の成績には及ばなかった.
  • 神谷 新司, 醍醐 正之
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1179-1184
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    経産牛の子宮動脈を組織学的に検索した. 非妊娠期の子宮動脈にみられた著明な硬変像は, 妊娠初期および産褥後期においても観察された. 妊娠中期と産褥中期の動脈では軽度ないし中等度の硬変像がみられたが, 妊娠末期および産褥初期ではほとんど観察されなかった. 以上の結果から, 既発妊娠性硬変は, 次回の妊娠の経過中に消失し, 分娩後に再び出現することが示唆された. このような変化は妊娠期における血流量の急激な増加に対応したものと考えるのが妥当と思われるが, 性ホルモンなどの影響も無視できないものと考えられた.
  • 小川 絵里, 永岡 厚子, 藤瀬 浩, 高橋 令治
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1185-1192
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    遺伝性高 Na, K-ATPase(犬HK赤血球)のメトヘモグロビン形成および還元について, 正常犬赤血球(犬LK赤血球)と比較した. 亜硝酸塩を用いて両者の溶血液への作用を観測することにより, ヘモグロビンはほほ同じ速度で酸化されることを確認した. また犬HK赤血球のヘモグロビンは, 細胞内に存在する大量のグルタチオンにより酸化が阻止されていることが明らかとなった. 一方, 亜硝酸塩で処理後洗浄した赤血球の, グルコースによるメトヘモグロビン還元は犬HK赤血球の方が促進されていた. またこれにともなう乳酸, ピルビン酸の生成は, 犬HK赤血球においてより著しいことが見出された. このことから犬HK赤血球のヘモグロビンは, 大量のGSHおよび解糖の促進により犬LK赤血球と比較して亜硝酸の酸化作用から強く防禦されているものと考えられた.
  • 清家 昇, 寺西 正俊, 山田 正一, 高倉 良, 長尾 慶和, 金川 弘司
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1193-1199
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    17頭の供卵(胚)牛から発情後7日目胚を132個回収し, 74個の正常胚を, 移植および切断2分離にそれぞれ, 44個および30個を用いた. 30個の胚を切断2分離し, 60個の2分離胚を作成した. 103個の胚(44個の非分離胚と59個の切断2分離胚)を103頭の受卵(胚)牛に移植した. 受胎率は非分離胚(A)で63.6%(28/44), 切断2分離胚(B)で74.6%(44/59)であった. 非分離胚と切断2分離胚の合計(A+B)では受胎率が69.9%(72/103)であったが, 元の胚(切断2分離をする前の胚)から見ると97.3%であった. 非分離胚と切断2分離胚の間で, 受胎率には統計学的な差はなかった. 30個の胚から作られた59個の切断2分離胚を59頭の受卵(胚)牛に移植して14組の1卵性双子を含む43頭の子ウシ(双子率: 46.7%, 元の胚からの受胎率: 143.3%)が誕生した. また, 供卵(胚)牛1頭当り4.2頭が受胎した. 通常のウシ受精卵(胚)移植において, 胚に対して切断2分離技術を併用する事によって, 元の胚からより多くの妊娠例を得る事が可能と思われる.
  • 菱沼 貢, 高橋 芳幸, 金川 弘司
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1201-1208
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ32頭から採取した卵管上皮細胞の培養を実施した. 卵管は卵胞期と黄体期および膨大部と峡部に分けて, 酵素処理によりそれぞれの部位から上皮細胞を分離した. 培養液は, Dulbeccoの修正Eagle培地とHam F12 (1:1)混合液に10%子ウシ血清を加えて使用した. 酵素処理後の細胞は, 単独の細胞と細胞塊から構成された. 単独の細胞は線毛を有するものと有しないものに分類され, 線毛を有しない細胞には分泌顆粒が認められた. 細胞塊には, 線毛細胞と分泌細胞が認められた. 培養12~24時間後には細胞塊がプラスチックシャーレに付着し, 2日目には単独の線毛細胞にも付着がみられた. 4日目には上皮細胞がシャーレ一面に単層を形成した. 単層を形成した細胞には線毛細胞と分泌細胞が認められたが. 分泌顆粒の数は減少していた. そのまま培養を継続した場合には, 5日目から線毛の運動性が低下し, 9日目にはほとんど認められなくなった. 培養3日目に継代を行った場合でもその後2日間しか線毛運動はみられなかった. シャーレに付着せず培養液中に浮遊している細胞塊は, 培養後2日目から球状を示した. 10-5あるいは10-9Mのestradiol-17βを含む培養液で細胞を培養した場合でも, 線毛運動の消長に変化はみられなかった. 培養細胞の発育については, 卵胞期と黄体期および膨大部と峡部との間に差は認められなかった.
  • 赤沢 典子, 谷口 和之, 見上 晋一
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1209-1217
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    下垂体-生殖腺系の機能に及ほすビタミンA欠乏の影響について, 下垂体前葉ホルモン及びテストステロン濃度を放射免疫法で測定し, 下垂体前葉の細胞学的変化を免疫細胞化学的方法と画像解析法を用いて検討した. VADラットは9週以後発育が停止し, 血中レチノール及びテストステロン含量が著しく減少し, 精細管は著しく退萎した. 血中GH, LH含量はやや減少したがFSH含量は有意に増加した. 下垂体前葉では, GH細胞は減少したが, FSH及びLH細胞は増数, 肥大した. このことは下垂体前葉細胞の変化やFSHの分泌の増加は精巣の退化に対する二次的変化を示すものと思われる.
  • 川合 覚, 高橋 清志, 川本 哲, 永原 昌子, 其田 三夫, 黒沢 隆, 小沼 操
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1219-1225
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Theileria sergenti感染赤血球を観察した. T. sergenti寄生の末梢赤血球内にはbar-structureおよびveilが認められ, これらの有無により感染赤血球をタイプI (bar-structureを有するもの), タイプII (veilを有するもの), タイプIII (bar-structureとveilを有するもの), タイプIV (両者とも認められないもの), に分けることができた. タイプIおよびタイプIIIの感染赤血球は, 寄生率の上昇に伴い増加する傾向が見られた. bar-structureはギムザ染色により明瞭な紫赤色に染色され, 直線状のものが多く希に湾曲しているものも観察された. bar-structureは赤血球の辺縁に位置することが多く, 虫体, veilはそれぞれ分離していた. T. sergenti陽性牛の血清を用いた蛍光抗体間接法による観察でbar-structureは, 強い特異蛍光を示したが, 1次抗体として虫体に対するモノクロナール抗体を用いた場合, bar-structureに特異蛍光は認められなかった. 電顕的観察において, bar-structureの周囲は赤血球膜と連続した膜構造を有し, その内部構造は空胞状であった.
  • 織間 博光, 筒井 敏彦, 脇 利彦, 河上 栄一, 小笠 晃
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1227-1229
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬と猫の持続性陰茎勃起症に対し, 陰茎海綿体白膜切開法を応用し治癒に導くことができた.
  • 板垣 慎一, 前田 尚之, 町田 一彦, 土井 邦雄, 光岡 知足
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1231-1233
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    3~8週齢DBA/2NCrjマウスの自然発生舌病変を電顕的に観察した. 筋小胞体内およびミトコンドリア膜の電子密度の上昇, ついで筋線維の断裂・粗鬆化を伴った不整筋節, さらに重度の例では, 筋線維の融解, 筋細胞全域にわたるmineralizationがみられ, 本病変は細胞壊死につづく異栄養性石灰沈着によることが示唆された.
  • 勝田 修, 田子 穣, 山岸 保彦, 土谷 稔
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1235-1238
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    卵巣原発の卵黄嚢腫瘍を病理学的に検索した. 光顕的にはPAS染色強陽性の豊富な硝子様基質と, その中に包埋されたような腫瘍細胞を特徴としていた. 腫瘍細胞には類円形を呈する小型細胞とトロホブラスト様巨細胞が認められた. これらは, 両染性で微小空胞状の細胞質とクロマチンに富む核を有していた. また免疫組織化学的にAFP陽性と陰性の細胞が認められた. 電顕的には腫瘍細胞内で粗面小胞体の著しい拡張が認められた.
  • 磯貝 浩, 磯貝 恵美子, 脇坂 仁美, 三浦 宏子, 新山 雅美, 安田 準, 東 量三, 近江 弘明, 高野 一雄
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1239-1241
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患犬と健康対照犬から得られた血清中の Porphyromonas (Bacteroides) asaccharolyticusに対する特異抗体価をELISA法で測定した. 超音波処理抗原(SA)を用いた時, 歯周疾患群は対照群に比較して有意に高いIgG抗体価を示した. その抗体価は歯肉炎指数および犬の年齢に相関した. 一方, リポ多糖抗原を用いた時およびIgM抗体価を検出した時には両群の間に差が認められなかった. SAに対する血清中のIgG抗体の測定は犬の歯周疾患に対する診断的価値があると考えられた.
  • 左向 敏紀, 武田 信一, 渋谷 正行, 小山 秀一, 内野 富弥, 本好 茂一
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1243-1245
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛において赤血球膜リン脂質分画, 構成脂肪酸の冬期および夏期の季節変化を測定した. リン脂質では, Sphingomyelin (SM), Phosphatidylethanolamine (PE)が主成分で, SMとPEの和は, 夏期, 冬期とも約90%をしめ, 冬期にSMが有意な高値, PEが低値であった. また, 構成脂肪酸分画は, 冬期に飽和脂肪酸の低値, 不飽和脂肪酸の高値が認められた. 牛の赤血球膜脂質も変温動物同様環境温度の変化により, その構成比に変化が起こると考えられた.
  • 稲葉 俊夫, 井上 明子, 中野 長久, 森 純一
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1247-1249
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ビタミンA欠乏食を与えたラットの子宮内に大腸菌を接種すると, 血漿中ビタミンA量はビタミンA給与ラットのそれと比べて有意な差が認められなくても, 肝中ビタミンA量は減少し, 子宮の感染抵抗性の有意な低下が生じることが認められた. さらに, 同ラットにビタミンAを補給することにより, 肝中ビタミンA量は増加し, 子宮の感染抵抗性が上昇することが認められた.
  • 山手 丈至, 田島 正典, 斎藤 敏樹, 東郷 正治, 渋谷 一元, 伊原 三重子, 工藤 悟
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1251-1254
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    MFH-MTの粘液領域に存在するGAGを組織化学的に証明した. GAGは, ウシ精巣ヒアルロニダーゼで完全に消化され, 次いでコンドロイチナーゼABC及びコンドロイチナーゼACで中等度に, streptomyces産生ヒアルロニダーゼで軽度に消化された. 粘液領域にはコンドロイチン硫酸とヒアルロン酸(HA)が存在することが示された. MFH-MTより採取したシスト液及びMFH-MTに由来する培養細胞の培養上清からGAGを抽出し, 標準GAGと共にセルロースアセテート膜上で電気泳動を行った. その結果, HAが検出され, MFH-MT構成細胞はHAを分泌することが証明された.
  • 佐伯 英治, 石井 俊雄
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1255-1257
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    B. rodhaini超音波処理抗原とCPBで初回免疫したマウスに対し, その3, 5および7週(追加免疫1, 3および5週)後に106の虫体で攻撃したところ, 生残率はそれぞれ83.0, 72.0および66.7%と逐次低下した. しかし, 攻撃4日前にCPBを追加接種するとマウスの抵抗性は回復し, 初回免疫7週間後の攻撃に対して92.3%が耐過した. 一方, CPB単独接種マウスも約半数が耐過した. 以上, CPBの特異および非特異的免疫増強効果が確認された.
  • 小峯 健一, 大田 博昭, 鎌田 信一, 内田 和夫, 吉川 泰弘, 山内 一也, 岡田 秀親
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1259-1262
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    伝染病ファブリキウスのう病ウイルス(IBDV)に対する特異抗体を特たない新鮮正常ニワトリ血清は, IBDVに対する中和活性を示した. この中和活性はMg2+依存性, Ca2+非依存性であり, さらに抗ウズラC3血清の添加により増強されたことから, 抗体非依存性の補体第2経路の活性化によることが示唆された. 新鮮正常ニワトリ血清で中和されたIBDVは, ニワトリ胚細胞では増殖できなかったが, ニワトリ脾細胞中のマクロファージと考えられるガラス壁付着細胞では増殖することがみいだされた.
  • 小谷 猛夫, 城 美香, 小田切 美晴, 榊原 義之, 堀内 貞治
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1263-1266
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌジステンパーウイルスに感染した5頭のレッザーパンダを病理学的に検索した. 気管支・肺胞・食道・胃・小腸・胆管・膵管・尿細管・腎孟・膀胱・精巣上体・子宮の各上皮細胞, 脾臓・リンパ節のリンパ球, 細網細胞の細胞質内及び核内に好酸性封入体形成を認めた.
  • 遠矢 幸伸, 畔高 政行, 高橋 英司, 小西 信一郎
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1267-1269
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌアデノウイルス2型分離株には, MDCK細胞において大・小のプラックを形成する変異株が混在していた. 両変異株は血清学的に区別されなかったが, 犬腎培養細胞における増殖曲線を比較したところ, 感染後40時間以上経過しても大プラック変異株の細胞外ウイルス量は, 小プラック変異株のそれの1000倍以上であり, プラックサイズと細胞外ウイルス量の関係が示唆された.
  • 鐵 伸弘, 稲葉 右二, 湯川 真嘉, 大場 茂夫, 吉木 研一, 平原 正, 出水田 昭弘, 古屋 美人, 伊藤 尚志
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1271-1274
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    仮性狂犬病(オーエスキー病)ウイルス(ブタヘルペスウイルス1)の赤血球凝集抑制(HI)試験で, 抗原-抗体混合物を4℃, 48時間感作すると, 一般的な37℃, 1時間感作よりも実験感染豚血清では4~8倍, 本病流行地の豚血清ではそのほとんどが2~32倍高いHI抗体価を示した. 以上の成績から, 4℃, 48時間感作HI試験は本病の血清診断として特に有効である.
  • 加藤 一典, 森 九重, 加藤 憲夫
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1275-1278
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    乳房炎乳のタンパク質の経日変化をSDS-ポリアクリアミドゲル電気泳動で解折したところ, 少なくとも12種類のタンパク質の変化が観察された.
  • Sakpuaram Thavajchai, 福安 嗣昭, 芦田 淨美
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1279-1281
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1987年6月~7月において, 屠場搬入の肺炎病巣保有豚120頭のうち25頭から A. pleuropneumoniae(104株)を分離した. 病変別の菌分離率は, 膿瘍では34.0%(16/47), 出血性肺炎では11.6%(5/43), 膿瘍と出血性肺炎を保有する肺炎では26.7%(4/15)であった. 分離菌株の血清型別を行ったところ, 1型2頭(10株), 2型21頭(85株) 8型2頭(8株), 9型1頭(1株)であり, 8型及び9型菌株は我が国で初めて分離された.
  • 米山 修, 納 敏, 木村 誠, 荒木 誠一, 一条 茂
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1283-1286
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    成牛にジヒドロヘプタプレノール(DHP)を投与し, 末梢血の好中球数および好中球機能への影響を検討した. 末梢血好中球数は, DHP投与(1mgまたは2mg/kg筋注)0.5および1日後に著明に増加し, NBT還元能は投与1および2日後に, また S. aureusに対する貪食・殺菌能は投与1, 2および3日後に著明に上昇した. 以上の成績から, DHPには成牛に対し好中球の増数, 貪食・殺菌能の増強などの非特異的免疫能を増強する効果があるものと考えられた.
  • 野村 武, 森谷 浩明, 菊池 直哉, 平棟 孝志
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1287-1289
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道, 岩手県及び兵庫県の45牧場で臨床的に乳房炎と診断された79頭の牛の乳汁から分離されたKlebsiella81株のうち, 67株がK. pneumoniae, 14株がK. oxytocaと同定された. 莢膜型を調べたところ, 81株中65株が21種類に型別され, 特に多い型は認められなかった. 1牧場で7種類もの型が分離されたことや, 1頭の3分房からそれぞれ異った型が分離されたことなどから, 牛の乳房炎に関与するKlesiellaの莢膜型は多様であることが示唆された.
  • 高井 伸二, 山懸 多加史, 椿 志郎
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1291-1293
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Rhodococcus equi感染子馬7頭の血中IgG及びIgM量を一元放射免疫拡散法, 抗R. equi IgG及びIgM抗体価を酵素抗体法により測定した. 2頭の子馬は低ガンマグロブリン血症を示し, 免疫応答も殆ど無かった. 残りの5頭のガンマグロブリン量は正常値の範囲内で, 高い抗体価を示した. これらの成績から, 感染した子馬の免疫状態には違いがあり, 感染素因は様々であることが推察された
  • 国枝 哲夫, 松井 南, 野村 靖夫, 石崎 良太郎, 吉田 廸弘, 今道 友則
    1989 年 51 巻 6 号 p. 1295-1298
    発行日: 1989/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    27系の近交系ラットについてヒトc-myc遺伝子をプロープとしてサザンブロットを行ったところ, EcoRI断片において系統間での多型性が認められた. 調べた27系統のうち25系統では17-kbの, 2系統では11-kbのEcoRI断片が得られた. この多型性は, c-myc遺伝子上流のEcoRIの認識部位における変異に起因するものであることが示唆された. ラットのc-myc遺伝子に関する標識として, この多型性は有効に利用できるものと考えられる.
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