日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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42 巻, 3 号
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  • 前出 吉光
    1980 年 42 巻 3 号 p. 281-288
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Haemobartonella felis人工感染猫を用いて, 感染に伴う赤血球膜脂質の変動を調べ, 赤血球浸透圧脆弱性との関連を検討した. その結果, 貧血の進行および赤血球浸透圧脆弱性の亢進に比例して赤血球コレステロールおよびリン脂質両者の著明な減少がみられた. しかし血漿コレステロールおよびリン脂質には有意の変動はみられなかった. また赤血球リン脂質のクラス組成には変化がなかった. 一方, 貧血の進行と共に赤血球の平均直径は短縮したが, 貧血の回復と共に増大した. 以上の成績について, 赤血球膜脂質減少の原因に関する若干の考察を試みた.
  • 石原 勝也, 大谷 健, 北川 均, 小沼 操
    1980 年 42 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    BLV抗体で陽性および陰性の2群に分類された178頭の黒毛和種について, S-LDH活性を経時的に4回測定した. その結果, 両群のS-LDH活性は, いずれの検査時点においても有意差がなかった. IDあるいはCFが陽転してから7~12ヵ月後において, この群のS-LDH活性は, 同じ群の陽転前に比べ有意差がなかった. いずれも無作為に抽出されたが, 19例の陽性群のzymogramは, 陰性群のそれよりLDH2およびLDH3活性が有意に高く, かつ, LDH1活性ほ有意に低かった. 8例の白血病群の平均S-LDH活性は, 陰陽両群に比ベ有意に高かった. しかし, その上昇は2例の白血病牛では認められなかった. さらに, 白血病牛isoenzyme分画では, S-LDH活性が上昇しなかった症例においても, LDH2およびLDH3活性の有意な上昇が認められた.
  • 大島 寛一, 小材 幸雄, 岡田 幸助, 沼宮内 茂
    1980 年 42 巻 3 号 p. 297-309
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1968年4月から1978年3月の間に得た成牛型牛白血病剖検例94例中11例(11.7%)が, ヨーロッパ共同体の血液学的診断基準により非白血性白血病と診断された. このうち3例は血液学的に末梢血中に異形細胞が143-450/cmm(1.5-3.6%)とほとんど認められず, 非白血病健康牛と区別し難いものであり, 他の8例はいわゆるリンパ球増多を示さないが, 異形細胞が891-2,912/cmm(9.5-28.0%)とかなり高率に認められた. 病理学的検索の結果, これらの腫瘍組織, あるいは腫瘍細胞は微細構造を含めて白血性白血病牛のそれと本質的に異なるものではなかった. 検索例全例を通じて脾臓における腫瘍細胞の増殖がほとんど認められなかったことは, 非白血性白血病牛の共通所見として取り上げられた. 末梢血中に異形細胞をほとんど認めない3例のうち, 1例は比較的病の初期を思わせるもので病巣の分布に乏しかったが, 他の2例ではかなり強い病巣が認められた. これらはいずれも他の例と異なり, 拡張したリンパ節洞における腫瘍細胞の浸潤増殖がび慢性かつ疎性であるため, 増殖した腫瘍細胞がまだ末梢血中に流入しないでいるように思われた. 以上の結果を総合し, 本病の生前診断に血液学的診断規準を応用する場合, 塗抹標本による詳細な観察が必要であることが論ぜられた.
  • 高橋 京子, 平野 紀夫, 後藤 直彰, 藤原 公策
    1980 年 42 巻 3 号 p. 311-317,321
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルスA59株105PFUを3日齢Fischer-CDFラットに脳内接種すると, ほとんどのラットは痙攣・運動失調などの中枢神経症状を呈し, 接種後6-13日で斃死した. 斃死したラットでは脳脊髄液の増量と大脳皮質の壊死性組織崩壊がみとめられた. 組織学的には接種後48時間から大脳皮質に軽度の炎症反応がみられ, 接種後72時間には神経細胞の萎縮, 核濃縮がおこり, 免疫螢光法で大脳皮質の多数の神経細胞にウイルス抗原をみとめた, 接種後96時間で大脳皮質の欠損が明らかになった. 7日齢で接種したラットはすべて生残し, 一旦形成ざれた大脳皮質壊死巣の修復像が観察された. 修復像は間葉系細胞とグリア細胞からなる, いわゆるグリア間葉系瘢痕で, 病巣周辺では星膠細胞の著しい増生がみとめられた. 2週齢以後に接種したラットでは病変の形成はほとんどみられなかった.
  • 小暮 一雄
    1980 年 42 巻 3 号 p. 323-329,335
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者が収集した犬の心臓標本306例のなかから僧帽弁線維症の特徴を有する64例の心臓標本の僧帽弁について, 形態学的再検討と詳細な計測を行なった. 形態学的観察の結果, 弁はちょうど"ヨットの帆を張ったような変形"を示し, その病変の好発部位は前尖の後半分と後尖の後交連に隣接する弁のrough zoneであった. 弁および腱索を計測した結果, 弁ではそのrough zoneに過度な伸展が認められ, 腱索ではrough zoneに挿入する腱索に強い伸張が認められた. 一方, 交連部やcleftに挿入する腱索には伸張は認められなかった. 組織学的には, fibrosaにある膠原線維の粘液変性と弁表面の線維性増殖が認められた. そして, 病変の進行とともに多量の酸性粘液多糖類の沈着を認めた. 特に腱索の断裂を伴なった症例では腱索の膠原線維にも粘液変性が認められた. これらの所見から, 本症の本質的病変は膠原線維の変性であり, その結果, 弁の脆弱化が起こって, 特徴的な変化をもたらすものと考えた. これらの特徴はヒトにおける僧帽弁逸脱症候群のそれに酷似し, 比較心形態学上興味深い.
  • 中川 雅郎, 斎藤 学, 木下 邦明, 鈴木 映子, 今泉 清
    1980 年 42 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    センダイウイルスのマウスに対する病原性と感染の経過を知る目的で, ddYおよびICR系4週齢マウスをあらかじめ本ウイルスを感染させたinfectorマウスと共にケージ内でcontactさせ, 30週間にわたって感染の推移を観察した. また同時に, これらのマウスから生まれた1代産子についても生後3週から16~18週にわたって同様な観察を行った. その結果, いずれの系統マウスも, contact後1~2日で気管や肺からウイルスが分離され始め, 6~7日で全例に肺病変が形成された. 血中HI抗体は7~10日で全例陽性に転じ, 抗体価は14日まで上昇し続けた. ウイルスは12日以降分離されなくなり, 9週後に陽性を示した一部の個体を除けば, 30週まですべて陰性であった. これとは逆に, HI抗体は30週まで全例が高力価を維持し, 過半数のマウスでは肺病変も30週まで持続した. しかし, 病巣部は時間の経過とともに気管支周囲に限局した. ICR系ではcontact後11~16日の間に高い死亡率を示したが, ddY系のそれは低かった. 一方, 両系統マウスの1代産子は, 離乳時に高いHI抗体価を示したが, その後急速に低下し, 7~14週齢で最低となり, この時期に一部の個体からウイルスが分離された. その後抗体は再上昇し, ウイルス分離も陰性になった. また, 1代産子における肺病巣発現率は感染親マウスより遙に低く, 立毛, 削痩などの臨床症状や死亡例はみられなかった.
  • 大永 博資, 石井 俊雄
    1980 年 42 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ヒナの腹腔細胞を用いて, 直接法ならびに間接法による白血球遊走阻止試験によってEimeria tenellaに対するヒナの免疫を検討した. 直接法では, 腹腔細胞の遊走は第2代メロゾイトから調製された抗原の添加により阻止された. 白血球遊走阻止因子の活性は50,000のオーシスト投与後1週で検出され, 50,000のオーシストを3回反復投与した後, 最終投与よリ3週間持続した. 免疫ヒナの脾細胞を抗原とともに培養した場合, 間接法において正常ヒナの腹腔細胞の遊走を阻止し得る因子が培養液中に産生された. 間接法では, 白血球遊走阻止因子の活性は50,000のオーシストの3回反復感染後5週まで検出された.
  • 山下 千恵, 島崎 秀雄, 三宅 勉, 斎藤 公志, 佐伯 百合夫, 石谷 類造
    1980 年 42 巻 3 号 p. 353-357,359
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    東京都多摩食肉衛生検査所において, 劣性遺伝によると思われる豚のポルフィリン症14例が発見された. 臨床所見では発育の遅れ, 高度貧血, ポルフィリン尿等が見られ, 血液塗抹の得られた例では赤血球の大小不同・変形赤血球症, 多染性赤血球・赤芽球等の出現が著明であった. 剖検所見では骨・骨髄・歯根部・肝・腎・脾・肺・リンパ節髄質・下垂体前葉等に高~中度のチョコレート色の着色が見られ, 重症例では消化管・体脂肪にも淡褐色の着色が見られた. これらの着色臓器は3650Å紫外線照射下で著明な赤色螢光を発した. 病理組織学的所見では, これら着色臓器の細網内皮系細胞内, 尿細管上皮細胞内および管腔内絮片に褐色のポルフィリン顆粒が認められ, 髄外造血巣が脾・肝・腎・副腎に多発し, 肝細胞・尿細管上皮細胞に軽い退行性変化が見られた.
  • 亀谷 勉, 桐生 啓治, 兼子 樹広, 佐藤 博
    1980 年 42 巻 3 号 p. 361-367,371
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    蹄葉炎罹患馬10例の罹患蹄17および非罹患蹄13を, 蹄壁肥厚の成立ちを探るべく, 葉状層を中心に病理組織学的に観察した. 指(趾)神経並びに指(趾)動・静脈の血管神経についても検索した. 罹患蹄は全て葉状層の著しい肥厚を呈していた; その厚さは22.2±8.3mm (A)であった. 罹患馬の非罹患蹄における厚さは6.6±4.1mm (B), そして対照43蹄における厚さは3.7±0.9mm (C)であった. AとB, 並びにAとCの間にはそれぞれ有意差(P<0.001)があった; BとCとの間にも有意差(P<0.05)があった. 罹患蹄の主要組織病変は: (a)表皮葉における不規則な強い上皮増殖, 上皮細胞の水腫性変性, 蹄芽原繊維の無形成, 不完全形成あるいは変性, 並びにケラトヒアリン顆粒の産生; (b)真皮葉並びに蹄壁真皮における水腫, 毛細血管および小静脈の拡張, 並びに神経束水腫. 末梢神経(血管神経を含む)はしばしば神経束水腫または多巣性神経繊維脱落またはその双方を呈していた. 対照80肢の指(趾)動脈の血管神経には稀にしか病変は見出されなかった. 蹄葉炎における蹄壁肥厚は葉状層肥厚に由来する. 葉状層肥厚の形態学的本体は, 表皮葉の不完全角化(すなわち不完全蹄質化)方向の再生性増殖(類表皮化生)である. 葉状層のこの変化は, 末梢神経系病変の存在によって推定される血管運動変調が一つの大きな成因となって起った循環障碍の影響であろう.
  • 中尾 敏彦, 河田 啓一郎, 沼田 芳明, 飯沼 真佐夫
    1980 年 42 巻 3 号 p. 373-375
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛卵胞嚢腫に対する黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)類縁化合物(TAP-031)およびピロリドン・ヨード液(PVP-I)による治療後14日目に, 直腸検査と血中黄体ホルモン濃度の測定により卵胞嚢腫の黄体化が確認された症例10頭にプロスタグランディン(PG)F類縁化合物(ONO-1052)を500~1,000μg筋肉内注射し, その発情誘起効果を調べた. 10頭中8頭で6日以内に発情が誘起され, 全頭に人工授精を行ったところ, 5頭が受胎した. 残りの3頭は21日後に再び発情が発現し, この時の授精で受胎した. これらの8頭における卵胞嚢腫治療開始後受胎までの平均日数は25±14日(S.D.)であった.
  • 倉本 和直, 西田 隆雄, 望月 公子
    1980 年 42 巻 3 号 p. 377-380
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    リュウキュウジャコウネズミの鼻甲介を, ハムスターと比べると, 1)鼻甲介の各部位の数は, nasoturbinateが1, maxilloturbinateが1, endoturbinateが4, ectoturbinateが3で同じである. 2)前者のnasoturbinateとmaxilloturbinateは後者より発達が悪いが, これらが認められる鼻腔の部分の長さでは前者が後者より大きい. 3)前者のendoturbinateとectoturbinateは後者より発達が良い.
  • 平井 克哉, 山下 照夫, 沢 英之, 高橋 誠, 島倉 省吾, 柵木 利昭, 井上 睦
    1980 年 42 巻 3 号 p. 381-383,385
    発行日: 1980/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    インドネシア共和国から1群50羽輸入され, 検疫の翌日某業者において斃死した2羽のオウム(Kakatoe sulpurea)からニューカッスル病ウイルスの強毒株が分離された. 愛玩用鳥類については輸入検疫の検討ならびに輸入業者, 小鳥店などの行政指導が必要であろう.
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