1983年1月から6月にかけ1養豚場において, 去勢創の止血不良および皮下の大量出血を主徴とする疾患が発生した. 発病は体重20~35kgの子豚に限られ, 360頭中50頭が発症し, 25頭が死亡した. 7月初旬に外見上健康な14群114頭の仔豚について, 血液凝固学的検査を行った結果, 5群の21例にprothrombin time(PT)およびactivated partial thromboplastin time(APTT)の延長およびビタミンK(以下, K)依存因子(第II, VII, IX, X因子)の減少を認めた. このうちの8例にK
1剤(K
1群)を, 6例にK
2剤(K
2群)をそれぞれ1回筋肉内に注射(3mg/kg)し, 投薬後の血液凝固学的所見の推移を観察した. 両群とも大多数例において, PTは3時間後に, APTTは14~21時間後に, また, 第VII, IXおよびX因子は3~14時間後に, 第II因子は14~21時間後にほぼ正常値に回復した. K
3剤の粉末を飼料中に添加給与(25ppm, 4日間)した3例(K
3群)では, 全例で給与開始21時間後にPTおよびAPTTは正常値に回復していた. 無処置4例(対照群)では, PT, APTTおよび血液凝固因子量に有意な変動はみられなかった. また, K
1, K
3群では30日後までPTおよびAPTTの異常は認められなかった. 以上の成績から, 本症はビタミンK欠乏症であることが確認され, 発病要因として抗菌物質の給与と飼料組成が疑われた.
抄録全体を表示