日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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30 巻, 2 号
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  • 五藤 精知, 中松 正雄, 森田 迪夫, 福井 徳麿
    1968 年 30 巻 2 号 p. 61-72_4
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1966年10月初旬,発痘後約20日を経過した3.5カ月令の豚の痘癒の自然感染例3例に遭遇した.それらは全身に著明な発痘を見,すてに痴皮を形成しているのもあった.組織学的には,すでに表皮は再生し,潰瘍の形成するものもあったが,封入体は認められなかった.真皮には,著明な組織球性反応のほか,好掖球・好中球の出現,出血・浮腫があり,異物巨細胞も認められた.これらの皮膚病巣を乳剤として,生後1カ月の子豚2頭の皮膚に接種したところ,約1週後に発赤し,10日後に丘疹を形成した.10~15日後の組織では,表皮の肥厚,有鯨細胞の風船様変化,原形質封入体の出現,豚固有の痘癒に特徴的といわれる核内空胞の出現力泪立った.16日後には,発痘部は肉眼的に褐色調を帯び,19日後の組織では,痴皮および潰瘍形成を見,表皮は消失していたが,一部にはすでに再生も認められた.25日後には,痴皮は脱落し始め,組織では,表皮の再生が認められたが,不完全で,真皮には浮腫とともに組織球性反応,好演球の出現があった.細胞内封入体は,Hematoxy11n-Eosin染色に著しい掖好性を呈する円形・均質性封入体と,弱掖好性で,原形質との境界やや不明瞭な,不規則な辺縁を持つ不整形封入体とに分けられた.前者はGiemsa染色で青色,Azan染色で淡青色,PAS陽性で紅色を呈した.後者はGicmsa染色で淡青または不染,Azan染色で橙色,PAS陰性を呈した.さらに後者には,Fculgcn反応陰性か,わずかに淡青をなしていると思われるものもあった.電子顕微鏡的には,10~15日後の有鯨細胞内に,多数のウィルス粒子が認められるとともに,豚におけるワクシニア痘との鑑別に強調されている層板状構造物が認められた.光学顕微鏡で見られた核内空胞は,電子密度の低い微細な線維状構造物 で置換されていた.実験例における発痘部皮膚乳剤は,さらに別の子豚に痘癒病変を起こした.上記の自然例および実験例の皮膚乳剤は,家兎およびマウスには発痘を来たさなかった.以上の成績より,本例は,豚固有の痘瘉ウィルスによって起こったものと思われる.
  • 板垣 啓三郎, 坪倉 操
    1968 年 30 巻 2 号 p. 73-80_1
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    It has been reported that Plasmodium isolated from fowls in Japan is less virulence.The authors have found exoerytlarocytic forms in chickens inoculated with a strain ofPlasmodium (P. juxtanucleare) isolated from a chicken.The present paper deals with examination made on the pathogenicity of this strain.1. Infected chickens showed a high fatality rate (66.7%). They died sporadicaFlyduring a period from 14 to 141 days after inoculation. The rnajority of deaths occurredwithin one month after inoculation. Many exoerythrocytic forms were detected fromdead birds. The inoculated chickens presented anemia, depression, or anorexia on the10th day and greenish droppiuags on the 15th day after inoculation, when the red bloodcell count ranged from 2 to 9 X 105.Half the number of experimental chickens died from inoculation with splenic emul-sion. The blood virulent was not infective after it had been filtered through Seitz fitterpads.2. When chickens 21, 34, and 70 da)s old were inoculated with virulent blood, asmall number of them died, but adults showed only slight anemia and suspended eggproduction.3. Preliminary experiments made it clear that sulfadimethoxine inhibited bothendoerythrocytic and exoerythrocytic forms. Pathogenicity was compared between theendoerythrocytic and exoerythrocytic forms in chickens administered with suITadi-methoxine at a concentration of 0.I% with a diet. The medication was continued for 5days from 6 to 10 days and 12 to 16 days after inoculation in order to inhibit growth ofthe endoerythrocytic and exoerythrocytic forms, respectively.In consequence, the fatality of chickens medicated for exoerythrocytic forms (l5.3%)was lower than that for endoerythrocytic forms (4O.O%). It is suggested that those formsmay have a higher pathogenicity than these forms.4. Microscopic examination revealed that all cases suffered from anemia, enlargedspleen, and hemosiderosis of liver and spleen, and that many cases had hemorrhagictpetechiae in the subcutaneous tissue, muscle, thymus, and myocard. Microscopic cha
  • 大越 伸, 薄井 万平
    1968 年 30 巻 2 号 p. 81-91_2
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らは第III報において, Toxascarisleoninaの犬系,猫系,ライオン系,トラ系およびチータ系の成虫と虫卵の計測値をそれぞれ比較して,これらの間に差が存在することを指摘した.本編では,同じくこれら5系のT.leoninaの虫卵を,犬および猫へ人工感染を実施した.その要約は,次の通りである.1.犬系虫卵を犬に人工感染させた場合は,感染率89.2%,prcpatcntperiod48~77日で感染が成立した.このうちで,成犬への感染率は72.7%を示したが,Toxocaracanisが成犬にはほとんど感染しないことと比較すれば,著しい相違であった.なお,感染犬を駆虫した後に行なった再感染実験においては,感染率40%, prepatentpcriod62~63日であった.次に,妊娠中の雌犬5頭に犬系虫卵を投与して,その産仔計26頭を検査した結果,胎盤感染は全く否定された.2.犬系虫卵を猫に投与した場合は,感染が全く成立しなかった.このことは過去の日本において,犬のT.leonina自然感染が多数存在したのにもかかわらず,猫の自然感染が,I965年Hawaii輸入猫に発見されるまで全く認められなかった事実と符合する.次に,犬系虫卵をparatcnichostとしてのマウスを経由して猫に投与した場合には,5例中2例に感染を認めたが,早期に自然排虫する傾向が認められた.従って大系のT.leoninaに対しては,猫は好適宿主ではないと認められた.3.猫系虫卵によっては,犬猫両者に容易に人工感染が成立し,犬ではprepatentperiodは50日,猫では62~63日であった.4.ライオン系虫卵を犬および猫へ,またトラ系,チータ系の虫卵を猫に人工慝染した結果,いずれの場合にも感染が成立した.しかしながら,猫への感染性は低い傾向が認められた.5.犬系T.leoninaの犬体内諸臓器における仔虫の分布と発育状況,および猫系T.leoninaの猫体内におけるそれらを検討した結果,双方ともtrachcalmigrationの経路をとらず,腸壁および腸内腔への出入により発育する,いわゆるabdominalmigrationを行なうことを確認した.以上の感染実験の成績を総括して考察すれば,猫は猫系以外の各系のT.leoninaに対して感受性が低く,正常の宿主と認め難い.特に犬系虫卵は,猫への感染性がなく,特異性を有することを認めた.次に,犬は仔犬,成犬の別なく,各系のT.leoninaに感受性を示した.
  • 大越 伸, 長谷川 篤彦
    1968 年 30 巻 2 号 p. 93-96_1
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    昭和41年8年から42年7月までの1カ年間に青森,岩手,山形,栃木,東京および佐賀の各都県に認められた牛の伝染性皮膚疾患について検討した.患畜の皮膚病変部は,全身の各部位,特に頭部および頚部に存在し,病変では,脱毛と厚い痴皮の形成が著明であった.KOHによる直接鏡検において,病変部から採取した被毛の周囲には,5.0~7.5μの胞子が多数石垣状に付着しているのを認めた.このような可検材料を,抗生物質およびチアミン添加のサブローぶどう糖培地に接種し,37°Cで培養した.その結果,発育の遅い,隆起した,滑らかな蝋様光沢がある集落の発育を認めた.これらの集落から菌塊を取って鏡検したところ,菌糸および多数の厚膜胞子を認めた.本分離菌は,チアミンおよびイノシトールの添加培地上で,発育が旺盛であった.動物感染試験では,本分離菌はモルモットに対して病原性を示した.以上のことから,本分離真菌をTrichoPhytonverrucosumBODIN,1902と同定し,わが国各地に発生を見た牛の皮膚疾患を,本菌によるring一wormと診断した.また本菌感染牛の病変部から採取して,1年以上経過した材料を培養したところ,同じく T.verrucosumを分離することができた.さらに本菌の土壌培養を行ない,土壌において本菌が生存し,また発育する可能性を確認した.
  • 大越 伸, 村田 義彦
    1968 年 30 巻 2 号 p. 97-107_1
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    A..tubaeformeとA.caninum両種鉤虫の.感染仔虫を,非固有宿主であるマウスと鶏に人工感染させた後,宿主体内における仔虫の移行態度と発育状況を究明した2その結果,次のような所見を得た.I.両種鉤虫の感染仔虫をマウスに経口感染させた場合には,両種とも,多数の仔虫がマウス体内の各臓器に移行した.仔虫が長期間停留していた臓器の名称は,A.tubaeformeでは肺,脳,消化管であり,A.ca一ninumでは筋肉,脳であった.2.両種鉤虫の感染仔虫を鶏に経口感染させた場合は,両種とも,鶏体内の臓器に移行する仔虫数は少なく,A.tubaeformeの場合には,短期間にすべての仔虫が消失した.しかしA.caninumでは,若干の仔虫が筋肉内に生存することを認めた.3.両種鉤虫の感染仔虫をマウスに経皮感染させた場合は,A.tubaeformeでは,仔虫が筋肉からほとんど消失し,大部分の仔虫が肺または消化管に移行していた. これに反して,A.caninulnの場合では,ほとんどすべての仔虫が筋肉内に長期間停留したままであった.4.経口的に人工感染させた鶏の筋肉内から採取したA.caninufnの第3期仔虫を,マウスに二次感染させた.その結果,マウスに感染仔虫を一次感染させた場合と同じ感染所見を得た.5.両種鉤虫を非固有宿主のマウス,鶏に感染させた後,宿主体内の各臓器から検出した仔虫は,ほとんど発育していなかった.ただ,A,tubaefor7neの場合,マウスの消化管から検出された仔虫では,尾部の部分のみが若干進化していた.
  • 角田 清, 今井 重之, 堤 可厚, 井上 進一
    1968 年 30 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 1968/04/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    家兎コクシジウム病に対しては有効な薬剤が少なく,サルファ剤など二,三の薬剤の報告をみるにすぎない.特にサルファ剤の多くは,コクシジウム原虫を殺滅するほどの量を与えると,家兎が中毒を起こすため,安全な投薬は期待できなかった.一方,これらの薬剤は,すべての種類の家兎コクシジウムに対し,一様に有効とはいえなかった.今回使用したSMおよびSDは,実験感染試験ではともに50~150mg/kg,1日1回投薬,3~7日間連用で有効であった.そこで自然感染例についての効果を確かめてみた.SM,SDともに75mg/kgをえらび, 3~7日間の連用を実施した.その結果,SDはSMよりもすぐれた効果を示し,SDは7日間投与でオーシストの激減がみられ,2週間後の0.P.G.値は全例陰性となり,浮遊法(蔗糖液)でも,最高40%の家兎が陰転した.3週後の検査で,ふたたびO.P.G.が陽転したものがあったが,これらのコクシジウムを種類別に検査すると,陽粘膜上皮細胞内寄生性の,病原性の弱い種類が大部分で,投薬前と後では,コクシジウムの寄生状態は異なっていた.特にSD投与群では,病原性の強いE.stiedai,やE.7nagnaの減少または消失が明瞭であった。SD,SDともに投薬群には死亡はなかったが,対照の2群では,それぞれ20%ずつのコクシジウム症死亡家兎がみられた.3日間投薬では,副作用はみられなかったが,7日間投薬では,SM投与群にのみ副作用とみられる軟便の排泄が4頭にみとめられた.
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