日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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42 巻, 4 号
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  • 小久江 栄一, 榑林 陽一
    1980 年 42 巻 4 号 p. 395-399
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    絶食ラットにグルコース溶液を5日間与えると100%の発生率で前胃部に潰瘍病変が生じた. この発生率は水を与えた群に見られたものに比して有意に高かった. 発生率の差は前群における多量の飲水にともなう胃液分泌の亢進がその原因と考えられた. すなわち絶食ラットの飲水量をグルコース溶液と水で比較すると前者がはるかに多量であり, その結果胃の拡張が生じ多量の胃酸とペプシンが前胃部を侵襲し高率の発生がおこると考えられた. この発生の因果関係はブタの胃食道部潰瘍のそれと同質のものと推察された. 本病変に対するペプスタチン, 重炭酸ソーダ, カルボキシメチルセルローズ, ポリアクリル酸ソーダ, アルギン酸ソーダの予防効果を試験した. その結果, 抗ペプシン薬のペプスタチン, 増粘剤のポリアクリル酸ソーダ, 増粘剤で"むねやけ"の一般治療薬として使用されているアルギン酸ソーダが有効な予防薬であると判定された. 我々は現在これら3つの物質について, 養豚場における自然発生のブタの胃潰瘍, また実験的に作製したそれに対する予防効果を試験中である.
  • 藤田 正一郎, 小久江 栄一, 榑林 陽一, 吐山 豊秋
    1980 年 42 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ブタのハイデンハイン小胃からの分泌胃液中の成分のテトラガストリン(TG)による変化をイヌと比較しながら観察した. 水素イオン濃度は分泌量と強い正の相関を示した. カルバミルコリンやベタゾルによる刺激でも同じ結果が得られた. Na+, Ca++イオン濃度は分泌量が多くなると減少し, K+, Cl-イオン濃度は分泌量が多くなると増加したが, いずれも水素イオン濃度や分泌量と強く相関した. Mg++イオン濃度はTG刺激によって一過性に上昇した. この反応は他の刺激薬によっても観察されたし, イヌでも観察された. ペプシン濃度は薬物刺激によりー過性に上昇の後減少し, その後分泌速度が次第に減少するにつれて再び上昇の傾向を示した. ブタにおける胃液成分の分泌動態は大略イヌにおけるそれに類似する.
  • 浅木 正義, 石黒 直隆, 岡 千晶, 佐藤 儀平, 寺門 誠致
    1980 年 42 巻 4 号 p. 407-415
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鳩, 豚, 牛から分離したクエン酸陽性大腸菌由来のクエン酸利用性状について, 安定性および伝達試験により遣伝学的に検索を行った. クエン酸陽性大腸菌のクエン酸利用性状は, 25℃および37℃に比べ, 43℃で不安定であり培養の継代数を追うごとに脱落の傾向を示した. しかし豚および牛由来株においてクエン酸の安定なクローン(A)と不安定なクローン(B)がそれぞれ別個に得られ, それらのクローンの安定性性状および伝達性状を検索した. クエン酸利用能と楽剤耐性は, 37℃に比べ25℃で良好に大腸菌K-12株に伝達された. また, クエン酸利用のみを保有する伝達株も得られた. また, クエン酸利用性状は, 大腸菌ばかりでなく, Shigella sonnei, Shigella flexneri, Salmonella typhi, Salmonella abortusequiおよびSalmonella pullorummに薬剤耐性と共に25℃で伝達された.
  • 与那嶺 久雄, 小儀 昇, 石川 俊, 一木 彦三
    1980 年 42 巻 4 号 p. 417-425
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    自家繁殖した健康なビーグルのべ222頭(雄108, 雌114)を用い, 1日齢から14力月齢まで, 定期的にX線撮影を行い, 前肢の骨の成長を観察した. 骨成長の評価のため, 大和田, Stowの骨年齢評価基準に基づき, 骨幹核, 骨端核の出現, 各骨の特微的形状形成の過程, 骨端の骨幹への融合, 骨端線の閉鎖などについて観察した. また骨の長さおよび体重の増加をも併せ測定した. 手根骨を除く他の骨の骨幹核はすべて1日齢に出現しており, 手根骨の骨核は2力月齢までにすべて出現した. 骨端核の出現は骨によって異なり, 上腕骨頭が1週齢で最も早く, 肩甲骨頭側遠位端, 尺骨遠位端が2力月齢で最も遅かった. 骨端線の閉鎖は, 肩甲骨頭側遠位端が6力月齢で最も早く, 上腕骨頭が14力月齢で最も遅かった. 骨端核の出現は骨により遅速が認められたが, いずれの骨も5力月齢までには, それぞれ固有な形態をとるに至った. 長さは5力月齢まで急速に増加し, その後は緩徐となり, 10力月齢以降はほとんど増加しなかった. 各骨がそれぞれに固有な形態を形成するに至る経過と, 大きさが急速に増加する経過はよく一致した. また骨端線の閉鎖は, 上腕骨頭が最も遅かったが, 主な長骨では大部分が10~12力月齢で, 14力月齢にはすべて成熟骨に達した.
  • 石原 勝也, 大谷 健, 北川 均, 小沼 操
    1980 年 42 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    血清学的ならびに血液学的に群別された165頭の黒毛和種と9例の成牛型白血病牛について, 血清免疫グロブリン濃度を測定した. その結果, BLV血清抗体陰陽両群および血液学的に陰性, 疑陽性および陽性の各群において, 免疫グロブリン濃度は有意差がなかった. 一方, 血清IgM濃度は, 血液学的な陽性群でその他の群より低下傾向があり, さらに, 白血病群では有意な低下が観察された(p<0.01). 陽転後の経過月数をもとに分類された陽転牛3群(0~3ケ月, 3~7ケ月および7~12ケ月)の血清IgGCおよびIgM濃度は, 陽転前のそれらに比べて有意差がなかった. しかし, 山地放牧中に抗体が陽転した群の陰性時における血清IgGおよびIgM濃度は, 3ないし4回の血清学的検査で判定された持続的陰性群のそれらより, 有意に低値であった(p<0.01).
  • 江島 博康, 黒川 和雄, 池本 卯典
    1980 年 42 巻 4 号 p. 435-441
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本におけるイヌ血液型判定用抗体の標準化を目的として, Bullらより入手した抗DEA抗体8種ならびに著者らにより作製分類された抗体16種, 計24種類について比較同定試験を行った. その結果, 抗D1および抗Eは抗DEA-3と同一型特異性を有し, 抗Aは抗DEA-5と, 抗180aは抗DEA-8と同一型特異性を示した. また, 抗Mは抗DEA-5と共通な抗体を含有していた. 著者らの作製分類した抗体の中で抗DEA-1・1, 2, -1・1, -4, -6, -7と同一型特異性を示す抗体は認められなかった. また, 抗D2, B, C, F, G, L (H, I, 43), 44および2aはいずれの抗DEA抗体とも符合しながった.
  • 志賀 瓏郎, 浜本 修一, 篠崎 謙一
    1980 年 42 巻 4 号 p. 443-451
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    反芻動物のMg低血症に関する研究の一環として, 飼料のMg, Ca組成と泌乳が被毛中MgとCa組成に及ぼす影響を調べた. 実験には2頭の泌乳羊(L)と2頭の非泌乳羊(NL)を用い, 通常飼料(C期), 低Mg・低Ca飼料(E-I期), 青刈牧草(E-II期)を切りかえ給与して羊毛産生量, 羊毛中蛋白(ケラチン)含量, 羊毛および血清中MgとCa量を測定し, それらの相互関係を検討した. 1)血清Mg濃度は, E-I期にはC期, E-II期に比べ全例で有意に低く, Lの2頭は低Mg血症を示した. Lの血清Mg濃度は, NLのそれに比べ常に低かった. 血清Ca濃度は, E-I期にLの1頭で低下が認められたが, 全般を通じて上昇傾向を示した. 2)羊毛生産量は, 実験期を通じ有意の変化はなかった. 羊毛の蛋白含量は, E-I期にはC期に比べ4頭中3頭が, E-II期に比べ全例が少なく, 羊毛生産量に対する蛋白含量の割合は, E-I期にはC期, E-II期に比べ全例で低かった. 3)羊毛のMg含量は, E-I期にはC期に比べ4頭中3頭で少なく, 羊毛のCa含量は, D-I期にはC期, E-II期に比べ全例で少なかった. 羊毛中MgとCaの含有率は, E-I期にはC期, E-II期に比べ全例で低下した. 羊毛中MgとCa含量の間には, 常に一定の関係が認められた. 以上の結果から, Mg, Ca欠乏飼料の給与は, 羊毛中Mg, Ca含量と蛋白生産量の減少を誇発する可能性が強いと考えられた. また, 泌乳羊の羊毛中Ca/Mg比は, 血中Ca/Mg比を反映し, 非泌乳羊のそれに比べ高いことが示唆された. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本実験に終始御協力を頂いた岩手大学農学部獣医学科家畜生理学教室 長岡彦光氏(現長野県庁), 岩崎 隆氏(現岩手県庁), 大浪幸子氏, 佐藤孝男氏(現栃木県庁)ならびに白岩利恵子氏(現岩手県庁)に深謝する. また, 本実験に関し, 有益な御助言を頂いた同教室 菅原 伯教授に深謝する.
  • 奈良間 功, 矢鍋 誠, 鶴田 真章, 小野 威
    1980 年 42 巻 4 号 p. 453-455,457
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サルのHepatocystis感染はこれまで多く報告されているが, 本寄生虫感染は一般に少数の肝メロチスト病巣だけを結果し, 致死的ではないとされている. 本症例は肝臓が肉眼的にモザイク状を呈する程多数の病果を持ち, かつその大部分が破裂メロチストとそれに随伴する壊死性病変であった. 肝臓実質の壊死は極めて広範で, 動物の死因として大きな役割を果たしたと考えられた.
  • 中尾 敏彦, 河田 啓一郎, 沼田 芳明
    1980 年 42 巻 4 号 p. 459-462
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    乳牛卵胞嚢腫に対する黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)類縁化合物(TAP-031) 200μgと500μgおよび妊婦尿性性腺刺激ホルモン(HCG) 10,000MUの治療効果比較試験を行った. 初回治療後90日以内に受胎したものを有効例とした場合の有効率は, TAP-031, 200μg筋肉注射群で30.2%(16/53), 500μg筋肉注射群で19.0%(11/58), HCG 10,000MU筋肉注射群で22.4%(11/49)であった. この成績から, TAP-031, 200μgの投与により, 従来のHCG 10,000MUとほぼ同等の治療効果が得られることがわかった.
  • 佐藤 博, 今村 照久
    1980 年 42 巻 4 号 p. 463-464
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種の新生子牛12頭について, 出生時から2時間後まで15分毎に, さらに翌日(17~28時間後)と1週間(6~8日)後に採血して血漿のCa, Mg, Pi濃度を調べた. 出生時にはCa濃度が著しく高く, これは胎仔期の高Ca血の反映と考えられた. その後Ca濃度は低下して翌日には成牛のレベルに達していた. Pi濃度も出生時に高く, その後徐々に低下した. またMg濃度も同様の傾向にあったが, 成牛のレベルに等しく, 生後変化は小さかった.
  • 佐々木 啓, 鈴木 直義
    1980 年 42 巻 4 号 p. 465-468
    発行日: 1980/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    臨床的に, 中枢性尿崩症と診断され, 慢性経過をだどった, 14歳齢と15歳齢のプードル犬の下垂体後葉を, 電子顕微鏡により検索した. 神経終末における神経分泌顆粒の著明な減少, 小型化(500~2,000Å), 神経微細管の著しい増加などが共通の変化として認められた. 血管周囲腔内に, 繊細な膠原線維が増生することにより, 腔が拡大し, 神経終末と, 血管腔との間に著しい隔りをもつものが1例認められた.
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