レプトスピラの集落形成を確実にする目的で, わづかに嫌気的な状態で培養をこころみた. その結果, 好気性培養では集落を形成しない菌株でも集落を形成するようになり, また好気性に発育する菌株でも, このように培養する方がより明瞭な集落をつくることを認めた. 至適嫌気度は菌株によって異るから, それぞれの菌株に適した大気の状態を与えることが, レプトスピラの集落形成に必要な条件であると考えられる. 同じ菌型に属する菌株でも, 至適嫌気度は必ずしも同じくない. しかしある程度の共通性が認められる場合もある. たとえばL.autumnalisに属する菌株は, 1乃至5%のCO
2分圧下で最もよく集落を形成する. また, L.icterohaemorrhagiaeに属する菌株は, 3%以上のCO
2分圧下では集落形成を抑制され, 密閉したシヤーレの中か, または1% CO
2分圧下が集落形成に最も適しているように認められた. 集落の形は, 多くの菌株では円形または概ね円形であるが, モザイク状, または極めて小型のものも認められた. これらの形はそれぞれの菌株に特異的と考えられる. また同じ菌株でも, 大気の状態が異ると集落形に差が生ずることが観察された. 一般に, 好気的な状態では集落は大型に且つ淡く, わづかに嫌気的な状態では, CO
2濃度の増すにつれて小さく且つ濃くなる傾向がある. レプトピラの集落は特徴ある位置に形成される. すなわち, レプトスピラは寒天培地の表面に植えられるにもかかわらず, 常に培地の内部に向って半球形に集落をつくり, 培地面より上には決して集落をつくらない. 好気性, 嫌気性の別, あるいは培地中に含まれる寒天の濃度の如何にかかわらず, 集落の形成は常にこの位置でおこなわれる. このことはレプトスピラ属の特微のひとつと考えられる. 深部培養ではふつう球形の集落がつくられる. 以上のような成績を得たので, わづかに嫌気的な状態で培養することは, レプトスピラの集落形成にもっとも必要な条件のひとつと考えられる.
抄録全体を表示