健康牛や病牛から分離されるCorynebacteriumγenaleの型や分布を明らかにすることは,本菌のccologyや腎孟腎炎の疫学を知る上に必要である.著者らは,北海道を中心に,青森,栃木,兵庫各県のホルスタイン牛(雌)の尿561例,腟垢600例を集めて,本菌の検出を行ない,得られた菌株と,わが国で病牛から分離され,保存されていた菌株とについて,型別を行なった.(1)健康牛からの本菌検出率を地域別にみると,北海道では,他の3県のいずれよりも,はるかに高かった.(2)健康牛からの本菌のタイプ別の検出率をみると,I型は病牛のあった牧場の牛からのみ検出され,尿から17.4%,腟から21.7%となっている.これに反し,工I型は,本病の発生があった牧場の牛からも,発生がなかった牧場の牛からも分離され,その率は尿から3.8~7.2%,腟からは0.7~4.9%であった.III型は,健康牛からは全く分離されなかった.(3)I型と工I型が混在している尿材料が,たまたま認められたので,病牛2例と健康牛1例の尿から得た多くのコロニーのうち,それぞれ10または20個について型別した.病牛2例の各10個のコロニーは,いずれもI型で,健康牛由来の20個のコロニーは,すべて11型であった.(4)健康牛の尿や腟から分離されるC.renaleの菌数は, 一般に多くはなく,尿0.lml中,ほとんど100個以下であった.(5)病牛からは,I,11およびI11型ともに分離されている.このうちI型に属する株が最も多く,III型がこれにつぎ,11型は最も少なかった.また11工型は,病牛のみから分離された.
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