卵巣静止のホルスタイン種未経産牛20頭を4群に区分し, PMSGをI群6頭に500IU, II群6頭に1,000IU, III群5頭に2,000IU, IV群3頭に4,000IU, それぞれ筋肉内に1回注射した. 処置後, 卵巣の変化を調べると共に, 5頭について末梢血液中のEstradlol-17β(E
2)とProgesterone(P)の消長を調べた. 処置後E
2値は急激に増加し, 2日にピーク(11~15pg/ml)を示した. 排卵が処置後2~4日に, I群の2頭を除く18頭(90%)で誘起された. 排卵後に形成された黄体は, 形成不全で寿命の短いもの, 発育良好で寿命の短いもの, 及び発育, 寿命とともに正常なものの3型がみられ, それぞれ血中P値の増加を伴った. 黄体の退行に従って, 6頭(30%)で誘起排卵後8~22日に処置後2回目の排卵が起り, 卵巣は正常に活動し始めた. なお, II群の一部とIII, IV群のほとんどすべてにおいて, 処置後多数の卵胞が発育し, これと共に血中E
2値も増加して7日に高いピークを示した. これらの成績から, PMSGは卵巣静止の牛において卵胞の発育, 成熟を促してEstrogen (E)を活発に分泌させ, 排卵を誘起することが示された. また, 増加したEが排卵性LH放出を惹起することにより排卵が起こるものと推察された.
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