著者らは,カルシウムイオン(Ca++)負荷が生体に及ぼす影響を観察するため,今回,健康および実験的肝障害家兎に,Ca++の静詠内負荷試験を試みた.そして,血清Ca,無機燐,コレステロール,蛋白および血液像の動態を観察するとともに,肝,腎,牌,膵,甲状腺など,各種臓器の組織学的検索を行なった.標準食給与家兎および犬に,Ca+1の静脈内負荷を試みたところ,生体が健康な場合,血清透析性Ca(SIC)の増加は,一過性にすぎず,負荷後30分から2時間に最高値を示し,以後急速に減少し,負荷前の値に復する傾向を認めた.CCl4障害家兎(0.1ml/kg,隔日3回背部皮下注射)を用いて,第1回CC14注射後5週目から,CaC12,Calcicol,Ca溶液(それぞれCa++0.0144,0.0005,0.15mg/kgを含む)を,8日間静脈内注射を行ない,Ca++負荷群および非負荷群の動態について比較した.その結果,CC14注射後9週目において,各負荷群では,投与Ca+1量に差があるにもかかわらず,いずれもSICがわずかに増加する傾向を示す以外は,血液一般性状および病理組織学的所見に,明らかな差異は認められなかった.本実験においては,Ca+1負荷群8例のうち1例が,7.5週目に斃死したのに対して,非負荷群6例のうち5例は,7~8.5週目に死の転帰2取った.ついで,きわめて軽度なCC14障害家兎(0.01ml/kg,隔日3回背部皮下注射)に,高濃度および低濃度Ca++,それぞれの群にCa++75mgおよび0.75mg/dl液を0.2ml/kg,の静脈内負荷を第1回CC14注射後2週目から1週間試みた.Ca++負荷群は,両群ともに負荷後,総Ca,SIC,赤血球数,血色素濃度,アルブミンおよびA/G比の一過性増加′と血清無機燐の減少を認めた.一方,内臓諸臓器の組織学的検索では,Ca++非負荷群に比較して,著明な差はなかったが,一般に,肝障害は軽度であり,甲状腺および骨髄に機能冗進の像を観察した.
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