白色レグホーン種の雄雛および成鶏おいて, P
32を0.5~10μc/g腹腔内に注射し, 精巣に及ぼす影響を組織学的・細胞学的に観察して, 次のような結果を得た. 1) 雛においては, 本実験の範囲内では, 精巣の発育遅延をきたすが, 精細胞に対する破壊作用は認められなかった. 2) 成鶏においては, 5μc/g投与は致死的で, 精巣は明らかに萎縮した. 精細管の口径は退縮し, 精上皮の細胞配列は不規則で, 細胞の境界は不明瞭となった. 精子も, 精子細胞もほとんど消失し, 管腔は変性した細胞で充満していた. しかし精細胞の空胞変性像はほとんど認められず, 核溶解, 核濃縮様変化が比較的冬く観察され, 分裂像は少なかった. 3) 成鶏に0.6μc/gを投与して30日後に観察すると, 精細管は萎縮し, 大部分は, 精祖細胞およびセルトリー細胞からなる単層の上皮を有していたが,一部の精細管では, 第II精母細胞の分裂像も認められ, 上皮は数層ないし十数層をなし,回復しつつありと考えられる像があった. 4) 成鶏に0.5μc/gを投与すると, 10日後に精子は消失し, 精上皮は破壊されて単層となり, 管腔内に細胞破砕物が存在し, 精祖細胞の分裂はまれであった. 投与20日後には, 残存精祖細胞に分裂像が認められた. 5) 成鶏では, 0.5μc/g投与後1~1.5ヵ月ごろまで, 精巣に, 環状, 馬蹄型, 染色体橋, 染色体の遅滞, 分断増数などの染色体異常が認められたが, 時間の経過とともに減少した. そのほか核濃縮, 投与後2ヵ月までの精果では, 巨大細胞, 1ヵ月ぐらいまでは精細胞の空胞化がみられた. 空胞化は2ヵ月以後にはまれであった. 6) 投与4ヵ月後には, 精細管上皮はほぼ正常に近く回復した. 1例において, 精子形成の盛んな精細管にまじって, 上皮がセルトリー様細胞のみからなり, 内腔に多数の精子を有する精細管が存在した. 本研究の一部は文部省科学(総合)研究費の補助によった. 記して謝意を表する,
抄録全体を表示