日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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46 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 今川 弘, 和田 隆一, 平沢 澄, 秋山 綽, 小田 隆範
    1984 年 46 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    下痢の状態により4群に分類した40例の糞便についてロタウイルスの検索を試みた。急性下痢を呈していた子馬の糞便14例中5例に電子顕微鏡によりロタウイルスが検出された。さらに, MA-104細胞とトリプシンを用いて,その5例中4例からロタウイルスが分離され,培養細胞継代が可能であった。一方,非急性の下痢を呈する26例の子馬の糞便からはロタウイルスは検出されなかった。4株の分離ウイルスは交差中和試験では同じ血清型に属したが, ウマロタウイルスBI株とはわずかながら抗原的な差がみられ, ウシロタウイルスLincoln株とは明らかに抗原性が異なっていた。これらの結果から, ウマロタウイルスは子馬の急性下痢症と密接な関係にあることが示唆された。さらに,野外のウマロタウイルスはMA-104細胞とトプシンを用いることによって分離できることが確かめられた。
  • 佐々木 耕治
    1984 年 46 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    24頭のビーグル犬の外側伏在静脈に実験的に血栓を作製し, その血栓の溶解過程を走査電子顕微鏡とアンギオグラフラフィーによって観察した。血栓は形成30分後に明瞭なフィブリンの網状構造を呈したが, 経時的に退縮し, 24時間後にはほとんど溶解し, また, 血管内皮細胞には著しい変化は認められなかった。一方, アンギオグラムの観察では, 電顕による観察と同様に, 血栓形成24時間後に血栓部位の血流の再開通のあることが認められた。血栓形成から溶解の過程では, FDPが産生され, 24時間後には著しく増加し, また, 血漿中プラスミンの増加傾向, およびAPTTの延長傾向が認められたが, TT, PT, PTT, Fg, TEG, ELTには変化はなかった。このように, 本実験的血栓症は急性の転帰をとり, 全身的な凝固線溶異常を伴うものではなかった。
  • 澤田 章, 久米 勝巳, 中井 豊次
    1984 年 46 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Haemophilus Paragallinarum 血清型1菌株の各変異型菌を処理して得られた変性細菌細胞のニワトリ, ヒトO型, ウサギの各新鮮血球ならびにグルタルアルデヒド固定血球に対する凝集性を調べたところ, 赤血球凝集性および生物学的性状の異なる3種の凝集素 (HA-L, HA-HL, 及びHA-HS) が認められた。すなわち, 易熱性, トリプシン感受性のHA-Lは供試全血球を凝集したが, トリプシン耐性で易熱性のHA-HLまたは耐熱性のHA-HSは新鮮成鶏血球および新鮮ウサギ血球を凝集し, 他の血球は凝集しなかった。莢膜保有変異型菌の未処理細胞は全血球に対する凝集性を欠いたが, ヒアルロニダーゼで莢膜を除去するとHA-L抗原が発現し, すべての赤血球を凝集した。HA-L抗原をさらにトリプシンまたは121℃で2時間加熱するとHA-HLまたはHA-HSが発現することから, HA-L抗原は莢膜下の菌体最表層に存在する抗原と考えられた。赤血球凝集反応で電顕により変性細菌細胞外膜が赤血球表面に直接附着する像が認められたことから, 本菌のもつ3種の赤血球凝集素はいずれも細菌細胞外膜位にあると考えられた。
  • 佐伯 隆清, Hurst G.J.
    1984 年 46 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    実験的に作出した低Mg血症牛について, Mayerらの開発した方法を用い, 麻酔下で上皮小体静脈にカニューレを挿入し, 微量のPTH分泌変化を調べた。低Mg血症牛では, PTH分泌率(ng/kg-BW/min)は, 正常Ca域では対照牛のほぼ2倍の高値を示したが, 血中Ca値が低下すると対照との差は認められなかった。Mg溶液投与により血中Mg値が上昇してもPTH分泌の有意な変化は見られなかったが, 高Mg血状態では, PTH分泌の低下が観察された。これらのことから, 低Mg 血症時にも牛の上皮小体の反応性はほぼ正常に維持され, また, MgによるPTH分泌の抑制作用の低下(解除)が強く示唆された。
  • 芹川 忠夫, 近藤 靖, 高田 博, 山田 淳三
    1984 年 46 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    3×108個の Brucella canis 生菌を経口接種された1匹の雄大は16週で精子の曲尾を, 18週からそのイヌがと殺された27週まで頭部対頭部型の自己精子凝集を示した。血清の精子凝集活性は24週で最高力価をもって14週以降常に検出された。血清のIgM抗精子抗体は明確には検出されなかったが, 血清のIgGとIgA抗精子抗体は, それぞれ12週と20週以後から現れ始めた。このIgGのF(ab')2 フラグメントは精子を頭部対頭部型で凝集し, 精子と精子細胞のアクロソーム上に結合した。精巣上体管, 精液および尿中の自己凝集した精子のアクローム上にIgA抗体が検出された。
  • 久米 勝己, 澤田 章
    1984 年 46 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ヘモフィルス・パラガリナラム血清型1 (血清型HA-1) 菌株から作出した7種の変異株の免疫学的性状を調べた. 易熱性, トリプシン感受性, ヒアルロニダーゼ耐性のL1 (凝集原)ならびにHA-L1 (赤血球凝集素) と名づけた2種の抗原はひなにおける防御とよく相関した。すなわち, 防御はL1とHA-L1抗原を有する4種の変異株で認められ, 免疫ひなは両抗原に対する抗体を保有した。一方, 防御は両抗原を欠く3種の変異株では認められなかった。天膜を保有するhi変異株はヒアルロニダーゼで処理しても, その免疫原性とL1とHA-L1抗原に対する抗体産生能に影響することなく, hi変異株の病原性を不活化した。各種変異株を用いた本試験で得られた結果は, L1とHA-L1抗原が免疫原性に関与するであろうことを示唆した著者らの従来の仮説を裏付けるものである。
  • 大久保 幸弘, 高島 郁夫, 橋本 信夫, 藤田 勲
    1984 年 46 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本脳炎ウイルスの実験感染豚血清について日本脳炎のIgM, IgG抗体の鑑別測定をELISAにより行い, 2-ME 処理一HI試験によるグロブリンクラスの鑑別成績と比較した。ELISA用の感染マウス脳から作製されたアセトン・エーテル抽出抗原は非特異反応のレペルが低く, 蔗糖アセトン抽出抗原よりすぐれていた。ELISAに用いた抗豚 IgM conjugate (horseradish peroxidase) ならびに抗豚 IgG conjugate はグロブリンクラス特異的で, 豚血清のIgM, IgG抗体が鑑別された。ELISA IgM抗体はウイルス血症終了直後から検出され, 感染初期に最高力価に達してから低下した。ELISA IgG抗体はIgM抗体より遅れて出現して回復期に最高値となり, 長く高力価を維持した。HI抗体価が低く2-ME 処理不能の血清, あるいはIgG抗体価がIgM抗体価より高く2-ME処理法で鑑別不能な血清でも, ELISAではIgM抗体の検出が可能であった。これらの成績から, 豚における日本脳炎の血清診断にELISAがHI試験よりすぐれていることが示された。
  • 河原条 勝己, 市東 恵子, 関沢 泰治
    1984 年 46 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Proteus morganii 1510株の107個 (生菌または死菌) を正常マウスに静脈内接種した場合, 血清オプソニンは接種後2日以降に増加した。しかし, 107個の死菌を接種された Sarcoma-180 (S-180) 担癌マウスでは, 血清オプソニンの増加は, 観察されなかった。血清オプソニンを抗マウスIgG抗体あるいは抗マウスIgM抗体で前処理した場合, オプソニン活性の減少は顕著であった。また, 56℃, 30分間の加熱処理で, 血清オプソニン活性は消失したが, 補体源として担癌マウス血清を添加した場合, 本活性の回復が観察された。一方, 接種後3日以降に産生された血清オプソニンは担癌マウスに対する本菌の感染を有意に防御した。これに対し, 担癌マウスから採取した血清は防御効果を示さなかった。血清オプソニンを抗マウスIgM抗体で処理した場合, 防御効果の有意な減少が観察されたが, 抗マウスIgG 抗体処理の場合, 有意な減少は観察されなかった。以上の成績から, P.morganiiに対する担癌マウスの高感受性は, 菌接種後の抗体 (IgM) 産生の著しい抑制にもとづくと思われた。
  • 大友 勘十郎, 小池 寿男
    1984 年 46 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    骨折の治癒, またその他の化骨現象における骨結晶の析出状態を組織学的に検討した。比較的多量の膠原線維が平行状態で化骨する部位として, 馬の蹄骨の伸腫付着部を選定し, 未脱灰標本の縦断,横断像の超簿切片を作製して観察した。腱側の膠原線維の縦断像で, 明瞭な640~670 Åるの周期が観察され, その中にさらにA1, A2, A3, B, C1, C2, D, E, Fの小周期が区別された。骨の移行部で膝原線維の表面に針状または板状の結晶が観察された。骨側の縦断像では, 多数の針状結晶が認められ, 膠原線維の周期構造と密接な関係があるように見えた。この部分の横断像では, 膠原線維の間隙は完全に骨化した。さらに膠原線維の骨化は表層から内層に向って進むように見えた。骨結晶は膠原線維内で径50~80 Åの空間を形成しながら網目状に侵入しており, 線維内の空間は膠原線維を構成するフィラメントの専有領域と考えられる.
  • 石田 卓夫, 藤岡 登, 藤原 公策
    1984 年 46 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルスMHV-D株の静脈内接種に対する初期反応をC3HマウスとC57BLマウスとの間で比較した。C3Hマウスは接種後12~24時間に脾における著明なウイルス増殖とインターフェロン産生がみられ, 感染に耐過生残した。C57BLマウスでは著明なウイルス増殖はなく, インターフェロン産生はみられず, 接種後5~6日で全例死亡した。C3Hマウスでは, T細胞依存性免疫機能の発現以前に, 脾由来のインターフェロンによる感染初期のウイルス増殖の抑制があると考えられた。
  • 諏佐 信行
    1984 年 46 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    HeLa細胞を用いて, 6価クロム化合物 (重クロム酸カリウム) の細胞毒性に及ぼす各種キレート剤 (DL-ペニシラミン, グルタチオン, L-システイン, BAL, EDTA) 添加の影響を, 処理後の増殖率および細胞のクロム含量から検討した結果, 次の成績を得た。1) 重クロム酸カリウム3.4μM単独処理3日後では, 細胞増殖率が対照例の約15%にとどまった。これに対して, DL-ペニシラミン670.2μMを同時に添加した例では, 対照例と同程度の増殖率を示した。その他のキレート剤との併用処理では, 著明な増殖改善は認められなかった。2) 重クロム酸カリウム3.4μMで前処理 (6,24時間) された細胞の増殖抑制に対して, DL-ペニシラミン添加は効果がなかった。3) 重クロム酸カリウム3.4μM単独処理6時間後の細胞のクロム含量は, 約0.15μg/106cellsを示した. これに対して, DL-ペニシラミン670.2μMを同時に添加した例では0.014μg/106cellsを示し,約70%の減少が認められた。以上の成績から, DL-ペニシラミンは, 細胞のクロム取込みを減少させることによって, 6価クロムの細胞毒性発現を軽減することが明らかとなった。
  • 林 良博, 西田 隆雄, 橋口 勉, 望月 公子
    1984 年 46 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    インドネシア在来豚3系統 (パリ豚, バタック豚, トラジャ豚) アジアとのイノシシ7集団 (日本の本州. 九州. 奄美, 台湾, インドネシアのスマトラとスラウェシ, タイ)の下顎骨10部位を計測し, 主成分分析法によって比較検討した。その結果. 以下の形態学的特性が明らかになった。(1) アジアイノシシ7集団は, 下顎骨の大きさによって大, 中, 小の3群に大別された。またその形によって, 小形イノシシは中. 大型イノシシと区別された。(2) 小耳種型のバタック豚とトラジャ豚は, 主成分図上で同一の位置にあり, しかも小型と中型のイノシシの中間の位置を占めた。一方, 海南島種型のパリ豚は, 他の2系統の在来豚およびイノシシと全く異なった主成分図上の位置を占めた。(3) これらの在来豚およびイノシシの下顎骨の形の差違をきあるのは, 下顎体と下顎枝の比率であり, 家畜化の程度によってその比率が異なると考えられた。
  • 東原 朋子, 見上 彪, 小沼 操, 伊津 入夫, 松田 治男, 岡田 育穂
    1984 年 46 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マレック病リンノく腫由来の6種の細胞 (MDCC-JP1, JP2, HP1, HP2, RP1, MSB1) における主要組織適合抗原(MHA)の発現に関して, 間接膜蛍光抗体法で検索を行なった。これらの細胞では, さまざまのMHAの発現が認められたが, MHA発現の差異は, MSB1細胞由来の4種の亜株および18種のクローン間でも認められ, MSB1細胞が異なるMHAを発現する細胞群の集団からなる可能性が示唆された。さらに, これらの株化細胞のうち数種について, 6ヶ月以上培養を続けた後のMHA発現を調べたところ, 抗原性の変化あるいは低下が認められた。以上の結果から, 試験管内における長期培養によって株化細胞のMHAが変化する可能性が示唆された。
  • 木曽 康郎, 西田 隆雄, 望月 公子
    1984 年 46 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    妊娠10.5日齢のハムスターに1 mg/g body weightのcortisone acetateを1回筋注することにより, 胎仔汗全例に口蓋裂が誘起された。投与胎仔の口蓋堤挙上は対照と比べ約1日遅延したが, 阻止されることはなかった。相対する口蓋堤は,接近・接触することはあっても癒合することはなかった。
  • 成田 實, 播谷 亮, 森脇 正
    1984 年 46 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5日齢の子豚8頭に Aujeszky's病ウイルスを経口投与したところ, 4例の動・静脈とリンパ管に核内封入体を伴った壊死性脈管炎が認められ, 脈管内皮細胞には, ウイルス抗原, ウイルス粒子が証明された。このことから, 内皮細胞で増殖したウイルスが血行を介して全身に伝播することが示唆された。
  • 石井 博, 大木 与志雄
    1984 年 46 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    BLV抗体陰性の仔牛型白血病例由来リンパ系腫瘍細胞をヌードマウスに25代にわたって継代移植し, さらにこの継代株 (BTL-T3) を6ヶ月以上にわたってin vitroで継代培養した細胞株(BTL-C3)の性状について検討した。すべての培養腫瘍細胞に, 間接蛍光抗体法により T-cell marker が証明された。また培養腫瘍細胞に対する抗血清を用いて検討したところ, 組織適合抗原とは関係なく, 正常リンパ球および仔牛型白血病以外の牛白血病例の腫瘍細胞には存在しない腫瘍関連表面抗原 (CBTL-ASA) が検出された。
  • 輿水 馨, 小谷 均, 伊藤 正博, 田代 和治, 増井 光子, 田辺 興記, 川崎 泉, 斎藤 和夫, 平松 廣
    1984 年 46 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1984/02/01
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    動物園で飼育されている各種哺乳類19匹, 爬虫類6匹, 鳥類17匹からマイコプラズマの分離をこころみたところ, ライオンの口腔 (2/2), バリケンの口腔 (1/1) および鼻腔 (1/1), ヨシガモの鼻腔 (1/6), ベンガルハゲワシの口腔 (3/3) および鼻腔 (3/3)から分離された。ライオンから分離された株はネコ由来の M. felis と生化学的性状は一致したが, 発育阻止試験により血清学的に区別された。ベンガルハゲワシから分離された株は鳥類由来の参照株の抗血清と反応しなかった。
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