1955年秋, 兵庫県北部(但馬地方)に飼育されている7,063頭の和牛のうち30頭に血色素尿症がみとめられたので, これらの病牛についてレプトスピラ病の調査を行なった.また1953-55年に, 同地方で, 本病の発生時期および年令別罹病率を観察した. 調査の結果を要約すると, つぎのとおりである. 1. 血色素尿症を示した牛のうち18頭の血清について, 凝集溶菌反応を行なったところ, 13頭が L. autumnalis に, 2頭が L. hebdomadis に, 2頭が L. australis A, および1頭が L. icterohaemorrhagiae に陽性を示した. L. autumnalis に陽性を示した牛2例が斃死したが, その他はいずれも回復した. 回復例では, レプトスピラの型によって症状に軽重の差がみられることはなかった. 2. 上記の18頭の発病牛の尿についてレプトスピラ分離を試みた結果, 6株のレプトスピラが分離された. 3. この6株のレプトスピラを, 交叉凝集溶菌反応, 凝集素吸収試験および PFEIFFER反応によって, 同定したところ, このうち5株は L. autumnalis, 他の1株(木村株)は L. australis A と同定された. 牛からこの型のレプトスピラが分離されたのは, はじめてと考えられる. 兵庫県北部地方の牛血色素尿症の原因として, すでに分離されている L. autumnalis および L. hebdomadis とあわせて, 結局3つの型のレプトスピラが現在までに確認されたことになる. 4. 木村株が発病牛から分離された兵庫県朝来郡和田山町久田和部落で, この牛の発病後約1カ月目に, 41頭の全飼育牛の血清を得て凝集溶菌反応を行なったところ, 凝集溶菌価1:1,000またはそれ以上を示した牛が8頭(19%)みとめられた. これらは L. autumnalis, L. hebdomadis および L. australis A のいづれかひとつに陽性反応を示した. しかし, 発病した牛は木村株が分離された牛だけで, その他の牛では症状をみとめめていない. 5. 1953-55年に兵庫県北部地方でみとめられた牛の血色素尿症は45例で, その大部分が9月または10月に発病した. そして発病は3才以上の成牛に多く, 年令とともに発病率が高くなる傾向がみとめられた.
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