犬の受精卵の着床および妊娠の維持におよぼす prostaglandin F
2α (PGF
2α) 投与の影響について検討した. 実験犬24例にいて, PGF
2α 5-50mgを投与した場合の, 着床および妊娠の維持におよぼす影響は, 開腹手術による子宮の状態, 分娩時期の観察および末梢血中 progesterone 濃度の測定によって行なった. まず, 妊娠初期の 5-17日の8例に, PGF
2α 5-30mgを投与した結果, 全例が着床したが, 20mg以上投与した4例では, 末梢血中 Progesterone 濃度が著明に低下し, 着床後に胚の一部, または全部が死滅した. 妊娠中期の 25-51日の7例に PGF
2α 5-50mgを投与した結果, 51日に20mgを投与した1例が早産した他は, 流産することなく妊娠が維持された. 妊娠末期の 55-58 日の9例にPGF
2α 5-10mgを投与した結果, 1例を除いて, 他の8例では, 投与後, 平均38.1時間, 妊娠55.5-60.0 日に分娩が誘起され, 妊娠期間は短縮した. 以上のように, 犬の妊娠中に PGF
2α を投与しても, 妊娠末期で分娩が早期に誘起される以外は, 特に多量に投与しないかぎり, 著明な影響がないことが認められた. また, 妊娠中に PGF
2α を投与した場合, 分娩後から発情回帰までの日数は, 無処置の場合のそれに比べて約40日短縮することを認めたが, この発情期における繁殖成績には変りがないことが分った.
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