日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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43 巻, 1 号
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  • 石原 勝也, 北川 均, 横山 信治, 大橋 秀一
    1981 年 43 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫性血色素尿症例について血清および赤血球膜におけるfree cholesterol (F Ch)とphospholipid (Pl)の量的変化を研究し, 健康犬および血色素血症と血色素尿を欠く慢性重症のフィラリア症の所見と比較検討した. 重症のフィラリア症グループでは, 健康犬グループに比べ, 血清F Ch濃度と赤血球膜ChおよびPl含量の有意な増加が認められた. 血色素尿症グループでは, 健康犬グループに比べ, 血清のF Ch, Pl濃度およびF Ch/Pl比, 赤血球膜のCh含量およびCh/Pl比が有意に増加していた. また, 重症グループに比べて, 血清F Ch濃度の有意な上昇が認められたが, 赤血球膜のCh/Pl比に有意差はなかった. 血清リポ蛋白分画の所見では, 血色素尿症と健康犬グループで有意差がなかった. しかし, 血色素尿症グループでは, 重症グループより, 血清のα-リポ蛋白濃度およびα/totalβ比が有意に高く, また, totalβ-リポ蛋白濃度が有意に低かった. 血清F Ch濃度と赤血球膜Ch含量, あるいは両者のCh/Pl比の相関は, 健康犬グループおよび全グループでは有意であったが, 血色素尿症グループでは有意でなかった. 重症および血色素尿症グループでは, 健康犬グループに比べ, 赤血球の機械的脆弱性が有意に亢進し, また, 浸透圧脆弱性において, 最小抵抗の低下と最大抵抗の上昇傾向が認められた.
  • 清水 亀平次, 正木 俊一郎, 広瀬 恒夫
    1981 年 43 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    最近6年間で牛結核として法令殺されたうち9頭を検索した結果, nodular thelitis通称乳房皮膚結核が認められた3例を含め, 計6例に鏡検上抗酸菌が検出された. 培養の結果, このうち1例からMycobacterium gordonae様菌が分離されたに過ぎず, いずれも結核菌陰性の所謂無病巣反応牛であった. 牛の乳房皮膚結核に関しては, 1968年本邦における初発2例, また1973年5例が著者らにより報告されている. 今回報告する12例のうち3例は, 結核の定期検診時「ツ」反応陽性で法令殺されたものである. 病巣中には多数の抗酸菌が鏡見されるが, 菌分離は困難で, これまで2例(M. vaccae, M. gordonae様菌各1例)が成功したに過ぎない. 帯広・釧路の両と畜場において採取した牛リンパ節からの抗酸菌の分離率は, 顎下リンパ節1.54%(2/130), 肺門リンパ節0.74%(1/135), 腸間膜リンパ節3.05%(4/131)で, 合計140頭中7頭(5%)から菌が検出された. 検出菌種はM. fortuitum 3株, M. scrofulaceun 2株, M. intracellulare 1株, その他1株であった. 北海道における「ツ」反応陽性要因の一つとして, かつて人型結核菌が考えられていたが, 今回の研究では, 本菌は全く検出されず, 9例中1例からM.gordonae様菌が分離されたに過ぎない. またnodular thelitisが散発的に発見され, これらの多くが「ツ」反応陽性を呈したことが注目される.
  • 早崎 峯夫
    1981 年 43 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫より作製した4種のPBS抽出抗原についてIHA反応における特異性と鋭敏性を比較検討した. 寄生犬血清における陽性率と平均抗体価は成熟雌虫子宮内子虫(子宮内子虫)抗原では93%, 1:891であり, これは幼虫抗原(89%, 1:168)や成虫抗原(81%, 1:64)の成績を上まわるものであった. 一方, 未感染犬血清におけるfalse positiveは子宮内子虫抗原で11%であり, これと幼虫抗原(2%), 成虫抗原(2%)との間に推計学的有意差は認められなかった. また末梢血子虫抗原は子宮内子虫抗原に比べてIHA反応抗原活性が著しく低かった. 犬回虫, 犬鉤釣虫および犬鞭虫の各抗原が子宮内子虫抗原あるいは成虫抗原を用いたIHA反応に及ぼす交叉反応の影響を凝集素吸収試験により検討した結果, 腸内寄生虫抗原による影響は極めて弱いものであった. 子宮内子虫抗原と成虫抗原の抗原性の差異を凝集素吸収試験により検討した結果, 一部共通抗原も存在するが, それぞれに特異な抗原の存在が示唆された. 以上のことから子宮内子虫抗原を用いたIHA反応は種特異性が高く, かつ高抗体価の得られることから鋭敏性も高く, 犬糸状虫特異抗体の検出にきわめて有用であると考えられる.
  • 江口 保暢, 葺石 米孝, 森川 嘉夫(
    1981 年 43 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    胎生21日, 22日のラット胎仔甲状腺C細胞は良く発達した粗面小胞体とゴルジ装置および多くの分泌顆粒を保有している. 半断頭(SD)による胎仔下垂体除去後, 胎仔血中Ca濃度が上昇した. C細胞の多くでは, 粗面小胞体は扁平ではあるが長くなり, しかも平行にたくさん積み重なっており, ゴルジ装置は, 扁平層状のゴルジ槽に加えて, たくさんの空胞, 小胞をともなっていた. 分泌顆粒は電子密度の低いものから高いものまで, たくさん存在した. これらの微細構造上の変化は, C細胞のカルシトニン生産能力の増加を示唆している. これは, 高Ca血症に対する反応であろう. 胎仔の甲状腺除去(上皮小体除去も含む)は, 低Ca血症をひきおこしたが, これはパラトルモン欠損のためであろう. SD胎仔へのTSH投与は, Caの血中濃度の上昇を阻止しえず, また細胞学的変化も改善しえなかった. SD 胎仔へのGH投与は, 胎生20-21日の間でCa濃度上昇をいくらか阻止したが, 21-22日の間では阻止しなかった. 細胞学的変化はいずれの場合にも改善されなかった. これらの観察は, SD後の胎仔血中Ca濃度の上昇とC細胞の分泌能の増加は, 胎仔下垂体TSHの欠損によるものではないことを示唆する. 下垂体GHの役割は疑問である. 他の下垂体因子や脳の因子が, 以上の観察結果に関係を持っているかも知れない.
  • 小島 義夫
    1981 年 43 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    種雄豚12頭(ランドレース種8, ハンプシャー種4)の射精精液中の精子の切片標本を作製し, 電子顕微鏡により細胞内空(液)胞の存在, 分布を調べた. 限界膜を有する空(液)胞は, 頭帽に最も多く, 次いで頭部核質内と尾部主部に認められ, 中片部と尾端部にほ殆んど出現しなかった. 精子無力症と貧精液症(ヘアーピン形異常精子の出現率13%以上)の各1例の雄豚の精子ではこれらの空砲の出現頻度が高く, 特に頚部の中心体内部にも現われ, 頚部に多胞体様構造も認められた. さらに頚部における細胞膜の嵌入が見出された. 一般に尾部に出現する空砲は長軸に沿って細長く, 軸線維束の中心微小管対と平行に位置する傾向がみられた. これらの成績について先人の報告を対比しながら多少の検討を加えた.
  • 斉藤 学, 中川 雅郎, 鈴木 映子, 木下 邦明, 今泉 清
    1981 年 43 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ddY系マウスを用いてMycoplasma pulmonis感染に及ぼすセンダイウイルス重複感染の影響を調べた. 肺におけるM. pulmonisの菌数は, 単独感染例では40匹中35匹が103CFU/g以下であったのに対して, M. pulmonisとセンダイウイルスの同時感染例では40匹中37匹が107CFU/g以上であった. 両病原体のいずれかを2~6週間先に感染させてもM. pulmonisの増殖促進効果は認められ, 両者の感染の時間差が短かいほどその効果は大きかった. 肺病変は重複感染例で80~100%発現し, M. pulmonis単独感染例の12%より高率であった. センダイウイルス単独感染例でも80%が肺病変を形成したが, 重複感染例の方が病変は強く, 長期間持続した. 重複感染例におけるM. pulmonisのCF抗体持続期間は単独感染例のそれより長かった. また, センダイウイルスの抗体産生はM. pulmonisの重複感染によってやや抑制された.
  • 田中 饒, 勝部 泰次, 武藤 健, 今泉 清
    1981 年 43 巻 1 号 p. 51-59,62
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    S. typhimurium線毛株の103~107個をマウスに経口投与した場合, 本菌は投与後1~3日目に小腸の中部および下部, ならびに大腸, 特にその壁に定着した. その後, 腸管においては投与菌の明確な増殖が認められた. そして, 投与菌量の増加に伴ない, 菌の増殖は顕著であった. 菌投与後3~5日目から, 腸管膜リンパ節, 肝および脾から菌が回収され, これらの臓器に肉眼病変が形成された例がみられた. 肝では, 菌投与5~14日の間に102~107/gの菌が回収された. 105個菌投与マウスでは, 菌投与後6日目に1頭が, 107個菌投与マウスでは, 菌投与後6~13日の間に7頭が敗血症死した. 菌投与7日目から, マウスでは投与菌に対するO, Hおよび線毛抗体が検出された. 一方, 非線毛株をマウスに投与した場合, その腸管における菌の定着は認められなかった. しかし, 例外的に105~107個菌を投与された少数のマウスでは, 接種菌に対するOおよびH抗体の産生がみられた. これに対し, 線毛および非線毛株をマウス腹腔内に接種したところ, 両者共に前報におけるものとほぼ同様なLD50値を示した. In vitroの実験で, 供試線毛菌はマウスの腸管粘膜の絨毛の表層に多数付着している所見が走査電顕によって観察された. 一方, 非線毛菌による実験では粘膜表層部に菌を検出することが出来なかった. 以上の成績は, 投与菌が腸管粘膜に定着する上に, その線毛が役割を演じていることを示唆しているものと思われる.
  • 遠藤 実, 品川 森一, 後藤 仁, 清水 亀平次
    1981 年 43 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)の同調培養ネコ腎細胞における増殖を調べた. [3H]チミジン標識FPLVを用いて調べたG1, S, Mの各細胞周期の細胞へのウイルスの吸着には, 細胞周期による差は認められなかった. G1期の細胞にFPLVを感染させ, 細胞をそのままG1期に止めた場合FPLVの増殖は認められなかった. しかし感染後12時間までにトリプシン処理により細胞の周期を先に進めるとごくわずかであるがウイルスの増殖が観察された. S期の細胞にウイルスを感染させた場合に, もっともよくウイルスが増殖した. 2mMのチミジン処理によりS前期に周期を止めた細胞にウイルスを感染させたとき, 感染後12時間までにチミジンを除き細胞周期を進めると, S期に感染させた場合と同様にウイルスは増殖した. しかし感染後もチミジン処理を続け細胞をS期に止めた場合ウイルス増殖は抑制された. M期の細胞に感染させた場合にはウイルスの増殖は認められなかった. 以上の結果はFPLVがその増殖に宿主の活動しているDNA合成系を必要としていることを示している.
  • 首藤 文栄, 三宅 陽一, 久保 周一郎
    1981 年 43 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    血清タンパク質のポリアクリルアミドゲル電気泳動法を改良し, 分離能, 再現性を高めた. この泳動法は, 各ゲルの泳動距離を強制的に一致させるもので, 等質ゲルであれば, 0.7%以内のずれで泳動位置の良好な一致を示す. 改良した濃度勾配ゲルは, アスパラギン酸を先導イオンに用いたもので, ヒト血清で65-81本のゾーンが検出された. 牛新生仔血清の分析例では, 初乳中の7種類のタンパク質の移行が示唆され, トランスフェリンの質的, 量的変化が観察され, この方法が, 詳細な血清タンパク質の解析に応用され得ることが示された.
  • 大島 寛一, 岡田 幸助, 沼宮内 茂, 米山 陽太郎, 佐藤 繁, 高橋 喜和夫
    1981 年 43 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    実験には4-5ヵ月齢の子ヒツジ3頭と対照の1頭を用いた. BLV感染雌ウシから吸血途中のアブ(90%以上がTabanus nipponicus)を有孔透明プラスチックカップを用いて, 子ヒツジの皮膚に置き, 吸血を継続させた. この操作を4日間に131-140回/頭行なった. 1頭は寄生虫感染で斃死したが, 吸血後40日目の血清BLVgp抗体は1:8と陽性を示した. 他の2頭は吸血後38日目以来抗体が検出され, はじめ1:16の力価が4-5ヵ月後には1:128あるいは1:256と上昇した. 対照では抗体は認められていない. 以上のことから, 感染したウシから吸血途中で追われたアブが, 別の宿主から吸血を継続する場合, BLVを伝播する可能性のあることが確かめられた.
  • 藤井 俊策, 田村 達堂, 岡本 敏一
    1981 年 43 巻 1 号 p. 83-85,88
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鶏肺の呼吸域における毛細気管と毛細血管の立体的構築を, 合成樹脂鋳型標本によって走査電顕的に調べた. 旁気管支(三次気管支)周囲のいわゆる呼吸野は, 複雑に吻合する毛細気管網と毛細血管網のからみ合いによって構築されていた. 毛細気管網は旁気管支の側壁から進入する呼吸細管の末端に形成されていた. 毛細血管網は旁気管支の外側から進入する動脈性血管の分枝によって構築され, これは旁気管支粘膜下の静脈と連絡していた.
  • 中沢 宗生, 根本 久, 上田 久, 丸山 務
    1981 年 43 巻 1 号 p. 89-91
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    子牛から分離された大腸菌について, O群別, K99抗原の存在, 血球凝集性, および, 毒素原性を調べた. その結果, K99保有大腸菌は, 下痢牛由来株では306株中55株に, また, 健康牛由来株では167株中2株に確認された. このK99保有大腸菌57株はO8(13株), O11(2), O81(1), O88(1), O101(39), および, O103(1)に群別された. また, STaはO101の39株に証明されたが, LTは全株陰性であった. O101の39株は下痢子牛103頭中22頭から分離されたものであった.
  • 九郎丸 正道, 西田 隆雄, 望月 公子, 林 良博
    1981 年 43 巻 1 号 p. 93-95,98
    発行日: 1981/02/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    奄美大島瀬戸内町にて捕獲されたアマミトゲネズミ5頭(雄4, 雌1)の盲腸粘膜を走査型および透過型電子顕微鏡で観察したところ, 全例とも粘膜表面に, スピロヘータ様のラセン状細菌が多数付着していた. この細菌は長さ3~6μm, 幅0.2μmで, 付着部先端には短い鞭毛を備え, また軸糸を欠くことなどから, いわゆるスピロヘータ類ではなく, スピリルム属に近縁な非病原性のものと思われる.
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