日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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28 巻, 6 号
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  • 一木 彦三, 臼井 和哉, 幡谷 正明
    1966 年 28 巻 6 号 p. 273-285_6
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    前報において,ラットを用いて強制遊運動を負荷し,極端な疲労に陥いったときに生ずるさまざまな゛病変のうち,骨に生ずる病変が生化学的にも,また病理組織学的にもOstcoporosisに類似した代謝障害であって,下垂体副腎皮質系が,この Mcchanismに関与することを明らかにした,本報告では,前報における実験を繰返しておこない,疲労に伴なって生ずる骨の代謝障害に対する蛋白同化ホルモン(NAPP)の効果を検討した.まずラットを8群に分け,1群は無処置の群とし,これを対照とし,3群には強制遊泳運動を負荷した.強制遊泳運動負荷ラットの1群は無処置とし,つぎの1群にはNAPPO.5mgを,他の1群には2.0mgをそれぞれ隔日に皮下注射によって投与した.さらに残る4群は総て,両側の副腎を摘除し,1群はそのまま,つぎの3群に対してはCortisonclmgを毎日皮下注射した.この3群のうち1群はCortisonc注射のみとし,つぎ01群にはNAPPO.5mgを,最後の1群にはNAPP2.Omgをそれぞれ隔日に皮下注射した.すなわち,対照群,強制遊泳群,強制遊泳NAPPO.5mg投与群,強制遊泳NAPP2.Omg投与群,副腎摘除群,副腎摘除Cortisonc投与群,副腎摘除CortisoncNAPP0.5mg投与群,および副腎摘除CortisoncNAPP2.Omg投与群の8群について,骨の生化学的および組織学的変化と副腎の変化とを追求した.1)NAPPの投与は,強制遊泳ラットおよびCortisonc投与ラットの体重増加率の減少を十分に防ぐことはできなかった.しかしNAPPを投与されなかった強制遊泳群が極端な疲労に陥し・って,もはや遊泳を続けられなくなったとき,NAPPを投与された他の2群は未だ十分に遊泳を続ける余力を保持していることがうかがわれた.2)前報において明らかにされた強制遊泳群の副腎重量の増加は,本実験においても著明に認められ,副腎皮質の肥大および増生も認められた.しかし強制遊泳NAPP0.5mg投与群における副腎重量は,対照群におけるよりは明らかに増加していたが,強制遊泳群のそれより明らかに減少し,皮質の肥大,増生の程度も軽微であった.一方,強制遊泳NAPP2.Omg投与群における副腎重量は対照群のそれとほとんど差がなく,組織学的にも変化が認められなかった.3)骨の生化学的検索によって,NAPP0.5mg投与による拮抗作用は不十分ではあるが,明らかに認められ,NAPP2.Omgの投与は完全に骨の生化学的変化を防禦した.骨の組織学的検索では,NAPPO.5mgまたは2.0mgいずれの投与群においても強制遊泳群に認められたOstcoporosis類似の病変は認められなかった.4)以上の所見から,NAPPの適量を投与すること
  • 大越 伸, 村田 義彦
    1966 年 28 巻 6 号 p. 287-295_2
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    猫に寄生する鉤虫については,本邦であまり知られていないが,すでに1800年に書かれた古い文献にその記載がある,しかし乍ら木鉤虫の種類の同定については,従来,明瞭を欠いた点が多かった.すなわちSCOTTは,猫の鉤虫が,大鉤虫と形態上の差が全くなく,両者は同種のA.caninumであるとし,CatstrainとDogstrainに区別されると考えた.その後M6NNIGは,猫の鉤虫とA.caninumとの形態学上の相違点を明らかにした.また1954年になってBIOCCAは,すでにZEDERが報告した古い記録の優先を尊重して,猫の鉤虫を A.tubaeformeZEDER,1800と命名し,A.caninumと著明な形態上の差があることを立証した.それ以降の多数の研究発表は,すべてBIOCCAの説に従い,猫に寄生した鉤虫が,いずれもA.tubaeformeであったと報告している.従って最近では,A.cani-numの猫寄生説よりも,A.tubaψrmeの寄生に注意が払われる傾向になって来た.そこで著者らは,この問題を本邦の猫について検討するため,東京・神奈川・千葉・兵庫の各都県下で飼育された猫136頭を材料として,鉤主の寄生状況を調査した.その結果,11頭の感染猫から,54隻の鉤虫を検出し得た.これらの鉤虫の細部構造を計測し,その形態を詳細に比較した結果,交接刺および副交接刺の長さ,交接刺末端切れ込みの深さ,顆部乳頭および交接嚢前乳頭の形状,Cuticlc層の厚さ,雌虫の食道長などの個所に,著明な相違点を有するA群とB群の2種に区分することができた.A群の形態は,犬から採集したA.caninumと一致し,またB群は明らかにA.tubaeformeと同種であると同定した.以上の通り,わが国における猫の鉤虫感染率は8.1%を示して,予期以上にわが国に広く分布していることが判明した.またその種類には,A.caninumとA.tubaeformeの2種がある事実を確認し,従来の不明確な点を解明することを得た.
  • 藤倉 孝夫
    1966 年 28 巻 6 号 p. 297-306_1
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    近年,Coxら(1956),梁川ら(1958)により,レプトスピラ(以下「レ」と略す)集落形成については,種々明らかにされてきた.これらの方法は,Cox培地(Difco-tryptosephosphatcbroth0.2%に,正常家免血清10%,およびDirco-bactoagar1.0%を添加)を用いて,シャーレ内平板上に,「レ」を接種し,培養をおこなうものであるが,7ないし21日間の培養期間を通じて,培地面よりの水分の蒸発,汚染等のため,しばしば実験上損失をきたす場合にそうぐうした.そこで本研究においては,Leptos力iraicterohaemorrhagiaeWcil株を用い,角びんを使用して,Cox培地を添加し,混釈培養により培養し,種々検討した.本培養方法による「レ」集落形成諸条件を検討し,以下の成績をえた.すなわち,ゴム栓を施した60ml容,200ml容角びんを用い,Cox培地それぞれ5ml,20ml中に「レ」を接種し,42±10Cに保ちなから混釈培養し,33°Cで21日間培養したところ,8日目に第1次集落が認められ,15口以降21日で第2′次集落が発現した.本培養方法は,同時に比較した従来のシャーレ内平板培養法より良好な成績をあ,げ,集落数分布は正規分布をしめし,平均集落数99.3±19.7における実測値および理論値との比較において,本培養系の均一性が示唆された.また本培養方法による集落数計数による生菌数値と,Korthof培地内限界希釈培養法によるCD50値との比率は,1:1.03ないし1:1.24であった.本試験により,大(D-type),小(C-type)二型の.「レ」集落の解離が観察され,それぞれの型の半個集落より得られたC-およびD-substrainは,それぞれC-およびD-typcの集落を均一に形成することが認められた.これらの所見から,本培養方法により,「レ」集落が効率よく形成されることが明らかとなり,また,「レ」集落に関する各種試験に応用しうろことが示唆された.
  • 本橋 常正, 田島 正典
    1966 年 28 巻 6 号 p. 307-314_2
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬ヘルペス・ウイルスは,最近アメリカにおいて,初生大から,また幼若犬由来の腎細胞培養から:分離された,分離ウイルスは,初生犬に出血性の全身感染を起こすが,成犬には有症感染を起こさないといわれている.本報告には,日本において,大ジステンパー様の症状を呈した成犬から,犬ヘルペス・ウイルスを分離し,その性状を検討した結果が,記載されている.本ウイルスは,1959年1月,元気消失,高熱,呼吸困難,鼻漏,眼漏等を呈する3才の雄大の肺材料から,犬腎細胞培養に分離された.牌材料からのウイルス分離は,陰性に終わった.このウイルスは,犬腎細胞培養で増殖し,継代30代ウイルスは,12時間でほぼ最高の感染価である104゜5~106゜0TCID50/mlに達し,細胞の円形化および脱落を呈し,感染細胞核内に封入体を形成した.しかし,猫,兎,豚,ハムスター,牛などの腎細胞,鶏胎児細胞,ならびにFlおよびHcLa細胞などでは,ウイルス増殖も,細胞変性もみられなかった.生後5週および3カ月の犬に大量のウイルスを接種したが,なんの症状もみられず,一定期間後追加接種を施したもののほかは,抗体感応もみられなかった.調べた範囲では,野外の犬の血清中に本ウイルスに対する抗体を証明することができなかった.マウス,ハムスター,モルモットおよび鶏胎児を使っての接種実験でも,症状または病変を呈するものはなかった.本ウイルスは,エーテルで不活化され,その増殖はDNA合成阻止剤によって抑制された.鶏,モルモット,マウスなどの赤血球の凝集反応は陰性であ.った.熱および低pHによっても,ウイルスは容易に不活化された.感染細胞の超薄切片においては,核内のウイルス粒子は直径約90mμで,内部に約60mμの核様小体を含んでいた.細胞質内粒子は直径約155mμで,内部に約60mμの核様小体と,それを包む約80mPの内膜が識別された.細胞外にみられる粒子は,細胞質内のそれと区別できなかった.核周隙にみられる粒子は,大きさと構造から,上述の2つの形の移行形と解された.ネガティブ染色された試料では,カプシッドの直径は約110mμ,包膜の直径は約170mμと測定された.PTAの浸入の程度は,粒子によって色々であ.った.カプソメアの数は162と算定された.・\ルペス・ウイルスの特徴として,DNA合成阻止剤による増ダ直抑制,エーテルおよび低pH感受性,核封入体形成,血球凝集反応陰性,ウイルス粒子の微細構造とその特異的な発生および放出様式などの諸性質があげられている.分離ウイルスの示す諸性状は,これらとよく合致するのみならず,大ヘルペス・ウイルスに・
  • 松坂 尚典, 池田 三義, 大久保 義夫
    1966 年 28 巻 6 号 p. 315-320
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    The transfer of "Sr from mother to offspring througFn the placenta during intra-uterine life arnd through mothers milk during nursing was observed in experimentalmice.Three groups of female mice were injected intraperitoneally with 2, uni of "Sr ixr0-5 ml salune solution as a single tracer dose atnd mated at differ"ent intervals after injection.The amounts of"Sr accumulated in the youmng at birth were 0.087, 0.067, and 0.047per cent or the ctose in those derived trorn mice mated t -2 weeks, 2 -3 weeks, ana 4-5weeks after "Sr unjectiort, respectively. From these results, it was apparent that tlaeshorter the interval betvveen injection and parturition, the greater became the "Sr con-tent in the young at birth.In the young brought forth by an "Sr-contamiuaa-ted mother and nursed with herbreast rnulk, the accumulation of "Sr increased rapidly on the 3rd day after birth. The"St retained by the suckling was derived partially frorn placental transfer and partially1f0rT1 mothers milk. Thorn relative contributions by the transplacental and milk-borne"81 taken by the suckling during the nursing period were calculated. The contributionof transplacental "Sr decreased rapidly after birth. On the contrary, that of milk-borne"Sr increased during nursing.
  • 伊出 優, 新林 恒一, 米村 寿男
    1966 年 28 巻 6 号 p. 321-327
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    乳牛の血清およびミルクの尿素レベルは,飼養条件の相違によって著しく変動する.本報告では,血清およびミルクの尿素レベルと摂取蛋白量とのあいだの関係を明らかにする目的で,蛋白含量の異なる飼料で乳牛を実験的に飼養し,その場合における血清およびミルクの尿素レベルの変動について観察した.実験に用いた乳牛は,体重365~600kgの泌乳中および乾乳期のホルスタイン乳牛である.得られた.観察結果を要約すると,次の通りである.I)血清およびミルクの尿素レベルは,同一飼料を給与する限り,ほぼ一定の値を保った.ミルクの尿素レベルは,血清の尿素レベルとほぼ等しかった.2)エネルギー要求量をみたす飼養条件では,尿素レベルは,摂取粗蛋白量に密接に関係した.尿素レベルと摂取粗蛋白量とのあいだの相関係数は0.979と計算された.摂取粗蛋白量の増加に比例して,尿素レベルは増加した.3)給与粗飼料の相違は,尿素レベルに若干影響した.4)標準飼養をおこなった場合の尿素レベルは,泌乳牛で10mgN7100mlに近い値であった.5)血清およびミルクの尿素レベルは,蛋白給与失宜の診断の指標として用いられると考えられた.
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