過去17年間, 続いて腎孟腎炎の発生があった北海道の1牧場において, 病牛および健康牛から分離された Corynebacterium renale を, 血清学的に型別し, さらにファージ RP 6に対する態度も調べた. 病牛から分離された菌株はすべて type I であったが, 健康牛由来のそれは, type Iか, またはtype II であった. ファージ RP 6に対する態度は, 病牛と健康牛由来の菌株では, 差がみられなかった. この牧場では, 性別, 年令別に7牛舎に飼育しているが, 発生はいずれも24カ月以上の雌牛のいる牛舎で認められた. 見かけ上健康な牛から分離された株のうち, type I はすべて雌牛(病牛のいた牛舎および他の1牛舎の)に由来した. これに反して, type II は性・年令に関係なく, いずれの牛舎の牛からも分離された. しかし, 雄牛に由来した菌株のすべてが, type II であったことは注目される. このように, C. renale 菌株の牛舎別由来と血清型の間には, 明らかな関連がみられた. しかしファージ RP 6に対する態度と, 菌株の牛舎別由来には, 別に関連はなかった. 以上, この牧場に長い間発生が見られた牛の腎孟腎炎は, C. renle type I によること, 発症には生体側の条件の関与の必要なこと, およびこの菌の血清学的型別, ファージ型別は, 本病の疫学や, この菌の ecology を知る上に, 重要であることについて考察した.
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