日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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48 巻, 3 号
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  • 巽 正志, 矢部 美機子
    1986 年 48 巻 3 号 p. 453-460
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    黄色のtetrazolium塩MTTが生細胞のミトコンドリア呼吸鎖に関連する酵素によって開裂して紫色のformazan塩を形成することを利用した比色定量法を, サルのリンパ球機能に応用した。formazan塩形成量は指標細胞の活性度に依存し, 広範囲にわたる細胞数と比例した。本法をmitogen誘導幼若化反応, 補体依存性細胞障害反応, IL2測定およびIFN測定に応用したところ, 従来の方法と匹敵する成績が得られた。また, 本法は迅速性, 簡便性および取扱いの熕瑣な放射性物質を必要としない点で従来の方法より優れていた。
  • 小木曽 洋一, 久保田 善人
    1986 年 48 巻 3 号 p. 461-471
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    粒子状物質による肺胞マクロファージ(AM)からの免疫活性因子および線維化因子放出について検討した。ラットAMをシリカやアスベスト粒子に in vitroで曝露すると, その培養上清中にインターキロン-1(IL-1)様の胸腺細胞増殖活性が検出され, 同時に線維芽細胞増殖活性も見出された。これらの活性は, lipopolysaccharides (LPS)を添加することによりさらに増強され, 培養24時間以内にAMによって産出される非透析性, 熱抵抗性, トリプシン感受性の物質であることが示された。また, ゲルろ過による分子量の検討から, 両活性の主要なピークは低分子量域(18000~25000)および高分子量域(75000~100000)にみとめられ, 高分子量成分は低分子量成分の凝集によるものであることが推察された。以上のことから, 粒子刺激AM培養上清中に見出される線維芽細胞増殖活性の少なくとも一部はIL-1様因子にもとずくものと考えられ, 鉱物ダスト吸入による肺疾患の発病機構において, AMの産生するIL-1が重要な役割をもつことが示唆された。
  • 高橋 公正, 真板 敬三, 白須 泰彦
    1986 年 48 巻 3 号 p. 473-479
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    96週齢のLCR系雄マウスの腰部筋に原発した多形性横紋筋肉腫1例について光顕的, 電顕的観察を行うとともに免疫組織化学的手法(PAP法)によるミオグロビンおよびアクチンの検索を行った。腫瘍は筋原線維形成の発達段階の異なる3型の細胞から構成されていた。小型の類円形ないし紡錘形単核細胞(I型)は未分化間葉系細胞の特徴をもち, 腫瘍細胞の大部分を占めていた。またこれらの一部の細胞は核周辺部に少量の中間フィラメント(直径9~11nm)を含んでいた。エオジン好性大型細胞(II型)は1~2箇の不整形の核を有し, 豊富な細胞質内には不規則に分散したアクチンおよびミオシンフィラメントを含んでいた。多核巨細胞(III型)においてのみZ帯の明らかな筋原線維形成が見られた。細胞型に関係なく, 腫瘍細胞の細胞質空胞内ないし細胞間隙にC型ウイルス様粒子が認められた。III型細胞と一部のII型細胞はミオグロビン陽性で, また両型細胞の大多数がアクチン陽性であった。一方, I型細胞はいずれかのマーカーに対しても陰性であった。
  • 権 五鏡, 小野 斉, 大笹 清, 恩田 求, 大星 健治, 内杉 春生, 黒沢 重人, 山科 秀也, 金川 弘司
    1986 年 48 巻 3 号 p. 481-486
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    搾乳牛の血清総コレステロール値に影響をおよぼすと考えられるいくつかの要因について検討を行った。総コレステロール値は牧場, 産次, 健康状態, 泌乳量および分娩後の日数によって有意に変動し, 特に後2者の影響が大きかった。夏と冬との間に差は認められなかった。
  • 福山 正文, 上村 知雄, 伊藤 武, 斉藤 香彦, 高橋 正樹, 坂井 千三, 村田 元秀, 光崎 研一, 原 元宣, 清水 武彦, 田渕 ...
    1986 年 48 巻 3 号 p. 487-493
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    都市環境に生息する野鳥および富士山麓の自然環境下に生息する野鳥総計700例についてカンピロバクターの検索を行った結果, 以下の成績が得られた。1)野鳥700例中55例(7.9%)より Thermophilic campylobacterが検出された。その内訳は, ドバト378例中51例(13.5%), オナガガモ82例中2例(2.4%)スズメ5例中3例(60%)から本菌が検出された。しかし, ツバメやキジバトなどの野鳥235例からは本菌は検出されなかった。2)ハ卜およびスズメ由来株はすべて, C. jejuniであった。オナガガモ由来の2株はC. coliと同定された。諸外国で野鳥に広く分布するC. laridisはまったく検出されなかった。3)スライド凝集反応によって分離菌株の血清型別を行った結果, ドバト由来のC. jejuni49株中17株(34.7%), スズメ由来2株中2株(100%)が著者らの血清型(TCK1~TCK32)のいずれかに型別された。ドバトでは特にTCK20に該当する菌株が多く認められた。オナガガモ由来の C. coli株は著者らの血清型別には該当しなかった。
  • 権 五鏡, 金川 弘司, 高橋 芳幸, 山科 秀也, 清家 昇, 岩住 安晃, 青柳 敬人, 小野 斉
    1986 年 48 巻 3 号 p. 495-503
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    312頭の過剰排卵誘起処置に対する卵巣反応の変動要因について検討を行った。供卵牛からのデーバは次の8つの因子に分離した: 過剰排卵を行った場所, 産次, 季節, 分娩後日数, ホルモンの種類, ホルモン処置日, 排卵促進剤および血清総コルステロール値。4個以上の正常胚を得られた牛の割合は未経産牛においては90mg/dl以上のものが, 経産牛においては130mg/dl以上のものが, 以下のものよりそれぞれ有意に高かった(p<0.01)。排卵促進剤の種類によって, 回収胚または正常胚の数に有意差が見られたが, 他の要因によっては有意差が見られなかった。
  • 稲葉 俊夫, 井上 明子, 清水 亮佑, 中野 長久, 森 純一
    1986 年 48 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    大阪府南部地域におけるホルスタイン種乳牛1,695頭の分娩記録をもとに胎盤停滞の発生率を調査し, さらに, 1月~3月に分娩した胎盤停滞牛と非停滞牛の血漿中プロジェステロン, エストロン, エストラジオール, ビタミンA及びβ-カロチン量を比較検討した。胎盤停滞の発生率は冬期(1, 2月)と初夏(6, 7月)では他の季節(春期と秋期)に比べて有意に高い値(p<0.02)を示した。胎盤停滞例と非停滞例の血中ステロイドホルモン値の変動には明らかな差を認めなかった。すなわち, 両群ともに血中プロジェステロン値は分娩前数日から減少し, 血中エストロンおよびエストラジオール値は分娩前10~6日より分娩前4日にかけて上昇した後, 分娩直前に減少を示した。血中ビタミンA値については両群間で明らかな差を認めなかったが, 胎盤停滞例では非停滞例に比べて分娩前に血中β-カロチン値の低下が認められた。以上の成績から, 冬期に胎盤停滞の発生率が高い原因の一つとして, 血中β-カロチン値の低下が示唆された。
  • 中島 靖之, 上田 久, 八木 行雄, 中村 菊保, 元井 葭子, 竹内 正太郎
    1986 年 48 巻 3 号 p. 509-515
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    門脈系へのF. necrophorumの接種によって肝臓に微小腫瘍と播種性の微小血栓が形成された。微小腫瘍はF. necrophorumの増殖につれて凝固壊死となり, 肉芽組織によって被包されていた。肝病変形成過程の初期に血管内凝固の関与がみられた。
  • 北川 均, 佐々木 栄英, 石原 勝也
    1986 年 48 巻 3 号 p. 517-522
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    末梢血ミクロフイラリア(mf)陽性の犬糸状虫寄生犬にミルベマイシンDを経口投与した後, 8例が犬糸状虫性血色素尿症(caval symdrome)を発症した。発症は投薬3~24時間後に確認され, 発症中に剖検した2例を除き, 無処置のままで21~117時間後に回復した。発症時の共通所見は, 収縮期心内雑音, 陽性頸静脈拍動, 不整脈, 心拍数減少, 血圧低下, 三尖弁口部位への糸状虫エコー出現, 心室性または心房性の期外収縮, 末梢血mf数減少, 血清酵素活性および血漿ヘモグロビン濃度の上昇, および血色素尿であった。右心系の成虫寄生数は10~39隻, 体重1kg当たりの寄生数は1.00~8.67であり, 必ずしも多数寄生例のみではなかった。血清および赤血球膜の脂質所見は慢性重症例のそれらに類似しており, 発症時すでに赤血球には易溶血性素質が形成されていることが示唆された。これらの発症例では, ミルベマイシンD投与に伴う心機能の低下が, 糸状虫の肺動脈から大静脈方向への移動に関与すると考えられた。
  • 新城 敏晴, 清山 紘子
    1986 年 48 巻 3 号 p. 523-527
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Fusobacterium necrophorum生物型Aから赤血球非凝集性の変異株を分別し, 線毛とマウスに対する病原性との関係について親株と比較した。親株を接種したマウスは10匹中9匹が死亡し, 全例に肝膿瘍が形成された。接種菌は肝膿瘍, 膿瘍非形成部の肝臓, 脾臓, 腎臓及び肺から回収され, すべての分離菌がニワトリ赤血球を凝集した。一方, 変異株を接種したマウスは, 10匹とも生残し, その中の6匹に肝膿瘍が認められた。接種菌は肝膿瘍部からのみ回収され, 膿瘍非形成部の肝臓, 脾臓, 腎臓及び肺からは回収されなかった。肝膿瘍部から回収された菌株は, ニワトリ赤血球を凝集しなかった。線毛は両菌株に認められた。
  • 後飯塚 僚, 廣田 好和, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1986 年 48 巻 3 号 p. 529-537
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコリンパ球をconcanavalin A (Con A)とともに培養した上清中にマウスのIL-2依存性T細胞株(CTLL-2)を増殖させる活性が検出され, ネコIL-2活性をCTLL細胞の増殖反応によって測定できることが明らかになった。ネコIL-2活性は, ゲル〓過法により分子量約16000ダルトンに相当する分画に存在することが判明し, ネコIL-2の分子量もヒト及びラットIL-2のそれに類似することが示された。本ネコIL-2分画を用いて, そのいくつかの物理化学的性状について検索した結果, ネコIL-2はトリプシン処理によって失活し, 酸(pH 3.2), アルカリ(pH10.5), 熱(70℃)及び尿素(2, 4, 8M)処理に対してもヒトやマウスIL-2に比較して感受性が高いことが確認された。Con Aで刺激したリンパ球培養上清中のIL-2活性は6~12時間後に最高値を示し, 添加するCon A濃度は, 10~100μg/mlで最大のIL-2活性が得られた。次いでネコリンパ球培養におけるIL-2の添加効果について検討した。その結果, ネコIL-2のみを添加した場合にはネコリンパ球の増殖はおころなかったが, Con Aの存在下においてネコIL-2を添加した時には増殖が促進された。またIL-2をCon Aで刺激していないリンパ球で処理してもIL-2活性の有意な減少は認められなかったが, Con Aで刺激したリンパ球で処理した場合には著明な減少が認められた。このことから, ネコリンパ球をCon Aで刺激するとIL-2レセプターが発現するものと考えられた。
  • 真板 敬三, 平野 雅俗, 原田 孝則, 三森 国敏, 吉田 明由, 高橋 公正, 中島 信明, 北沢 利明, 榎本 秋子, 乾 公正, 白 ...
    1986 年 48 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    F344ラットを用いた農薬の慢性経餌投与試験において, 胃の噴門における食餌の通過障害を伴う食道拡張症が発生した。症状はインフルエンザ様発作に始まり, 10週間程度の経過後に食物の噴出を伴う強い発咳を呈し動物は衰弱死した。胃ゾンデを挿入すると噴門部で完全に阻止された。動物の細菌学的および免疫学的検査では, 肺炎をもたらす病原体の感染は証明されなかった。剖検では食道が著しく拡張し, 内部に軟泥状の粉末飼料が充満していた。また, 肺には大小の無気肺巣が認められた。組織学的には化膿性炎症が肺, 中耳および鼻腔に観察されたが, 抹梢神経および中枢神経には本疾患の症状に対応するような病変はなかった。雌ラットでの発生は雄ラットに比し高かった。本疾患の発生率は, 今回検索した12の慢性毒性試験のそれぞれ異なっていた。最も高い発生率を示した試験では, 試験期間中に斃死あるいは衰弱のため29/50例が途中解剖に供されたが, そのうち23例が本疾患と診断された。本疾患の大部分は70週齢以降の動物に発生した。
  • 菊田 安至, 大西 堂文
    1986 年 48 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    血清中のクレアチンキナーゼ(CK)およびそのアイソザイムに対する腸管中のCKの影響を調べるために, ネオスチグミンを8頭の犬に投与して腸管の蠕動を亢通させた。血清中のCK活性値は投与後3時間目まで増加を示し, 腸管のアイソザイムパターンと似たパターンを示した。このCK活性の上昇は投与後24~48時間でみられなくなった。ネオスチグミンとアトロピンの両方を投与した群およびアトロピンだけを投与した群では血清中のCKに変化はみられなかった。このように腸管の過蠕動により血清中のCK活性およびアイソザイムパターンに変化がみられ, 腸管中のCKが血清中のCKに影響を与えることがわかった。
  • 松田 基夫, 山田 隆紹
    1986 年 48 巻 3 号 p. 553-559
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコ胎盤における遺伝子発現の調節機構を解析する目的で, 胎盤の核内低分子量RNA及び核内低分子量リボ核蛋白質複合体の分離精製を試みた。ネコ胎盤細胞核から抽出したRNAを7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分画すると, アクリジンオレンジ染色により7S, U2, U1, U4, X-I, X-II, 5S, U5, U6及びX-III RNAが検出された。U1 snRNAは対照として用いたマウス肝臓のU1 snRNAとほほ同じ移動度を示した。胎盤snRNAのヌクレオチド長の対数は用いたRNAゲル電気泳動系においてその移動に正しく逆比例していた。ヒト細胞核内における報告されているU1 RNAの分子数を指標としてネコ胎盤中の細胞核当りのsnRNAの分子数を概算した。SLE-抗(U1) RNP抗体を用いた免疫化学的手法でU1-snRNPの単離を行ったところ, U1 RNAと分子量が約68,000, 54,000, 36,000, 35,000, 17,500, 16,500, 10,000及び9,500の8個のポリペプチド成分が銀染色法によって検出され, これらポリペプチド成分はいずれも正常ヒトIgGとは反応しなかった。ネコ羊水中には抗(U1) RNP抗体と反応する成分は検出されなかった。ついで生化学的手法を用いてU1-snRNPに富む分画とU2-snRNPに富む分画が得られた。
  • 高橋 芳幸, 金川 弘司
    1986 年 48 巻 3 号 p. 561-567
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    発情周期第7日および第8日に回収した牛胚について単純合成培養液内での発育と培養後の生存性について検討した。単純合成培養液BMOC-3を用いて試験管内培養法と微小滴培養法を比較し, 培養方法によって胚の発育に差がないことを確認した後, 4種類の合成培養液(BMOC-3, BMOC-3+FCS, HF-10+FCSおよびMPBS+FCS)を用いて72時間の体外培養を行った。発情周期第7日の胚は48時間以上, 第8日の胚は24時間以上の培養で発育率が低下した。第8日胚では4種類の培養液間に胚の発育率に差異を認めなかったが, 第7日胚ではMPBS+FCS培養で他の培養液に比べて発育率が低かった。BMOC-3で48時間培養した第7日胚および24時間培養した第8日胚を非手術的に移植した結果, それぞれ11頭中3頭および11頭中5頭が受胎した。
  • 深瀬 徹, 尾崎 学, 茅根 士郎, 板垣 博
    1986 年 48 巻 3 号 p. 569-577
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    壺形吸虫 Pharyngostomum cordatumに対する praziquantelの駆虫効果について検討した。各群6頭の6群, 計36頭中, 5群30頭に対して, シマヘビおよびヤマカガシより得た壺形吸虫のメタセルカリアを50個ずつ経口投与した。これらの感染群のうちの2群にはpraziquantelを感染後10日に6mg/kgまたは30mg/kg, 他の2群には感染後40日に6mg/kgまたは30mg/kgずつ皮下注射し, 1群はプラシボ群として10日目および40日目に生理食塩水を注射した。残りの1群は, 無感染・無投薬コントロールとした。供試猫は感染後47日に剖検し, 虫体を検索した。プラシボ群6頭では, prepatent periodが19~23日(平均21.2日, 回収虫体数は28~46 (平均40.2)であった。これに対して, praziquantel投与群では, 感染後10日あるいは40日の投与のいずれの場合においても, 6mg/kg投与群で一部の例に小数虫体の残存が認められたが, 30mg/kg投与群では虫体の残存は認められなかった。また, 薬剤投与に起因すると思われる臨床的異常は認められなかった。以上の成績から, praziquantel 30mg/kgの投与により壺形吸虫の未成熟虫ならびに成熟虫の完全な駆虫が期待できると結論された。
  • 佐々木 栄英, 北川 均, 岡地 啓之, 梶田 祐司, 石原 勝也
    1986 年 48 巻 3 号 p. 579-586
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Milbemyshin Dを犬糸状虫の非寄生犬, 末梢血microfilaria (mf)陰性の寄生犬(mf陰性犬)及びmf陽性犬の3群201頭に1mg/kgまたは5mg/kgを経口投与し, 投与後の生体反応を検討した。臨床症状の発現率と強弱は各群共に投薬量により著しい差はなかた。嘔吐は5例(2%), 不整脈は22例(11%)に認められた。非寄生犬とmf陰性犬では投薬3及び6時間後に体温, 血圧, 赤血球数, 血清蛋白濃度, 浸透圧及びNa濃度は低下したが, いずれも正常域内の変動で, 24時間後には回復傾向を示した。寄生犬では元気・食欲の不振が5例(2%), 粘膜の蒼白が9例(5%), ショック様反応が9例(5%), 犬糸状虫性血色素尿症が8例(4%)に認められた。これらの発症犬の大多数はmf陽性犬で, 非寄生犬では全く発生しなかった。さらにmf陽性犬では, mf数の著減, 体温の上昇, 血清GOT, GPT及びALP活性値の上昇がみられ, これらの諸反応には, mf死減に伴う免疫反応などの関与が推察された。本剤の投与は非寄生犬及びmf陰性犬に対しては問題がない。しかしmf陽性犬では, 有害反応が発生しうることを予期すべきであろう。
  • 中村 貴史, 小西 喬郎, 川口 陽資
    1986 年 48 巻 3 号 p. 587-590
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鶏コクシジウムの遺伝的背景を, GPI及びLDHを指標とするデンプンゲル電気泳動によりしらべた。調べた6種の鶏コクシジウムは, GPIで4タイプに, LDHでは6タイプに分かれた。野外から分離したE. tenella 6株について検討したところ, LDHは同一であったが, GPIでは2株が標準株を含む他の4株とは異なっていた。
  • 清水 真也, 小野寺 節, 南 哲郎, 田中 義夫, 後藤 信男, 藤永 徹, 伊藤 進午
    1986 年 48 巻 3 号 p. 591-594
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウスに Theileria sergenti溶解抗原を注射, 羊赤血球を注射4日後にJerneのプラック法の改良法を用いて免疫増強効果を観察した。原虫溶解抗原による免疫増強効果には, 使用された近文系マウスの系統差および性差が見られた。
  • 平賀 武夫, 阿部 光雄
    1986 年 48 巻 3 号 p. 595-598
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    これまで2回の正常な出産歴をもった5歳のホルスタイン種乳牛が372日におよぶ長期在胎ののちに奇形子ウシを分娩した。子ウシは雌で体重27kg, 死産であった。無脳症, 無眼球症, 動脈幹残存, 盲端型の十二指腸閉鎖その他多くの異常が認められ, これらの形態異常を発生学的に簡潔に考察した。本例は多くの合併奇形を伴った非常に珍しい無脳症の例と思われた。
  • 佐藤 基佳, 広瀬 恒夫, 宮上 禎肇, 桜井 治久, 斎藤 篤志, 鈴木 直義
    1986 年 48 巻 3 号 p. 599-602
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Babesia ovata あるいは Theileria sergentiによる実験的感染時の牛の体液性及び細胞性免疫応答を明らかにする目的でホスルタイン種雌牛2頭に各原虫感染赤血球を接種し, 接種後12週目に摘脾を行ない全期間中の一般血液検査, MIF活性, IgM及びIgG抗体価,マクロファージの抗微生物能について検索した。本実験の結果, それぞれの原虫感染後1~3週に強い体液性及び細胞性免疫応答が認められ, 体液性抗体のうちIgMは全実験観察期間中検出された。
  • 新城 敏晴
    1986 年 48 巻 3 号 p. 603-604
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Fusobacterium necrophorum biovar Aに属する6株を用いて, 寒天平板培地における継代と供試菌株の赤血球擬集能および溶血能との関係をしらべた。両性状は100代継代後も安定であった。したがって, 本菌種ではphaseを使わずにbiovarを分類用語とするべきであると考えた。
  • 岡田 信彦, 美[ド]路 活男, 藤原 公策
    1986 年 48 巻 3 号 p. 605-609
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    芽胞形成率の高いTyzzer菌を3株を用いて, 感染マウス肝細胞内における芽胞形成過程を電顕観察した。形態学的にはBacillus属にみられる過程と類似したが, 細菌母細胞から遊離した成熟芽胞は観察されなかった。
  • 阿閉 泰郎, 鈴木 義孝, 杉村 誠
    1986 年 48 巻 3 号 p. 611-614
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    2頭のイヌにおいて, PAS陽性物質が交感神経節中の神経細胞の胞体および神経線維に光学顕微鏡で認められた。αアミラーゼ消化試験ならびに電子顕微鏡による観察から, PAS陽性物質は軸索内に異常に蓄積したグリコーゲン顆粒と少数のミトコンドリアを主成分とする集塊であることが判明した。
  • 稲葉 俊夫, 森 純一
    1986 年 48 巻 3 号 p. 615-618
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    超音波エコー画像診断装置を用いてモルモットの妊娠診断法の検討を行った。妊娠モルモットの子宮腔は交配後16日頃から円形に腫大しはじめ, 19日以降は妊娠診断可能であった。妊娠34日を過ぎると, 胎仔の心臓の動きが観察でき, 生死判定が可能であった。子宮腔の直径から胎齢の推定が可能であり, 胎仔数は81%の正確度で予測できた。
  • 更科 孝夫, 佐藤 和男
    1986 年 48 巻 3 号 p. 619-622
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1976年12月に, 北海道滝川市の小動物病院に来院した1頭のゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)の皮膚病巣の掻爬物から多数のDemodex cricetiとDemodex aurati(Acarina: Demodicidae)が分離された。
  • 佐々木 脩, 勝野 正則
    1986 年 48 巻 3 号 p. 623-627
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    感染後14日以降の豚肺虫感染モルモットの血清中には正常モルモットならびに豚肺虫感染モルモット由来の好酸球を3期子虫ヘ附着させる作用が認められ, その作用は経時的に増強した。この好酸球附着現象は子虫表面に存在する抗原に反応する免疫グロブリンGを介しておこり, この抗体依存性好酸球の附着は, 3期子虫の感染力の低下をもたらした。これらの成績から好酸球は宿主体内で感染防御に関与するものと推測された。
  • 佐藤 良彦, 望月 明義
    1986 年 48 巻 3 号 p. 629-632
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    6力月齢の犬が発熱, 下痢, 呼吸器症状を呈して死亡し, 組織学的にノカルジア症と診断された。剖検で結節病変が胸腔及び腹腔臓器にみられた。組織学的に肉芽腫が肝, 大脳, 小脳, 膵, 脾, 心筋, 腎, 横隔膜, 大網及び肺にみられた。肉芽腫は中心に壊死巣が発達し, 周囲に類上皮細胞, リンパ球及び好中球が取り囲んでいた。肉芽腫にはグラム陽性, 弱抗酸性の菌が菌糸状に不規則な分岐を示し, 連鎖してみられた。
  • 駒庭 英夫, 真壁 朝光, 福田 雅彦, 小河 孝, 畠山 英夫
    1986 年 48 巻 3 号 p. 633-635
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    オーエスキー病ウイルスに自然感染した母豚から生れた子豚における乳汁由来の移行抗体の減衰について追跡調査し, 同時に抗体保有の哺乳豚からウイルスの分離を試みた。各個体別の抗体は日齢の増加とともに負の成長曲線的に減衰し, 45日から60日齢で陰転した。そして抗体保有の新生豚の脳と腎で同時にウイルスが分離された。これらの結果から哺乳豚は, 本病ウイルスの感染を十分にまめがれないものと思われた。
  • 山田 隆紹, 代田 欣二, 松田 基夫, 高橋 孝佳, 小方 宗次, 野村 靖夫, 鈴木 立雄, 山本 博史
    1986 年 48 巻 3 号 p. 637-641
    発行日: 1986年
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5歳齢のべルシャネコにBence Jones蛋白尿を伴ったIgA-M蛋白血症が認められた。血清の電気泳動でslow γ領域にMピークが認められ血清IgA濃度はsingle radial immunodiffusion法で正常値の約10倍であった。尿の電気泳動でfast γ領域に2峰性の大きいピークが認められ, Bence Jones蛋白であることが確認された。腹水貯留とともに, 腹膜および大綱膜に多数の腫瘤が認められたが骨髄の異常はみられなかった。
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