日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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48 巻, 6 号
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  • 小嶋 明廣, 高田 博, 岡庭 梓
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1063-1070
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌコロナウイルスはCRFK細胞で盲継代を経ずにCPEを発現した。1 TCID50/cellの接種で合胞体の形成がみられたが, 50TCID50/cellの接種では細胞の円形化と脱落を主体とするCPEが認められた。感染4時間後に免疫蛍光法および酵素抗体法で, 核近傍細胞質にウイルス特異抗原の局在が観察された。抗原の出現に一致してウイルス感染価の上昇がみられ, 104.2TCID50/0.1mlないし105.3TCID50/0.1mlの最高値に至った。感染初期の細胞では核近傍のゴルジ野周辺に限局してウイルス粒子が観察された。ウイルス粒子の局在部位は免疫蛍光法および酵素抗体法によるウイルス抗原の局在部位と一致し, 中心体およびゴルジ装置の周辺ならびに核近傍の細胞質などに認められた。
  • 清水 晃, 河野 潤一, 葉杖 真二, 木村 重
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1071-1081
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Shimizuファージセット(Sセット) とGibbsファージセット(Gセット)を, 鶏, 七面鳥, 鶉, 鳩, 猛禽から分離した S. aureus295株に応用した。型別率はSセットで78.0%, Gセットで80.7%であったが, 両セットを併用すると, 型別率が約10%上昇した。両セットのファージは内外で分離された鶏由来株の型別にも応用でき, また七面鳥, 鶉, 鳩, 猛禽由来株にも高い溶菌活性を示した。このことから, 両ファージセットは家禽・鳥類由来株の型別に有用であると考えられた。つぎにSセットのファージ群とGセットのファージ群との関係について検討したところ, SセットのI群とGセットのA群ならびにII群とB2群とは相互に類縁の宿主域を有することがわかった。また計47ファージの溶菌スペクトルを調べたところ, 6群に分けられた。なお, SセットのIV群に所属するCH11ファージの増殖用菌株11株(コアグラーゼ産生)は最近, 新菌種として承認された S. hyicus subsp. hyicusの性状と一致することが判明したのでCH11ファージを著者らのSセットから削除して, 著者らのS. syicus subsp. syicus菌型別用ファージセットに移行させることが妥当と思われた。
  • 斉藤 守弘, 中島 董, 渡辺 昭宣, 板垣 博
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1083-1090
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1983年3月から1984年3月までに埼玉県で屠殺された肥育豚100頭, 廃用繁殖豚200頭のうち繁殖豚17頭に住肉胞子虫の感染を認めた。シストの大きさは平均393.4×126.5μmで壁に著明な放射状の縞模様が認められた。ブラディゾイトは平均15.49×3.92μmの大きさであった。プリパテントピリオドは9~10日, パテントピリオドは50~83日で感染肉の保存期間に反比例して短くなった。5℃に冷蔵した肉塊内のシストは30日以上, 感染力を保持していた。スポロシストは大きさが平均12.0×9.4μmで4個のスポロゾイトのほかに1個の大形の残体を有していた。幼若ガメトサイトは感染後1~2日目に, マクロガメトサイトとザイゴートは3日目に, 胞子未形成オーシストは5日目に認められ, 7日目にはほとんどが胞子形成オーシストであった。小腸の寄生部位は前部の2/3で, 発育期によって各部位の寄生密度に変化が認められた。以上の形態および実験感染犬における発育の所見から, 検出された住肉胞子虫は S. miescherianaと同定した。
  • 白井 淳賀, 塚本 健司, 日原 宏
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1091-1095
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1983年秋頃からわが国のレース鳩にニューカッスル病(ND)が多発した。7道県の発生例からウイルス7株を分離し, その性状を調べた。最小致死量による鶏胚の平均死亡時間は比較的長く(90~144時間), 1日齢鶏雛の脳内接種による病原性指数(7株中の5株)は1.0~1.7であった。5株のウイルスをSPF鶏雛に経口投与すると, 1週齢雛では致死率0~30%)であったが, 4週齢雛ではほとんど臨床症状がみとめられなかった。
  • 星 信彦, 橋本 善春, 北川 浩, 昆 泰寛, 工藤 規雄
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1097-1107
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    逆転型リンパ節として知られているブタリンパ節の一般形態, 節内リンパ流経路および胸腺依存領域について, 組織学的および免疫組織化学的に検索した。ブタリンパ節は区分された「分節」の集合より形成され, 各分節の大きさはさまざまであった。各分節は輸入リンパ管が入る「輸入門」を有し, 分節間には輸出リンパ管が出る「輸出門」がみとめられた。皮質様組織は分節の中央域のみならず輸入門周囲の被膜下に, 髄質様組織は輸出門周囲の被膜下に存在し, 皮質, 髄質様組織の位置関係は切断面によってさまざまな組織像(逆転, 非逆転型)を呈した。よく発達, 分岐した梁柱内には, 弁を有する中心槽(CC)および梁柱内リンパ通路(ITLC)が存在し, それらは梁柱周囲リンパ洞(PTLS)と連絡していた。被膜下リンパ洞(SCLS)は, 皮質様組織の周囲にみとめられ, PTLSと連絡していた。節内リンパ流経路は, 他動物リンパ節のそれとは逆の経路だけでなく, 中心槽から直接, 被膜下ヘ注ぐ経路および分節相互を結ぶ経路が観察された。抗ブタ胸腺細胞血清(ATS)を用いて示された胸腺依存領域は, 胚中心を除く広大な皮質様組織のほほ全域を占め, これらはPTLSおよびSCLSに面していた。
  • 安田 和雄, 小野 憲一郎, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1109-1114
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛の血中ガストリン値をradioimmunoassay法で測定すると, 給餌前の空腹時には1ヵ月齢51.0±6.7pg/ml, 2ヵ月齢71.4±20.9ml, 3ヵ月齢では107.8±22.8pg/mlで, 4ヵ月齢(離乳直後)には最高値190.8±27.0pg/mlに達した。その後は成長とともに低下し, 2歳齢以降の成牛では69.1±17.6pg/mlであった。新生子牛では初乳摂取により増加を示し, 生後42ないし54時間まで700~1300pg/mlの高値を維持し, その後急速に低下して生後61時間後には初乳摂取前の値に復した。1ヵ月齢哺乳子牛では, 哺乳後2~4時間で100~160pg/mlを示した後, 漸次低下し, 次回哺乳直前には57.6±18.0pg/mlとなった。2または3ヵ月齢の哺乳子牛では哺乳後の反応が不明確で, 育成牛および成牛では給餌に対応する反応がみられなかった。
  • 高橋 明男, 稲田 七郎
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1115-1124
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    同腹5頭のビーグル犬のnon-REM睡眠の記録を目視的に生後1年間観察するとともに, 相互相関分析およびパワースペクトル分析によっで定量的に解析した。non-REM睡眠の成長に伴う変化は, 脳波上, 4期に分けられ, 第1期は0~6週齢, 第2期は6~14週齢, 第3期は14~24週齢, 第4期は24~50週齢であった。
  • 小木曽 洋一, 久保田 善久
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1125-1134
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健常ビーグル成犬から得た肺洗浄細胞を Percoll不連続密度勾配重層遠沈により3つの画分に分離し, これらの各画分のプラスチックプレート付着性肺胞マクロファージ(AM)をLPSあるいはシリカ粒子で刺激・培養すると, 低密度画分AMが高いインターロイキン1 (IL-1)活性を示した。一方, マイトジェンによる気管支リンパ節リンパ球の幼若化応答に対する各画分の効果を検討したところ, PHAではすべてのAMが増強効果を, Con Aでは高密度画分AMを除き抑制効果を示した。抑制効果は, インドメサシン添加により阻止されたことから, プロスタグランジンEによるものと考えられた。以上からイヌの肺胞マクロファージに免疫学的機能の異なる亜群の存在が示唆された。
  • 熊埜御堂 毅, 福永 昌夫, 安藤 泰正, 鎌田 正信, 今川 浩, 和田 隆一, 秋山 綽, 田中 義郎, 小林 睦生, 小倉 信夫, 山 ...
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1135-1140
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    馬のゲタウイルス感染症流行地の一家畜飼養地において, 1979年7月18日~11月5日の期間, 毎週雌成虫蚊を採集し, ウイルス分離を実施した。その結果, 27,550匹の蚊から計55株のウイルスが組織培養及び哺乳マウス接種によって分離された。これら55株のうち, 18株はゲタウイルス, 残りの37株は日本脳炎ウイルスと同定された。分離されたゲタウイルス18株中15株は11,471匹, 280プールのキンイロヤブカ (Aedes vexans nipponii)から分離され, 感染率は1:765であった。他の3株は10,693匹, 254プールのコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)から分離された(分離率1:3,564)。これらキンイロヤブカから分離されたゲタウイルス15株中13株は豚舎から分離され, 他の2株は囮馬小屋から分離された。豚舎におけるキンイロヤブカの分離率は1:451であった。ゲタウイルスはキンイロヤブカの発生ピークに一致した9月~10月に分離された。以上の成績からキンイロヤブカは関東地方における馬のゲタウイルス感染症の主要ベクターであり, コガタアカイエカもベクターとなることが示された。
  • 于 大海, 伊澤 久夫, 児玉 洋, 小沼 操, 東原 則子, 見上 彪
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1141-1146
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    仔牛血清(CS)による伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)プラーク形成抑制機序を調べた。CS中の抑制物質は, CSを鶏胚線維芽細胞(CEF)とともに保温することで吸収され, 抑制物質のCEFへの付着が示唆された。CEFに吸着するIBDV量は細胞をあらかじめCSで処理すると減少した。また, プラーク観察用重層寒天にCSを加えた場合にもIBDVプラーク形成は抑制され, CSは周囲細胞への感染拡大を阻止した。さらにCSはIBDVを直接不活化(中和)するのではないことが示された。これらの成績から, CS中の抑制物質はCEF表面に付着して, おそらくは細胞表面のウイルスレセプターをおおうことにより, IBDVの細胞吸着を阻止することが示唆された。
  • RAYOS A.A., 宮澤 清志, 奥田 潔
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1147-1152
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    超音波断層診断装置を用いて, 妊娠牛を卵胞直径が12mm以下の群, および12mm以上で卵胞を穿刺破砕した群としない群の3群に分け, 血中性ステロイドホルモン値の変化を観察した。小卵胞群と大卵胞群の血中性ステロイドホルモン値に差は見られず, また, 卵胞穿刺破砕の前後において血中性ステロイドホルモン値に変動はなかった。穿刺破砕卵胞では卵胞液中プロジェステロン値が高値を示した。以上の結果から, 妊娠中期に出現する卵胞は機能的に発情期卵胞と異なり, 血中性ステロイドホルモン値に影響を及ほさないことが判明した。
  • 吉田 康幸
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1153-1159
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    創傷性胃炎牛を亜急性限局性炎, 慢性炎, および急性瀰慢性炎の3病型に分類し, 血清中の蛋白濃度, セルロースアセテート膜電気泳動法による蛋白分画濃度および無機物濃度の診断的価値について検討した。3病型に共通して, 健康牛に比較してアルブミン濃度の減少とαおよびβグロブリン濃度の増加がみられ, さらに各病型に次のような特徴がみられた。亜急性限局性炎例は高蛋白血症を示し, アルブミン濃度の減少は最も軽度で, αグロブリン峰は鋭角性に乏しくドーム状を示す傾向がみられ, βグロブリンについては相対易動度が増加し, 濃度増加は最も顕著であったが, γグロブリン濃度の増加は軽度であった。慢性炎例は最も重度の低アルブミン血症を示し, 完全あるいは不完全なβーγ架橋現象を伴う顕著な高γグロブリン血症がみられた。急性瀰漫性炎例は低蛋白血症, 低カリウム血症および高燐酸血症を示した。
  • 見上 晋一, 伊藤 純一, 谷口 和之, 山田 静弘
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1161-1172
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ハムスター胎仔および新生仔について, 各種下垂体前葉細胞の出現時期, 局在性, 発生に伴う分布の変化等を免疫細胞化学的に検索し, また視床下部-下垂体系の発達との関係について検討した。胎齢11日にはAtwell突起が発達し, その細胞が抗LH血清に対して陽性を示した。胎齢12.5日には下垂体前葉にLH細胞, ACTH細胞, TSH細胞が同時に出現した。胎齢14日にはFSH細胞が出現し, その一部は抗LH血清にも陽性を示した。胎齢15日にはGH細胞が出現したが, PRL細胞は生後3日に初めて出現した。下垂体隆起部にはLH陽性細胞が含まれていた。また, 胎齢12.5日の視索前野にはLHRH細胞が, 弓状核にはソマトスタチン細胞が出現し, 下垂体前葉におけるLH細胞およびGH細胞の分化に影響する可能性が示唆された。
  • 柳澤 利彦, 杉本 次郎, 美[ド]路 活男, 藤原 公策
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1173-1182
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルス(MHV)-NuU感染ICRヌードマウスでは接種後2~5週間, 腎からウイルスが回収され, 進行性の蛋白尿症がみられた。腎糸球体では内皮細胞・メサンギウム細胞の腫大・増殖と, 好中球・単球・多核巨細胞の集簇がみられた。増殖性血管内膜炎は脳・肺・肝・膵・大網・腸間膜でもみられた。蛍光抗体法では小静脈内皮細胞や多核巨細胞, 糸球体メサンギウム細胞にMHV抗原が認められた。またメサンギウム領域では, 分節状あるいはび慢性の免疫グロブリンまたは補体第3成分(C3)の沈着がウイルス抗原とともにみられた。電顕では内皮下やパラメサンギウム領域への沈着物を伴うタコ足細胞足突起の癒合, 内皮細胞の増殖を認めた。ウイルス粒子は小静脈内皮細胞や腔内・周囲のマクロファージや多核巨細胞内に認められたが糸球体の細胞には認められなかった。
  • 田村 務, 代田 欣二, 宇根 ユミ, 野村 靖夫
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1183-1189
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ブタ肥満細胞症16例の腎臓について, 光学顕微鏡および免疫蛍光法にて検索したところ, 全例の糸球体メサンギウムにさまざまな程度で硝子滴が認められ, 多くの例で緻密斑や労糸球体部にも硝子滴がみられた。これらの硝子滴は, 近位尿細管に形成されるそれと類似の形態と染色性を示した。免疫蛍光法では, 糸球体内硝子滴にIgGを認めたが, C3は認められなかった。10例においては, mesangiolysisを伴う, 広汎性あるいは分節性の著しいメサンギウム拡大が認められた。硝子滴形成はmesangiolysisを伴って発現することが多かった。これらの糸球球病変は, 肥満細胞症に特異的であるとは考えられなかった。
  • 熊埜御堂 毅, 福永 昌夫, 鎌田 正信, 今川 浩, 安藤 泰正, 和田 隆一, 新田 仁彦, 秋山 綽
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1191-1197
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    西日本地域の馬飼養地2箇所において, 1980年5月11日~11月18日の期間, 隔週に採集した雌成虫蚊33,604匹から, Vero及びHmLu-1細胞培養によって計13株のウイルスが分離された。これら13株中4株はゲタウイルス, 9株は日本脳炎ウイルスと同定された。ゲタウイルス4株中3株は宮崎競馬場から採集されたコガタアカイエカ200プール19,465匹から分離され, 感染率は1:6,488であった。残りの1株は栗東トレーニング・センターで採集された5,897匹のコガタアカイカから分離された。宮崎競馬場及び栗東トレーニング・センターにおけるコガタアカイエカは全採取蚊種のそれぞれ85.1%及び54.5%を占め, 両調査地において捕獲されたキンイロヤブカは2%以下であった。以上の成績から西日本地域の散発的ゲタウイルス感染症においては, コガタアカイエカが主要ベクターであることが示唆された。
  • 平賀 武夫, 阿部 光雄
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1199-1206
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種子ウシ, 雌雄各4例の頚部心臓逸所症例を剖検し, 胸骨を軟X線学的に観察した。異常子ウシの生存期間は出生後3分から312日であった。心臓は頚部腹側で筋肉と皮膚に被われ, 心膜腔内に位置し, その二重心尖は前背方を, 心底は後腹方を向いていた。全例で, 大動脈弓からの主要動脈の分岐はイヌ型を示し, 多くの例で重複前大静脈と重複奇静脈も認められた。胸骨柄の幅は極めて広く, 胸郭前口も広かった。胸骨は前後に短く, 幅は広く, 13~26個の胸骨片で構成され, 胸骨柄と胸骨体の骨片は対の様相を呈していた。胸腺の胸部は欠如し, 頚部は心臓の前背方に集合していた。線維性心膜から伸びる靭帯が, 前方では下顎骨と耳下腺筋膜に, 側方では頚筋膜に, また後方では第一肋骨あるいは胸骨柄に付着し, 心臓を保定していた。
  • 佐々木 栄英, 北川 均, 石原 勝也
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1207-1214
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬糸状非寄生犬および寄生犬243頭に0.1~5mg/kgのミルベマイシンDを1回経口投与したところ, 末梢血中(19頭), または病理組織学的(1頭)にミクロフイラリア(mf)が検出された寄生犬20頭(8%)でショック様反応が認められた。投薬後24時間のmf数は投与前の1/12に減少していたが, 投薬前の末梢血mf数または投薬後のmf減少率と発症の有無および症状の強さとの間には関連性がなかった。臨床症状は, 投薬1.5~4時間後に発生し, 1~4時間続いた後, 全例回復した。症状は元気消失, 可視粘膜の蒼白またはチアノーゼ, 弱脈, 皮膚の冷感, 呼吸困難, 歩様蹌踉, 虚脱, 心拍数の減少傾向, 血圧の著しい低下など循環不全に基づく所見が主体であった。発症時の心電図検査では, 不整脈の消失または軽減, R波の増高, ST部の低下およびT波の逆転などが認められた。血液所見では, 赤血球数の増数, 好中球の変動に伴う白血球数の早期における減数と後期における増数, 好酸球の減数, 血清総蛋白濃度の低下, 血糖値の上昇などがみられ, 血清酵素活性値は24時間後に上昇していた。再投与および再々投与では, 実験犬は臨床的異常を示さなかった。
  • 吉田 康幸
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1215-1219
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    創傷性胃炎牛を亜急性限局性炎, 慢性炎, および急性瀰漫性炎の3病型に分類し, 総白血球数および各種白血球数の診断的価値について検討した。3病型に共通して好塩基球と単球の減少がみられた。急性瀰漫性炎には好酸球の減少と好中球に核の左方移動または再生不良性左方移動がみられ, 亜急性限局性炎では好酸球の減少がみられた。慢性炎には白血球増加症と好中球増加症または核の再生性左方移動がみられた。
  • 米田 理恵子, 小沼 操, 桐沢 力雄, 川上 善三
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1221-1226
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    迅速比色法により牛白血病腫瘍関連抗原(TAA)に対するモノクローナル抗体を用いた細胞障害試験の定量を行った。比色定量法には特異抗体処理後の生残細胞がテトラゾリウム塩をホルマザン(紫色)に還元することを利用した。この比色定量法とトリパンブルー排除法で細胞障害性を判定したところ, 両者の結果はほとんど同じであった。比色定量細胞障害試験により, 白血病牛のみならず多くのリンパ球増多症, 未発病牛の末梢血リンパ球にTAAを検出しえた。
  • 清水 晃, 河野 潤一, 木村 重
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1227-1235
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Hajek & Marsalekの提案した生物型分類法を, わが国のヒ卜および17種類の健康・症例動物から分離したコアグラーゼ陽性ブドウ球菌の2菌種1,708株に応用した。ヒト, ウシ, ヤギ, ウマ, ブタ, イヌ, ニワトリ, ウズラ, ハト, ウサギ, マウス, ヌードマウス, モルモット, ラット, ドブネズミ, クマネズミ, ハツカネズミ, フェレット由来 S. aureus 1,541株中1,303株(84.6%)は生物型A, B, CおよびDのいずれかに型別され, また由来動物種によって生物型の分布に多少の違いのあることが示された。ウマ, イヌ, ハト由来 S. intermedius 167株はすべて生物型Eに属した。本法では型別できなかったS. aureus 238株(特にげっ歯類由来株に多くみられた)のうち, 202株はすべて同一性状を示し, フィブリノリジン, 色素産生, ヒ卜およびウシ血漿凝固性, DNase, 卵黄因子, Tween 80水解性陽性であった。しかしクリスタル紫加寒天平板上における増殖型と溶血型はいずれも不定であった。該株は生物型A(ヒト由来株)と生物型C(ウシ, ヒツジ由来株)の中間的性状を示していた。フィブリノリジン(+), 黄色色素(+), ヒ卜およびウシ血漿凝固性(+), 溶血型(不定), クリスタル紫加寒天平板上における増殖型(不定)の性状を有する菌を, Hajek & Marsalekの生物型分類に新しい生物型Gとして追加することを提案したい。
  • 松沢 時弘
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1237-1240
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラット肝及び腎ホモジネート上清の各々で, disc電気泳動において易動度の異なるNADP依存3α-ハイドロキシステロイド脱水素酵素(3α-HSD)が各2種検出された。煮沸並びにトリプシン, ペプチダーゼ及びヒアルロニターゼ処理した腎ホモジネート上清を肝ホモジネート上清に混合してインキュベートすると肝固有の3α-HSDアイソザイムが消失し, 新たに腎固有の3α-HSDアイソザイムの1つが出現した。
  • 鳥海 亘, 河村 晴次, 藤原 公策
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1241-1244
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス肝細胞初代培養で増殖した菌体から作製した抗原による酵素免疫測定法(ELISA)により, 抗Tyzzer菌抗体検出を試みた。ELISA法の感度は間接蛍光抗体法(IF)にくらべて低かったが, ELISA力価とIF力価はよく相関し, 菌株間の抗原性比較, 抗原物質の識別に有用と考えられた。
  • 駒庭 英夫, 真壁 朝光, 福所 秋雄, 清水 悠紀臣
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1245-1248
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)による下痢症の簡便, 迅速かつ正確な診断法開発のため豚継代のTGEVを用い, 従来の検査法と, CPK細胞とトリプシンを用いた方法の比較を行った。CPK細胞を用い維持培地にトリプシンを添加した回転培養法はTGEVの分離法として優れ, この方法を野外での糞便材料に応用したところ, 容易にTGEVが分離された。
  • 田村 豊, 牧江 弘孝, 田中 まゆみ
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1249-1251
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    気腫疽菌の音波処理抗原に対する間接赤血球凝集(IHA)抗体価は, 気腫疽予防液を注射したマウスの防御と平行し, IHA抗体価1:8以上を示すマウスは強毒株の攻撃に対し60%以上耐過生残した。気腫疽予防液力価評価法として, IHA反応は有用であることが示された。
  • 佐々木 栄英, 北川 均, 梶田 祐司, 岡地 啓之, 石原 勝也
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1253-1256
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5頭のラフコリーと7頭の柴犬にミルベマイシンDの1.0mg/kg, 2.5mg/kgおよび5.0mg/kgを, それぞれ2週間の休薬期間をおいて1日1回10日間経口投与し, 犬種による薬剤感受性の差を検討した。5.0mg/kgのコリー群では, 第1回投薬後から5頭中4頭に不整脈, 流涎, 散瞳, 歩様蹌踉, 伏臥および嗜眠などの神経症状が間欠的または連続的に認められた。症状の程度は個体および投薬日により異なっていたが, 投薬後24時間以内に回復し, 死亡例はなかった。
  • 小野 憲一郎, 安田 和雄, 岩田 祐之, 中山 裕之, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1257-1261
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病犬4例について蛍光眼底検査を行った。動静脈相において, 毛細血管床閉塞野を示す低蛍光部位ならびにその周囲に細小血管瘤を示す点状蛍光が認められた。また蛍光色素の漏出は観察されなかった。これらの蛍光眼底像はヒトの非増殖性糖尿病性網膜症の所見と同様であった。
  • 弘瀬 秀樹, 松田 治男, 村田 昌芳, 関屋 幸男
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1263-1266
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    合計52のMDV及びHVTに対する単クローン抗体を得たが, そのうち22はMDV及びHVTの3血清型に特異的であった。型共通抗原に対する抗体は22あって, 血清型の全組合わせ(1・2・3, 1・2, 1・3及び2・3)において交差反応を示した。型特異単クローン抗体を用いて, 10株の既知MDV及びHVT並びに7株の野外分離ウイルスが血清型別されたが, 野外株のうちのひとつは本邦で初めて分離された2型MDVであった。
  • 多川 政弘, 滝山 昭, 江島 博康, 黒川 和雄
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1267-1269
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    蚊から採取した110~250隻の感染子虫を4~7ヵ月間に5~10回に分けて3~9ヵ月齢のビーグル犬に接種し, その間ミルベマイシン(MD) 1mg/kgを1ヵ月に1回ずつ投与した。最終感染後6ヵ月に剖検した結果, 非投薬犬(対照)の移行率は26.5~45.3%であったのに対し, 投薬犬では全例感染がなく, 本剤はD. immitisの頻回感染下でも十分に予防効果を示すことが明らかにされた。
  • 千早 豊, 松川 清, 岡田 洋之
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1271-1274
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    分娩後, 創傷性心膜炎を発症し約1ヵ月の経過の後弊死したホルスタイン種10歳の牛に大脳ムコール症を認めた。病巣は, 左大脳半球の後頭葉背側に限局していた。組織学的に, 大脳皮質における軟化巣, 髄質における脱髄を伴った亜急性血栓栓塞性髄膜脳炎の像を示していた。ムコール目(Mucorales) の特徴を示す菌糸の増殖が血栓内, 血管壁および実質内に認められた。
  • 稲葉 俊夫, 免山 央時, 清水 亮佑, 中野 長久, 森 純一
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1275-1278
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種乳牛に低βーカロチン飼料を与えて, 卵巣嚢腫を誘起させたときの血漿中βーカロチンおよびビタミンA量について検討した。青草飼料を給与すると血漿中βーカロチン量は有意な上昇を示し, ビタミンA量はわずかな上昇を示した。稲わ^^・ら^^・と濃厚飼料のみを給与した場合には, 血漿中βーカロチン量は卵巣嚢腫罹患牛では非罹患牛に比べて有意に低値を示した。血漿中ビタミンA量も卵巣嚢腫罹患牛では非罹患牛に比べてわずかに低値を示した。
  • 鈴木 義孝, 杉村 誠, 阿閉 泰郎, 源 宣之, 金城 俊夫
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1279-1282
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1984年12月~1985年3月までの冬季に, 岐阜県下で捕殺されたニホンカモシカ402例中155例に丘疹性ないし結節性病変を示すパラポックス感染症の大流行があった。病変は口唇, 舌, 口蓋, 耳介, 外陰部, 乳房等に主座し, 組織学的には封入体形成を伴う棘細胞増多症によって特徴づけられ, 電顕的にもウイルス粒子の存在を確認した。
  • 志賀 瓏郎, 森野 芳幸
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1283-1286
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5頭のラットについて, 飼料中, 胃, 小腸, 盲腸および結腸の各内容物中ならびに糞中Mg, Ca, P含量を測定し, Mg, Ca, Pの消化管内変動と相互関係を調べた。Caは小腸上部で, Mgは盲腸で, それぞれ著減した。飼料-小腸末端でMgとCaおよびMgとPとの間に, 飼料-糞でCaとPとの間に, それぞれ正の相関(P<0.001)が認められ, Mg吸収と腸内容のCa, P含量との関係が示唆された。
  • 高橋 秀之, 村田 英雄, 松本 英人
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1287-1289
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン雄仔牛を暑熱環境(33℃, 60%RH)に暴露したときの血漿インスリン, グルカゴン, コンチゾールおよびグルコース濃度の変化を8日間にわたり調べた。暑熱暴露24時間以内に血漿グルカゴンの有意な上昇が認められたが, 血漿インスリン, コルチゾールおよびグルコースは低下した。その後, 血漿グルカゴンの全観察期間にわたる上昇と, 血漿インスリンの暴露4日以降の持続的上昇があった。血漿コルチゾールおよびグルコースは全観察期間にわたって低下が続いた。
  • 清水 孜, 安田 宣紘, 河野 猪三郎, 八木 史郎, 田寺 謙次郎, 小林 昭
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1291-1295
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サイカシン4~6mg/kgを88~124日連続経口投与した成ヤギ4頭全例に貧血と肝障害を認めた。うち2頭では後肢のふらつき, 起立困難などがみられ, 肝病変がとくに強く, 脊髄白質には脱髄, 軸索の膨化・消失など, 牛のソテツ中毒例類似の病変が認められた。
  • 後藤 直彰, 三田村 明美, 藤井 節子, 佐藤 昭夫
    1986 年 48 巻 6 号 p. 1297-1299
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    高齢の雄の黒鳥に自然発生した精細胞腫を病理学的に観察した。腫瘤塊は2個あり10×5×5cmおよび6×5×5cmで, 体腔壁, 第6・第7胸推内側に固着し, 表面滑沢, 一部結節状, 黄白色で赤色斑があり, 右側腫瘤は同側腎と癒合していた。病理組織学的に, 腫瘍細胞は精細管内に増殖し, 種々の大きさの腫瘍塊をつくり, 腫瘍細胞は癒合部から浸潤性に増殖して腎実質に増殖巣を形成していた。肝に転移巣が認められた。
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