日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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29 巻, 6 号
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  • 藺守 龍雄
    1967 年 29 巻 6 号 p. 289-300
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシとヒツジに Progesterone (以下Pと略す.)を皮下注射し, 末梢血中の P とそのおもな代謝物とを検討した. 卵巣を摘出したウシ2頭(No. 496と602)に, 2gの P と50μCi(286μg相当)の4-14C-progesterone を混合して油に懸濁して皮下注射を行なった. 1時間目から24~36時間にわたって静脈血をとり, 血漿50ml中の放射能量を測定して, 注射した P の動向を検討した(実験I; Fig.1, Table 1). その結果, 2頭のウシの血中放射能量は第4時間目にピークを示し, 8~12時間目まではかなりの高濃度を保った. その後No. 496では, 低い濃度をそれ以後に持続する様相を示したが, No. 602では, 24時間目の値は, なおNo. 496のピーク時の値に近いほどの高さを示した. この差は吸収の度, 肝が関与する排泄能の差, 脂肪内へのとり込み度の差などに基づくものと推測される. この2頭の実験から, P の比較的大量を皮下注射したさいには, 半日から一日はかなりの高濃度が末梢血中に持続されるものと見てよいようである. ただ測定せられた放射能量は P の量を示すのみでなく, 他の代謝物との総和を示すので, 第II, 第IIIの実験を併せ行った. 実験IIでは, 前記2頭のウシの4時間目の血漿500mlを抽出・精製し, 薄層クロマトグラフィーで分離したのち, ガスクロマトグラフィーで検出を行った. P のほか20β-OH-P (20β-o1と略す), および他のニ, 三の代謝物らしいものが検出せられた. しかし P と20β-o1以外は量が少ないので, 十分な追及は困難であった. ただこれらは17-OH-Pと androstenedione のいずれでもないことが立証された. 血漿100ml当たりの P の量は1.77μg (No. 602)と1.15μg (No. 496)であった. 20β-o1に関しては, 2頭を合わせて, 0.38μg (100ml血漿中)がやっと検出できた. 他の1頭の卵巣摘出のウシ(No. 202)に, 75μCi (500μg強に相当)を皮下注射し, 第4時間目に得た血漿600mlを処理し, 最後に薄層クロマトグラフィーで分離を行ない, 各 Band の放射能量を測定した. P と20β-o1に該当する Band には, 多量の放射能が検出された. そのほかは若干量の放射能が androstenedione と20α-o1に近いRFをもつ物質として存在することが推定せられた. 注射した P についての回収率では2g余を注射したNo. 496と602の2頭では, 100ml血漿当たり約100方分の1から200万分の1の P が回収された. これに比べて, 500μg余の皮下注射を行なったNo. 202では20万分の1 (100ml血漿中)程度であった. この差(5~10倍)は, おそらく注射量の差に基づくものであろう. P と20β-o1 100:13 (P:20β-o1)となった. しかし500μg余の量的比率は, 2gを注射した例では大約, 平均を注射したNo. 202の例では100:10以下(計算比率100:8.76)の結果を得た. この代謝比の差も, おそらく注射量に関係するものではなかろうか. 多量の注射時には, 代謝が比較的急速に行なわれることになるものと推測される. 卵巣を摘出した1頭のヒツジに20μCiの P (114μg相当)を皮下注射した. 第3時間目の血中には, 大約100:5の P と20α-o1が存在することがほぼ確められた. 他の代謝物に関しては, この時点では, ほとんど認められないという結果を得た.
  • 河野 猪三郎, 福吉 成典
    1967 年 29 巻 6 号 p. 301-313_4
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
  • 大越 伸, 村田 義彦
    1967 年 29 巻 6 号 p. 315-327_1
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    前報において, 猫に自然感染した鉤虫の種類には, A. tubaeforme とA. caninum の2種があることを確認した. ついで, この両種を猫に人工感染試験した結果, A. tubaeforme は感受性が強く, 高率な寄生率をもって, 容易に感染が成立した. これに反して A. caninum は, 感受性が弱く, 少数の感染仔虫では, 猫への感染が全く起こらなかった. 大量の仔虫を投与した場合には, きわめて低率ながら, かろうじて感染が成立したことを報告した. そこで今回は, 人工感染猫において, 体内の諸臓器中における両種仔虫の分布状態を定期的に迫究し, さらに仔虫の体長および stage の発育状況についても, 詳しく検討を加えて, 前報の成績の解明を試みた. 1. A. tubaeforme 仔虫を猫に経口感染させた場合には, 仔虫の大部分が, 消化管内に長期滞留し, 仔虫の体長と stage は, 腸内容においてのみ, 次第に発育成長をとげた. 一方, その他の諸臓器からは, ほとんど仔虫が検出されなかった. 2. A. tubaeforme 仔虫を経皮感染させた場合には, 仔虫が皮膚・筋肉から, すみやかに消化管に移行し, 1週間後には, 大部分の仔虫が腸内容から検出された. これらの仔虫は, その体長と stage が, 腸内容において発育成長をとげた. また一方, 仔虫は肺・気管・食道からも検出されたが, その体長は少しも発達していなかった. 3. A. caninum 仔虫を猫に経口感染させた場合には, 仔虫は消化管ではすみやかに減少するが, 初期には腸間膜・肺・気管・食道から, 未期には筋肉から長期間にわたって, 多数検出された. しかし. その間において, 仔虫の体長と stage は, 少しも発達しなかった. すなわち, 主として Somatic migration を行なうことが認められた. 4. A. caninum 仔虫を経皮感染させた場合には, 皮膚・筋肉から, 長期間にわたって. 仔虫が検出された. その間, 仔虫の体長と stage の発達は, 全く行なわれなかった. 一方, 肺・気管・食道から, 少数の仔虫が検出されたが, 消化管からは, 全く検出されなかった. 5. A. tubaeforme 仔虫は, 経口・経皮両感染とも, 猫の腸内容から多数検出された. 腸管内では, 仔虫の体長が発達し, その stage は, 第3期から第5期へと, 次第に発育をとげた. 一方, その他の諸臓器からは, 少数の仔虫しか検出されなかったが, それらは, すべて脱嚢した感染仔虫の形態のままであった. すなわち. これは猫を固有宿主とする態度であった. 6. A. caninum 仔虫は, 経口・経皮感染とも. 主として猫の筋肉内に寄生し. 消化管には寄生しなかった. 一方, 仔虫の体長と stage は, 筋肉その他のいかなる臓器においても. また長い期間が経過しても, 少しも発達しなかった. すなわち, これは非固有宿主における態度であると認められた.
  • 大越 伸, 薄井 万平
    1967 年 29 巻 6 号 p. 329-336_1
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬に寄生する Toxascaris 属の回虫は, 最初に RAILLIT and HENRY (1911)によって Toxascaris limbata と記載された. その後, TAYLOR (1924)が犬・猫・ライオンから得た Toxascaris 属の虫体は, いずれも同一種であるとして, その学名を Toxascaris leonina LINSTOW, 1902に統一した. 第1報で報告したごとく, 日本の犬からは, T. leonina の感染がしばしば発見されているが, わが国の猫には, 従来綿密な検索にもかかわらず, 本虫の感染が見られなかった. また著者らは, 犬系の本種の虫卵を猫に人工感染させるように試みたが, 感染は成立しなかった. 1965年に著者らは, ハワイ輸入の猫で T. leonina の寄生を発見し, 始めて猫系の虫体を入手することができた. 犬系と猫科動物の Toxascaris 属回虫の命名については, 前述のように, 歴史的な経緯があるのに鑑み, 今回猫系を入手したのを機会に, 従来から存在した犬系と, 動物園由来のトラ系, チータ系の合計4系について, 成虫および虫卵の形態的な比較と交叉感染試験とを行なった. これらの系統には, 別種に分けるほど著しい形態上の差異を認めなかった. 4系の雌雄各20隻を無作為に選んで, 各部位の計測値を比較した結果, 従来の研究では, なお看過されていたつぎの相違点を明らかにすることができた. 1. 体長と体幅は, 従来の文献と同じく, 犬系が最大であり, 他の猫科3系に対しては, 有意差(1~5%の危険率)が認められた. 2. 食道の長さについては, 食道長/体長の比が, 犬系では最小であって, 他の3系に対して有意差を認めた. すなわち犬系の食道長は, 他系に比して明らかに短い. 3. Vulva の位置については, 体前端から Vulva までの距離と体長との比が, 犬系が最小, 猫系が最大であった. 従って Vulva の位置は, 猫系では体の比較的後方に存在する. 4. Cervical alae の幅は, 猫系では広く, 犬系では狭い. 従って Cervical alae の幅/長さの比については, 両者間に大差が認められた. 5. 虫卵は, 犬系が最大で, トラ系が最小である. 特に犬系では, 長径が大きいことが特徴的である. 以上のごとく, 成虫および虫卵の測定値を比較して, 犬系と猫科3系の T. leonina の間に差があることを指摘した. 猫科3系の中でも, 最近わが国で始めて寄生を発見した猫系で, 犬系との差が特に大であることを認めた. なお, これらの虫卵について行なった犬猫への交叉感染試験の成果は, 次回に報告する.
  • 大越 伸, 友田 勇, 牧村 進
    1967 年 29 巻 6 号 p. 337-345_1
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健康成猫血清蛋白は, 〓紙電気泳動法, セルローズ・アセテート電気泳動法, および寒天電気泳動法によって, 5ないし9分画に分離された. 猫血清蛋白各分画の電気泳動相対易動度は, 人および犬血清蛋白の易動度にくらべて, 若干の相違があり, 特に, 猫血清 albumin は, 最も早く移動することを認めた. 免疫電気泳動法による分析では, 著者らの家兎抗血清を使用した場合, 微細な, やや不鮮明なものを含めて, 最大23本の沈降線を検出できた. これらの沈降線の命名は, 人血清蛋白電気泳動像と対比しながら, CHORDI らの方法に従った. さらに, Amidoschwartz 10B による蛋白染色に加えて, Schiff 試薬, Sudan black B, o-dianisidine, paraphenylenediamine に対する特異染色性について検討した. また, 猫血清と人および犬血清との間の交叉反応についても観察した. 一方, 猫血清蛋白の年令的変動を, セルローズ・アセテート電気泳動法と免疫電気泳動とによって観察し, 特にγ-globulin 分屑の動態について検討を行なった.
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