日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
33 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 平井 克哉, 島倉 省吾
    1971 年 33 巻 5 号 p. 209-216_1
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らは, 尿管系における尿酸塩様物質の貯留と, 腎の混濁腫張とを主徴とする雛の疾病を研究し, その腎乳剤を発育鶏卵に継代することによって, 病原と考えられるウイルス性因子を分離した. 雛に対するその病原性についてはすでに報告した. 本報告は, 鶏胎児腎初代培養細胞 (CEK) におけるこの分離ウイルスの増殖状況, 理化学的性状および形態について報告する. 本ウイルスの CEK における増殖は, 感染後8時間に培養液相現われ, 48~60時間でほとんど最高値6~7 log TCID50/mlに達した. 細胞変性効果 (CPE) の特徴は, 原形質の空胞化, 感染細胞の球状化, そして円形化細胞の管壁からの脱落である. 封入体は認められなかった. アヒル胎児腎初代培養細胞でも, CEK と同様な CPE が認められた. 本ウイルスの理化学的性状は, 20%エーテル, 5%クロロホルム, 0.1% SDC 処理では不活化され, PH 3.0, 4℃, 30分処理では安定性を示し, 56℃, 30分までは活性を示すが, 45分以上では不活化された. Millipore filter の100mμは通過したが, 50mμは通過しなかった. CEK 培養液に BUDR を添加しても, 増殖に影響しなかったので, 本ウイルスの構成核酸は RNA と推定される. 本ウイルスは, 伝染性気管支炎ウイルス (IBV) のBe 42株および Gray 株で中和された. ネガティブ染色試料の電子顕微鏡観察では, ウイルス粒子は大小不同多形態性で, 直径の平均は約110mμであった. ウイルス粒子の外側には, "なし型" の surface projection が観察され, coronavirus の形態を示した. 以上の成績から, 今回の分離ウイルスは, IBV の腎炎型と考えられる.
  • 菅原 伯, 佐々木 甚一
    1971 年 33 巻 5 号 p. 217-226
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
  • 角田 清, 村木 八一
    1971 年 33 巻 5 号 p. 227-235_2
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本ウズラ (Coturnix japonica) のコクシジウムについては, 報告がとぼしく, 自然発生例の観察を一二みるのみである. いっぽう quails といわれている鳥のコクシジウムについては, いくつかの報告がある. しかし, これは日本ウズラとは全く属を異にする鳥であるから, それらのコクシジウムと日本ウズラのものとは, 全く異なるものであることは, Eimeria 属の宿主特異性からみても, 容易に考えられることである. 筆者らが日本ウズラから純分離に成功した1種の Eimeria は, インドで灰色ウズラ (C. coturnix) のコクシジウムとして報告された Eimeria coturnicis, および E. bateri, とくらべて, オーシストの形は似ているが, その大きさ, Polar inclusion, および micropyle の有無などからみても, 明らかに異なる種類であるとみられる. E. coturnicis は, 特に自然感染例の糞中の少数のオーシストの形態をみているに過ぎないため, はたして, これが1種類のコクシジウムのオーシストを観察したものか否かは疑がわしい. 今回分離したコクシジウムについては, 単一オーシスト感染法で純分離した株を用いて, その全発育環を明らかにした. 成熟オーシスト感染後1.5~5時間でスポロゾイトは遊出し, 十二指腸および小腸上部の絨毛上皮細胞内に侵入して, 球形となる. その後, 初代シゾントは22~48時間で, 2代以降のシゾントは48時間以降に, 形成される. ガメトサイトは88~96時間の間に形成され, 新生のオーシストが糞中に初めて排泄されるのは, 感染後4日目である. シゾントおよびガメトサイトは, すべて十二指腸および小腸上部の絨毛上皮細胞内で増殖, 発育し, 決して固有層以下には侵入しない. また, 宿主細胞の核の上部の細胞質内でのみ増殖する. これは鶏の E. acervulina と良く余似た性質を有する. オーシストは, 25℃で Sporulation time が24時間である. また, patent period は, 濃, 軽感染を問はず, 13日間であった. また, ウズラに近縁な鳥類11属について, E. uzura のオーシストで感染試験を行なったが, いづれも感染は成立しなかった. さらにこれらの鳥類から分離した少なくとも20種のコクシジウムのオーシストを日本ウズラに感染させたが, いずれも感染しなかった. とくに, E. dispersa は, 各種の鳥類に感染する可能性があることが報じられているが, 日本ウズラには感染しなかった. 以上の実験結果からみて, 今回分離したコクシジウムは, Eimeria uzura TSUNODA 1970, なる種名を与え, 新種として扱うのが適当と考えられる.
  • 山田 一彦
    1971 年 33 巻 5 号 p. 237-249
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    A. 鶏血漿中 Aspartate- および alanine-amino-transferase (GOT および GPT とそれぞれ略記する) の Forward (F), Reverse (R) 系 T-ase の活性は, REITMAN & FRANKEL (R・F) 変法によって, 測定することができる. B. 鶏血漿中 GOT, GPT の F, R 系 Transaminase (T-ase) 活性を, 産生α-ケト酸の Hydra-zone 化合物量で比較してみると, F-GOT>R-GOT, F-GPT<R-GPT の関係にある. これら F, R 系 T-ase の活性は, 相互に補償的で, これは日令や性別とは無関係に, 鶏に共通する傾向である. これら4種の T-ase の活性序列を, 用いた血漿の蛋白質量を単位として比較すると, 一般に F-GOT>R-GPT≧R-GOT>F-GPT である場合が多い. また, 本報告で用いた3カ月令ビナ, および12カ月令成鶏の, 各血漿中, 4種の T-ase 活性を, 同じく, その蛋白質 N量を単位として比較すると, いずれの T-ase 活性も, ヒナ>成鶏の関係を示す. さらに, 性別上から活性関係を比べてみると, ヒナの場合には, GOT, GPT の F系 T-ase は, 雄≦雌であるが, R系 T-ase は明らかに雄>雌である. これに対して成鶏の場合には, F, R系 T-ase はともに雄>雌である. C. 本報告で用いた3カ月令ビナおよび12カ月令成鶏の F-GOT/F-GPT 比は, ヒナの雄7.34±0.82, 雌7.46±1.37, 成鶏の雄 15.97±4.86, 雌19.04±5.64である. これに対応する R-GOT/R-GPT 比は, ヒナの雄0.63±0.10, 雌0.39±0.12, 成鶏の雄2.06±0.18, 雌0.81±0.01である.
  • 及川 弘, 川口 陽資, 角田 清
    1971 年 33 巻 5 号 p. 251-259
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    9日令のヒナ280羽を無感染対照, Eimeria tenella 胞子形成オーシスト1万個感染(Et-5), 5万個感染(Et-5), および E. acervulina 50万個感染(Ea)の4群に分けた. 感染後の経過に伴い各群5~8羽ずつ抽出して剖検し, 体重, 臓器重量, 血液所見, 消化管病変を測定ならびに観察した. Et の各群では, 感染4日後に血便の排泄が始まり, それにひきつづき種々の症状が現われた. おもな所見は死亡(Et-5), 摂食量の減退, 体重減少, 脾臓と肝臓の肥大, 盲腸の萎縮病変, 赤血球数・血色素濃度・ヘマトクリット値および血漿総蛋白濃度の低下であった. これらの症状の多くは, 感染10~l5日後までに回復したが, 盲腸病変は30日後でも回復しなかった. しかし, 耐過生存したものの成長は, 無感染対照群とほとんど変わらないほどに回復した. Ea 群では, 感染3日後より顕著な症状が現われ, とくに摂食量の減退, 成長抑制, 心臓の縮少が著しく, 粘着性に富む糞便を排泄した. 血液では赤血球の変化は小さかったが, 血漿蛋白濃度は著しく低下した. これらの症状の多くは, 感染10日後までには回復し, これはオーシストの排泄が終わるのに一致した. 血液成分にみられた変化は Et 群に比べて小さかったが, 期間がやや長かった. Ea の群で最も注目すべき所見は, 発病期にみられた成長抑制が慢性的経過をたどり, 感染30日後でも回復しなかったばかりか, 無感染対照群との成長の差がさらに大きくなる傾向を示していることであった.
  • 森田 迪夫, 吉沢 重克, 稲葉 右二
    1971 年 33 巻 5 号 p. 261-270_4
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    昭和45年1月, フィリッピンより千葉県血清研究所に10頭のカニクイザル (Macaca irus) が搬入された. そのうち2頭に舌, 口唇の潰瘍形成を主徴とする Chlamydia による疾病が認められた. この2頭について, おもに病理組織学的の検索を行なった. 臨床的に削痩, 衰弱, 鼻漏, 食欲廃絶がみられた. 剖検すると, 舌, 口唇の粟粒大ないし大豆大の潰瘍形成が主病変で, 多発性嚢胞形成を伴う肋膜肺炎, 腎の腫脹, 口腔粘膜における〓爛形成および急性カタール性腸炎が認められた. 組織学的には, 潰瘍形成は口蓋扁桃にも認められた. 多形核白血球, 組織球, 線維芽球を含む多くの細胞集簇から成る潰瘍もあったが, 細胞浸潤は乏しく結合組織の増性をみるだけの病変もあった. 肺病変は線維素性肋膜炎を伴い, 繁殖性変化の強い小葉の混在するカタール性, クループ性肺炎の像を呈していた. さらにネフローゼ, 酸好性物質の沈着する脂肪織炎がみられた. しかし中枢神経系には, 著変が認められなかった. 舌, 口蓋扁桃および口腔粘膜病変部の重層扁平上皮, および繁殖性変化が強い肺炎部の肺胞および気管支上皮には酸好性細胞質封入体が認められ,各々の細胞は, 水腫性に腫大していた. 封入体は PAS 反応に陽性, Giemsa 染色に紫青色, Azan 染色に赤桃色, Macchiavello 染色に淡桃色に着染された. 電顕的には, 舌潰瘍部に明瞭な膜におおわれ均質な構造を持つ Particle (Reticulate body), および内部に電子密度が高い Nudeoid 構造を持つ Particle (Elementary body) の球形ないし楕円形の Chlamydia-agent が, 多くは Vesicle によって囲まれて, 多数認められた. これらの Agent のホルマリン固定材料での大きさは, 前者では160~420mμ, 後者では160~350mμであった, 肺にも Chlamydia 様の Agent が認められた. これらの Agent は, 組織学的に認められた封入体に一致するものと思われる. 搬入時に採取された血清で, Chlamydia 抗原による血球凝集阻止(HI)反応が行なわれ, 第1例で1:80, 第2例で1:160の成績が得られた. また検査された他の5例でも, 1:20から1:320までの値が示された.
feedback
Top