子牛の第一胃・第二胃の運動発達過程およびこれに及ぼす胃内容要因,とくに第一胃内の固形物と低級脂肪酸との関係について検討した.そのため,種々の物質を投与した第一胃フイステル装着ホルスタイン子牛において,第一胃と第二胃の内圧変化を記録するとともに,一般飼育条件下の子牛において,第一胃運動の発達状況を左服部体表より観察した.これらの結果は次のとおりである.1)子牛の第一胃・第二胃の運動発達過程には,次の5段階があることが明らかとなった.すなわち,(1)第一胃・第二胃ともにその収縮が全く記録されない.(II)第二胃の2段性収縮のみが記録される.(II工)第二胃の2段性収縮のほか,第一胃のA型収縮が記録される. (IV)第一胃の収縮に,A型のほか,まれにB型収縮が認められる.(V)第一胃に成牛なみの頻度で,活発なB型収縮が認められる,2)全乳のほか,乾草と濃厚飼料を自由摂取させた子牛では,3~10週齢でVの段階に達した.これら子牛各個体の第一胃・第二胃運動発達の速さは,その摂取固形物量および第一胃内の低級脂肪酸濃度と密接に関連した.3)全乳のみを給与した子牛では,15週齢になっても,安定した第一胃運動は認められず,上記IIの段階にとどまった.4)全乳のほか,プラスチック・スポンジ片を多量に第一胃内に連日投与した子牛では,14週齢までにIVの段階になった.4)全乳のほか,低級脂肪酸溶液(PH-6)を第一胃内に連日投与した子牛では,10週齢以降になって,IV~Vの段階に達した.6)全乳のほか,プラスチック・スポンジ片および低級脂肪酸溶液を,ともに第一胃内に連日投与した子牛では,3~6週齢でVの段階に達した,7)子牛の左廉部体表において,聴診,触診および視診によって,第一胃運動の発達状況を調査した.子牛では,成牛なみの活発なn型収縮の発現が,5~6週齢で認められ,摂取固形物量が多い子牛ほど,早くこれが出現する傾向かうかがわ れた.8)以上の結果から,子牛における第一胃・第二胃の運動発達には,胃内に投入された固形物量と,胃内発酵主産物である低級脂肪酸量が関連し,これらの発達は,胃の発酵機能発達に深い関係を待つことが推測された.9)反別は第一胃・第二胃の周期的運動がまだ記録されない以前においても認められた.しかも全乳のみを給与した子牛や,全乳のほか低級脂肪酸溶液を胃内に連日投与された子牛においても,早期に認められた.子牛の初期の反物では,吐きもどし期のみの第二胃収縮がみられ,それに続く第二胃の2段性収縮が認められない場合があった.
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