犬糸状虫症の診断法としては,microfiIaria(mf)検査法,皮内反応法が現在広く知られているが,いずれも不備な点を持っている.今回著者らは,犬糸状虫症の診断における赤血球凝集(HA)反応を検討し,mtの検査成績DiroFlariaimmitis成虫の寄生状況,他の嬬虫類の検査成績などとの相関を調べ,さらに皮内反応の成績と比較検討した.HA反応では,フィラリア感染犬の86%,未感染犬の50%が陽性であった.HAtiterとフィラリア寄生数,雌虫数,mf数との相関は認められなかった.また内部寄生虫 (大鉤虫,大鞭虫,大条虫,大回虫)との相関は,いずれも5%の有意差で認められなかった.感染大において14%のfalsc-negativeの反応がみられたが,4才以上の犬では,フィラリア感染があるにもかかわらず,HA反応がほとんど陰性になることが判明した.しかし,それらの犬の血清中,あるいは血清分画中には,HA反応を阻害する物質は検出できなかった.またmfが血液中に検出されずに,成虫が心臓に寄生していたものが14例あったが,そのうち8例は単性寄生であった.このうち6例は,HA反応陽性を示した.さらに,Ascarissuilla抗原を用いHA反応を行なったところ感染犬の88%,未感染犬の47%が陽性を示した.これは,D.immitisを抗原とした場合の成績と非常に類似し,両者の間に共通抗原が存在することが示唆された.皮内反応では,犬フィラリアアンチゲンを使用した場合は,フィリア感染犬の95%,米感染大の76%が陽性であった.また反応の分布を調べたところ,感染犬と未感染犬の分布は,ほとんど一致して,区別することができなかった.沢田精製抗原(FST3)では,感染大の53%,未感染犬の16%が陽性であった.このようにFST3による皮内反応では,感染犬に比較的多くのfalsc-negativeが見いだされているが,反応の分布上,感染犬は,未感染大群に対して高度に反応する傾向が伺われ,将来の改善によっては,大糸状虫症の診断に有望であると思われる.
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