トラ(生後約3年の雄)では, 肛門皮線に接して, 肛門皮帯の両側に開口が存在する. 肛門を切開して, 1対のクルミ大(高さ3.0cm, 直径2.5cm)の嚢, すなわち肛門旁洞を採出することができた. 肛門への開口部は乳頭状を呈し, 中に排出管をいれ, 嚢内の洞に連なっている. 洞内には, 悪臭を放つ黄褐色濃厚な分泌液を満たしていた. 切片標本をみると, 乳頭内の排出管および肛門旁洞の内面は, 重層扁平上皮におおわれる. 排出管の壁では, 上皮の外側に薄い結合組織の層をはさんで, 厚い横紋筋層が存在する. 洞壁では, 上皮の外側に, 腺管を含む結合組織の層があり, その外側には厚い横紋筋層が存在する. 洞壁の結合組織中に存在する肛門嚢腺には, 2種類の腺, すなわち汗腺と脂腺が区別される. ネコでは, 肛門旁洞の壁に, 汗腺と著明な脂腺が認められる. イヌでは,肛門旁洞の壁に, 汗腺は認められるが, 脂腺は認められず. 脂腺は, 排出管のまわりに存在するに過ぎない. 肛門嚢腺を構成する2種類の腺の分布状況についていえば, トラはイヌと異なり, ネコに近い.
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