日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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33 巻, 3 号
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  • 田辺 昭, 堀 慧, 鳥海 徹, 池田 三義
    1971 年 33 巻 3 号 p. 111-120
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    従来,鶏のtruc-cho11nesterasc(truc-ChE)の基質特異性に関しては,必ずしも一致した見解が得られていない.また哨乳動物の場合と異なり,鶏では,体内各組織における各種ChEの分布については,知見に乏しい.著者らは,脳組織と骨格筋を供試材料として,鶏のtrue-ChEの基質特異性を明らかにした.また特異的基質と選択的阻害薬diisopropylIIuorophosphate(DFP)およびtetraisopropy1一pyrophosphoramidc(iso-OMPA)を用いて,鶏の各組織における各種ChEの分布を検討し,捕乳動物の場合と比較した.(1) truc-ChEの基質特異性:鶏の脳組織と大腿四頭筋に存在するtruc-ChEは,基質として,acetylcholine,(ACh)よりも高率にpropionyl一cho11nc(PrCh)を分解する.また小腸平滑筋および心筋に存在するtrue-ChEも,AChより高率にPrChを分解する.基質特異性の観点からみて,これら四部位の組織に存在するtrue-ChEは,同一のものか,または極めてよ《似た性質のものと考えられる.(2)膵臓の pscudo-ChE: 膵臓の pseudo一ChEは,基質として,AChおよびBuChよりも PrChを高率に分解する.しかし基質特異性および活性曲線の形は,血漿のものに極めて近く,肝臓,小腸粘膜および腺胃のものとは異なっている.膵臓はDFP抵抗性pscudo-ChEの活性を示さなかった.(3)分布: 供試組織は,それぞれ各種ChE活性の分布に基づいて,3種類に大別される.主としてtruc-ChE活性を示す第一グループには,脳組織と大腿四頭筋,true-ChEとpseudo-ChE両者の活性をほぼ同程度示す第二グループには,小腸平滑筋,筋胃およびファブリシウス嚢,主としてpseudo-ChE活性を示す第三グループには,腺胃,肝臓,膵臓,小腸粘膜および心室筋が含まれる.(4)赤血球:赤血球は,ACh,PrCh,butyryl-ch011neおよびacetyl-β-methylcho11neのいずれに対しても,測定しうる程度のChE活性を示さなかった.
  • 大島 寛一, 伊藤 隆夫, 三浦 定夫
    1971 年 33 巻 3 号 p. 121-126_2
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    肝蛭自然感染初期の豚36例について,病理学的検索を行なった.感染初期にみられる肝の組織反応は,他の宿主にみられるそれとは著しく異なっていた.すなわち,侵襲幼弱虫に対し,著明な好酸球反応と線維性増殖がみられ,虫体は被膜化好酸球膿瘍の中に閉込められていた.特にリンパ球性反応が強く,増殖した結合織の中に醜漫性浸潤を示し,またしばしば枦胞様構造物として認められた.まれにこれら枦胞中心部に,遺残虫体をみた.摘出虫体は,感染後1-3週間と推定された.これら組織反応の意義について,若干の論議を行なった.
  • 伊藤 隆夫, 三浦 定夫, 大島 寛一, 沼宮内 茂
    1971 年 33 巻 3 号 p. 127-135_4
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    血尿症地帯の牛膀胱腫瘍12例について,電子顕微鏡的研究および電顕レベルにおける組織化学的検索を行ない,これらの結果から,血尿症の病理発生に検討を加えた.12例中7例に臨床上血尿を認め,血管腫腺腫,移行上皮癌および線維腫が,単独あるいは2ないし3種共存して認められた.また1例では,移行上皮癌とリンパ肉腫が同時に認められた.血管腫の内皮は異形性を示し,Lysosomeに富む.細胞間裂隙またはfenestrationの形成がみられ,内皮細胞間は移開し,ここに血球の流出を認め,さらに上皮細胞間隙を経て膀胱内に排出される所見を得た.腺腫では,分泌形の細胞が多く.分泌顆粒は2種類,すなわち多糖類と粘液蛋白とに分けられた.またこの症例では,特殊な粗大好配顆粒細胞の出現を見た.移行上皮癌では,腫瘍細胞は明および暗細胞にわげられ,組織化学的に特殊な Lysosomeの増加が観察された.腺維腫病巣にみられる線維芽細胞では,正常なfibrogcnesisと異なる現象が観察された.以上の所見よV),血管腫における出血は,腫瘍性血管内皮の形態的な変化,および細胞の代謝異常によるものであることがうかがえた.他の腫瘍病巣における出血は,圧排性を示す腫瘍増生およ び腫瘍細胞の代謝異常が,隣接末梢血管から出血 た.を起こさせる重要な要因になるものと考えられ
  • 坪倉 操, 板垣 啓三郎, 河村 和子, 佐々木 禎一, 永井 龍夫
    1971 年 33 巻 3 号 p. 137-144
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    第I報に記載したように,日本で分離された仮性結核菌は,血清学的に5型に分類されるほか,どの菌型にも属さない菌株が3株存在する.この菌株は,越智らによりI型に分類されたものである.また,越智らの分類によるV型は,VおよびV′型の2亜型に細分されているが,外国では,V型がさらに亜型に細分をされるという報告はない.本試験は,型別不能の3株の性状と,V型に属する菌株の亜型について,検討するために行なわれた.1.型別不能株の性状a.マウスに対し,1株(#l)は弱い病原性を示したが,他の2株(#3および#14)は,ほとんど病原性を示さなかった.モルモットに対しては,3株とも,1mgの腹腔内接種で病原性を示さなかった.b.生物学的性状およびファージ感受性については,3株とも仮性結核菌の性状を有し,Yersiniaenterocoliticaとは区別される.c.血清学的に,既知の菌型に知られていない〇一抗原を保有した.この抗原をO-13とし,新しい菌型としてVI型に分類した.2.V型菌の細分a.V型菌は,AおよびBの亜型に細分された.両者はそれぞれ共通の〇一抗原と,亜型特異抗原を有する.共通抗原を,従来v型に知られているO-10とし,VA型の特異抗原を,0-14,およびVB型の特異抗原をO-15とした.b.この分類に従えば,フランスから送られたV型菌は,VA型に属する.本試験の結果,仮性結核菌はIA,IB,IIA,IIB,III,IVA,IVB,VA,VBおよびVI型の10型に分けられ,〇一抗原には,O-2からO-15までの14因子が明らかになった.
  • 後藤 仁, / , GORHAM John R.
    1971 年 33 巻 3 号 p. 145-153
    発行日: 1971/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ミンク,フェレット,ウサギおよびマウスにPscudorabicsvirusのShope株 (強毒株)とBuk株(弱毒株)を実験的に接種し,これら動物における両株の増殖性ならびに病原性を定量的に検討した.使用した動物の両殊に対する感受性は,動物の種類とウイルスの接種ルートとによって異なる.すなわち,ミンクとウサギはBuk株に対するよりも,Shope株に対して著明な感受性を有した.これに反し,フェレットと捕乳マウスは,Shope株に対するよりも,Buk株に対して高い感受性を示した.マウスの感受性は,年令による影響が認められ,日令が進むにつれて低下した.また補乳マウスの感受性は,ウイルスの接種ルートによって異なり,脳内接種で最も高く,次には皮下接種,腹腔内接種と続き,径目投与の場合に著しく低下した.この接種ルートによる感受性の差は,ミンクとフェレットにおいても同様に観察された.接種マウスにおけるウイルスの増殖性は,脳内でもっともよく,肺においてもある程度に認められたが,血液,牌,および肝では著しく弱かった.また接種動物におけるウイルスの体内分布をみると,ミンク,フェレットおよびウサギにおいては,肺と脊髄に比較的多量のウイルスが存在し,さらにウサギでは牌と脳からもウイルスが検出された.検出ウイルス量は,Buk株よりも,Shope株を接種した動物組織において,多いことがしばしばであった.以上の実験成続上り,これら動物に対するPscudorabiesvirusの病原性ならびに体内伝播について,若干の考察を加えた.
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