従来,鶏のCho11ncstcrase(ChE)に関する知見に乏しく,捕乳動物のそれとの相違点がいくつか指摘されているに過ぎない.著者らは,鶏のChEの特性を明らかにするため,各種のChE基質と二,三のChE阻害薬を用いて,血漿,肝臓,小腸粘膜および腺胃のChEを測定し,ChE阻害薬の影響を調べた.(1)血漿中のChE: acetylcho11nc(ACh),prop10nylcho11ne(PrCh),butyrylcho11ne(BuCh)およびacetylβmcthylchoinc(McCh)を基質として,血漿中のChE活性を測定した.捕乳動物のChEと異なり,MeChをかなり高率に分解することがわかった. この点では, 哨乳動物のtrueChEに類似する性質を有するが,上記の基質に対する酵素活性曲線は,いずれもS字状となり,いわゆるpseudo-ChEに属すると考えられる結果をえた.血漿のpscudoChEによる分解率の高い順に,上記の4基質をならべると, PrCh,AChBuCh,McCh,となった.(2)肝臓,小腸粘膜および腺胃のChE:前項と同じ4基質を用いて,肝臓,小腸粘膜および腺胃のChE活性を測定した結果,酵素性曲線はいずれもS字状となり, Pscudo-ChEと考えられた.分解率の高い順に基質をならべると,いずれの臓器においても,PrCh,BuCh,ACh,MeChの順となり,AChよりBuChを高率に分解することを認めた.(3) DFPに対する抵抗性:肝臓,小腸粘膜および腺胃のpseudo-ChEは,血漿のそれよりもDFPに対して高い抵抗性を示した. また肝臓,小腸粘膜および腺胃の間で,DFPに対する抵抗性に差があることがわかった.(4) tctra-1sopropylpyrophosphoramide(isoOMPA)に対する抵抗性:血漿,肝臓,小腸粘膜および腺胃のpseudo-ChEは,iso-OMPAに対して,同程度の抵抗性を示した.
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