化学反応には美しい色の変化を伴うものが多い。著名な化学者が化学を研究しはじめた動機が, このような鮮かな色の変化であったという逸話も良く聞かれる。有機化合物のなかには, 外界の刺激の変化により, その色を変えるものがある。この現象を, 一般に, クロミズム(chromism)と呼んでいる。クロミズムが起こる原因は, つぎの2種類に分類できる。a)互変異性などの化学構造変化によるものb)溶媒の配位などにより, 基底状態や励起状態が変化することによるもの化学構造変化によるクロミズムとしては, i)ホトクロミズム(光), ii)サーモクロミズム(熱), iii)エレクトロクロミズム(酸化, 還元), iv)pH指示薬(酸, 塩基)などが知られている。また, 上記(b)に相当する変色現象としては, v)ソルバトクロミズム(溶媒), vi)ピエゾクロミズム(圧力), vii)H会合体やJ会合体(会合), viii)色素レセプター(錯形成), などの例がある。本稿では, 上記に関連して, 最近, 特に話題を集めている光や熱で色を変える材料について解説する。
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