医療現場では様々な放射線技術が活用されている。これらに用いる装置が放射線発生装置や検出器である。また,放射性同位体を利用した放射性医薬品がPETやSPECT検査などの診療において様々な検査に応用利用されている。これらの臨床機器や検査,およびそこで用いられる化学物質について解説する。
光学顕微鏡の分解能は,光の波動としての性質(回折)による物理的な限界がある。このため,可視光の波長の半分程度の200 nmより小さな構造を観察することはできない。近年,蛍光分子の性質を巧みに利用することで,この限界を超えた観察を実現する超解像蛍光顕微鏡法が開発され,2014年のノーベル化学賞を受賞した。
蛍光タンパク質や生物発光タンパク質は様々なプローブ開発に活用されており,生きた細胞のイメージングにおいて非常に強力なツールとなっている。1990年代後半からは,蛍光タンパク質に変異を加えることで様々な色の蛍光タンパク質の開発に成功している。さらに,生物発光タンパク質を用いて開発されたプローブは,細胞のイメージングのみならず簡易検査へ応用されている。本稿では,蛍光タンパク質,生物発光タンパク質及びそれらを用いて開発された機能性プローブについて解説する。
量子化学計算は,化学反応や化学物性を理論的に予測する。その中心理論は密度汎関数法である。計算理論の進展と計算機性能の向上にともない,量子化学計算が取り扱える計算対象や物性の種類が増大している。近い将来,多種多様な化学反応の反応経路や電子の動きが解明され,生命現象の解明にも役立てられると期待される。
本解説では,スーパーコンピュータを有効活用するために,我々が開発している量子化学計算ソフトウェア「NTChem」について紹介する。そして,スーパーコンピュータを活用した研究事例として,シミュレーションとインフォマティクスによる材料設計と材料探索について最近の我々の取組みを紹介する。
量子化学計算は,研究用途としてはもちろん,教育用途としても活用できる有用なツールである。本稿では,量子化学計算を実際に行うのに必要なソフトウェアとハードウェアについて概説し,次いで,代表的な量子化学計算ソフトウェアであるGaussianとGAMESSについて,その概要・特徴等を述べる。また,量子化学計算を教育目的に活用する例として,硫酸の立体分子構造の計算,ならびに,原子電荷の計算と芳香族化合物の配向性への応用を紹介する。