探究する過程を重視する姿勢が新学習指導要領で明確に示されたことを受けて,中高の現場では,探究活動を無理なく進め,その評価をどのようにしたら良いかを考える必要がある。また,大学側でも,大学入試で生徒の主体性を適切に評価するように指示されていることもあり,何らかの方法で主体性を評価する必要がある。
理科改訂の要点を二つ挙げるならば,一つ目は,理科で育成を目指す資質・能力を育成する観点から,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどをとおして,自然の事物・現象について科学的に探究する学習の充実したことである。二つ目は,理科を学ぶことの意義や有用性の実感及び理科への関心を高める観点から,日常生活や社会との関連を重視したことである。
科学技術人材育成には,小学校,中学校,高等学校,大学・大学院,社会とつながる一貫性をもつ探究力を育成する教育プログラムが必要である。各段階の接続に関係する話題として,大学院と社会の接続,大学教育の教育課程編成上の参照基準,大学が受け入れたい高校生,国際的に活躍する科学人材を育てる高大接続,探究活動で生徒を育てる先生に関して,これまでの経験や活動をもとに話題を提供する。国際的に活躍する科学技術人材育成という同じ目標に向けた施策は各段階で既に行われている。今後は,これらの施策の歯車をきれいに噛み合わせるための関係機関,関係者間の連携が望まれる。
香川県立観音寺第一高等学校における理数系課題研究の実践について報告する。先行して課題研究を実施していた理数科での指導・評価の方法,およびそれを応用しながら普通科へも拡大した過程,指導・評価方法の応用と改善,普通科で課題研究を実施した成果を報告する。
探究活動というと,スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)のような特別なプロジェクト,予算がなければできないものなのか。海外の実践をヒントに,普通の学校で中学3年生に取り組んだ探究活動の授業を報告する。生徒が主体的・対話的に学び合い,自然の現象や事物に対する因果に興味をもち,仮説演繹的な論理展開をはかりながら理解を深める態度を身につけられるように,試行錯誤した授業である。今回のフォーラムで掲げるテーマを考える「たたき台」になれば幸いである。
地球大気に含まれるオゾンは成層圏で生成し,その殆どが地表から20~30kmに滞留して「オゾン層」を形成する。ここでのオゾン生成・分解サイクルを通して太陽からの紫外線を効率的に吸収し,生体に有害な紫外線の地表への到達を防ぐ生命維持にとって不可欠なバリアとして機能している。その存在が,人類活動により脅かされる“オゾン層破壊”が明らかになったのは1980年代初めであるが,積極的な対策の効果により現在では回復傾向にあり,最悪の事態は回避されたと見られている。対策を成功に導いたのは,成層圏オゾンの生成・分解機構の解明について先駆的な役割を果たし,問題が明確化する以前からその可能性を警告した功績で1995年ノーベル化学賞を受賞したクルッツェン,ローランドおよびモリナらの研究である。本稿では,彼らの研究とそれにより解明されたオゾン層の生成・破壊のメカニズムについて概説し,対策の流れと現状について述べる。
冷媒の歴史は自然冷媒を有効に利用することから始まった。有機化学の進歩により安全なフッ素系合成冷媒「フロン」が開発され,「夢の冷媒」と言われたが,オゾン層破壊や地球温暖化の原因物質の一種であることが分かり,環境負荷の低い冷媒にシフトする方向で開発が進められた。現在も,地球環境を守りながら快適な生活環境を持続するために,さらなる改良・開発が求められている。
サツマイモを直に焼きあげた「焼き芋」は,冬の定番スイーツとして人気がある。サツマイモには,加熱調理するとイモに含まれるデンプンが熱により糊化し,β-アミラーゼが糊化デンプンを糖化してマルトースを生成し,甘味が増すという性質がある。加熱調理により生じるマルトースと生イモに含まれるスクロース等の遊離糖の含量の総和,及びそれらの甘味度が,焼き芋の甘さを決める主な要因である。マルトースの生成量は加熱調理の方法,デンプンの糊化温度やβ-アミラーゼの活性の影響を受け,生イモのスクロース含量はイモを収穫した後の貯蔵期間・条件等の影響を受ける。